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PMFを目指す創業3年目を迎えたスタートアップのリアルな数字感覚
(記事更新日時:5月19日)
振り返ると数字の感覚が全くなかった自分
起業する時、特にスタートアップとして起業するときは、売り上げゼロ時点でユニコーンの目線感を持ってスタートする。これは自分に限らず、みんな結構そうだと思う。
いやむしろ、スモールビジネスじゃなく、スタートアップでやるならそのくらいの視野で取り組むべきだとも思う。
その時に自分で言う、時価総額1000億円ってのは正直手触り感は全くない。
1000億円になるには、マルチプル10倍として売り上げ100億か、と言うことは毎月20%,30%で伸びていき、まあT2D3としておくと、ざっと大体5年間で100億か。そんな感じで計算する(いや、本当はもっとちゃんと計算するけどざっとこんな感じ)
要するに数字に対しての、実感が全くと言っていいほどない。
ちなみに私のバックボーンを話しておくと、新卒の時はセールスで1案件、100万円〜500万円とかのマーケ案件を扱っていて、そこからカンボジアではゼロから立ち上げに関わっていたので、本当に初期の机とか椅子のコストとかも見ていて、前職のユニファでは無料プロダクトから、サブスク数万円〜数十万円見たいなプロダクトを扱ったりしていた。一通り経験はある方だと思う。
でも、サラリーマンで何かを売るのと自分で起業して売るのは、全然別物。今思うとびっくりするくらい、数字の感覚がなかったんだなと思う。でもみんなそんなもんだと思う。だって数百万円売っても自分の給料は何ら変わらないものだし。
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売り上げ300万円達成するのも、超大変。
実は先月の4月に初めて売り上げ300万円を突破した。超リアルに書くと言ったので超リアルに数字を交えて書いていきたい。
多分ここまでリアルなnoteは出てこないだろうって気持ちで書きます!
ピボットを本格的に意思決定したのは、今年の初め2024年の1,2月くらい。その数ヶ月前の2023年10月〜12月くらいは月の売り上げが30~50万円のような感じだった。赤字を掘るのはスタートアップなら普通にあるが、売り上げがガクンと下がる、いわゆる”死の谷”にいる状態。「ここから逆転できないと死ぬんだな」というのがリアルに分かる状態でした。でも別にネガティブではなかったです。意外とここ結構大事かもと思って書くと、スタートアップで起業しているというのはつまり常にバーンレイトとランウェイを頭に入れての勝負なので、”やることはやりきっている”ので全然ネガティブにはならなかったです、というのはこれから起業する方にお伝えしておきたい。やることやりきっていると不思議と割り切れるものです。
その期間が着物パンツEtsukaを立ち上げたタイミング。保守費用としてエンジニアチームに2,000USDほどは払っていて、年間契約だけど動画をストレージしておくVimeoも月に13万円ほどかかっているから、それだけでも普通に赤字。役員報酬や給料を考えたらバーンレート的にはその時点では100万円から多い時は120万円くらいだった。
残キャッシュを計算して、あと何回チャレンジができるか、何ヶ月持つかみたいなことを常に考えている時期。すごくリアルな話をすると、最悪(コンサバに読んだ時に)2024年の9月にキャッシュアウトでランウェイがなくなるところまで見えていたので、予定していたフィリピン側の結婚式も延期してます。だって、会社が来月にランウェイが尽きるとかなんならもうランウェイなくなって会社畳んでますというタイミングで気持ち的に結婚式迎えられないですし、人間の感覚的にも祝ってくれる側の人もちょっと祝いにくいじゃないですか。笑
もちろんプライベートと仕事は別とはいえ、僕の感覚ではスタートアップファウンダーの人生的にはほぼシンクロしてるようなものなので。ランウェイは尽きました、でも結婚式はちゃんとやりますってなんかちょっと、という感覚です。笑 「結婚式用費用でランウェイ伸ばせ」なんていうエンジェルの方はいない(笑)と確信してますが、自分がなんか気持ち悪いなとそこまでイメージして結婚式を延期してました。
そこから一気に潮目が変わったのが1月。12月にバザーで結構着物パンツを売って、それでも100万円をようやく突破したレベル。このブランドに3,000万円の評価額はついたものの、まだちょっと疑問。これって本当に伸びるの?と。
1月で結構確信に変わったのは、オンラインだけで200万円に近づいたこと。これは結構いけるかも、と手応えというか安堵感を得た瞬間。
で、ようやく4月に300万円を突破、ちなみに元のビデオプラットフォームは新規での問い合わせは毎月片手で数えられるレベル。プロモーションを止めるとお客が来なくなる、つまり全然刺さってないプロダクトなのだと結論づけられる。
で、タイトルの”超大変”っていうのは、感覚として「300万円でも売り上げるのめっちゃ大変じゃん!」ということ。最初にスプレッドシートで事業計画を”気楽に”引いている時と、実際にリアルにビジネスして300万円をお客様から受け取るのは全然違う。当たり前かもしれないが。
新卒の会社で300万円の案件取れると、「まあ悪くないか」ってレベルなのに、300万円売るってこんなに大変なのか、と。実際今打ってからのオペレーションも大変だし、Co-founder3人の内の二人ががっつり入って回さないといけないレベル感だから、いや300万円売るってマジで舐めたもんじゃないなと思ってます。
そこで、この前フリーランスで3,000万円くらいまで目指せるってYouTubeをたまたま見つけてちょっとテンション下がった。笑
共同創業者三人でめちゃ頑張って300万円で、これフリーランス一人分かよ。って。
