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創業2年のファウンダーから見たフィリピンのスタートアップシーンについて

こんにちは、テックスタートアップから、アパレルスタートアップにピボットしてせっせと着物を仕入れているハリーです。



ピボットして半年ほど経ちましたが、売り上げは以前のビジネスモデルの10倍、着実に毎月事業も伸びており、(めちゃくちゃ小さいですが)この半年でオフィスの増加/移転も今日で3回目になります(具体はこちらにまとめました)。1年半ほどやっていた動画スタートアップのように場所