300万円はそんな感じ。
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ちょっと刻むと売り上げ500万円くらいはあとひと踏みで、いけそうな感覚。
で、今目指しているのは、タイトルとは真逆になるが、これも3月までに「いけるはず」だった。よし着物ファッションのDTC Etsukaが立ち上がったからもう一つ立ち上げて、仮にそっちがEtsukaの半分でもEtsukaが2倍成長して350万、新しい事業で100万、動画プラットフォームでも50万くらいは入ってくるといけるか見たいな感覚。
これも全然Too optimisticだった。そんな簡単にはいかん、と。
Etsukaも3月まではなかなか伸びなかったし(通常アパレルは下がる時期だったが安定していたのはポジティブ)、2つ目のビジネスはゼロ(加齢に失敗)、動画プラットフォームも完全にフェードアウトで、300万円行くかいかないかのところで立ち往生。これが2024年の3月まで。
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でも、4月にようやく300万円突破!しかもオフラインの売り上げ無しで突破しているのは大きい。そして、5月前半はアメリカからのオーダーが倍増したり、ヨーロッパやいろんなアジア圏からも問い合わせが入るようになってきて、フィリピンのブランドからグローバルな感じになってきて(感覚だけ)、そうすると500は見えそう。でも、見えそうな時ほど、落ちるのもこわい。だって、来月一気に萎む可能性もなくはないのがこのビジネスのこわさ。
でもなぜ500は見えそうかというと、フィリピンだけだったところがシンプルに国が増えることでアプローチできるマーケットサイズは広がって、あとこの勢いならオフラインのポップアップも出せたり、複数打ち手がある中の一つでもしっかりうまくいけば、500,700あたりは見えてくる。そんな感覚。
(ちなみに6月11日現在、5月末の時点でこの500万円は突破できた)
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売り上げ1,000万円は、”むず、本当にいけんのか?”と言う感覚
1,000万円という数字にはなってくると、ここは「違うステージ」になっていないと到達できないから一気にハードル上がる感覚。Etsuka自体は一年で最低700万円にはしたい、そうしないとクローズする気持ちでやっている。この700にロジックはないけれども、yutoriがブランドを閉じる基準が700らしいからそれをベンチマークしている。
仮にEtsukaが700に行っていたとして、その次の1000を目指すにはブランド自体がある種の文化になりかけていないといけないし、今アクセスできていない層に確実に届いていないといけない。それにシンプルに今のオペレーションでいくとして3倍のオペレーション工数かと思うと結構ゾッとする。つまりそこも大きく改善していないといけない。
では、二つ目のブランドと合わせてそこにいくのか?と考えると、すでに1ブランドを成長させている過程でもう一つ立ち上げるのは、やはり結構なパワーがかかるので既存の体制(Mimiオンリーでゼロイチを育てる)やり方は無理、つまりこれも新しいチャレンジになってくる。
確実にブレイクスルーが必要になってくるから、結構ハードル高い印象の1000万円。届きそうかもしれないけど、全然数年届かないイメージもできてしまうのが1000万円。
(記事を書いてから1ヶ月後の今6月11日は、意外とこのオペレーションでも届きそうな感覚は多少ある)
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でも逆に売り上げ5,000万円とかだといけそうな気がする不思議。
でも、逆に5,000万円とかだといけそうな気がする。ロジックは崩壊している。これは1,000万よりも遠いが故に、現実感がないからかもしれない。何十億か調達している友人の先輩起業家に話を聞くと、大体5,000万円くらいとのことで社員が何十人もいるようなフェーズ。自分たちが今3名であとはアルバイトと業務委託で回していて、500はいけるとする。3人×10名体制の30名で5,000万円の月商なら、(ブレイクスルーはいくつか必要だが)目指せなくない数字だなと思っている。とはいえ、これもちょっと先すぎるが故に簡単に見えるだけだと思っている。
つまりこのくらいになるとまた、現実感がないから行けそうな気がする錯覚なのだと思う。起業当初に”ユニコーン”を見据えている時とあまり変わりないかもしれない。
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イメージできないと到達できない
まとめると、我々スタートアップの起業家は経験したことがないことをし続ける人生になるから、感覚がないのは当たり前。ただ、そこに近づくと”難しそうだな”という感覚を感じ始め、そこからイメージできると”行けそう”に変わる。多分この繰り返しなんだと思う。その数字をいかに実感値に持っていけるか。イメージできれば達成できるし、イメージできていないと達成できない。当たり前だけど統括するとそんな感じ。
自分が起業した時、また起業してからもなかなか中のリアルな数字を聞いたりそこから学ぶ機会は少ないと感じている。理由はシンプルに、みんな忙しいし、次のステージに進めば前のステージにことも忘れてしまったりするからだろうと推測する。スタートアップのコミュニティは助け合いで成り立っていると思うし、それが強くなればなるほどよりいいエコシステムになると思う。なので自分も一プレイヤーでありながら、常にシェアする気持ちで痛いと思ってます。
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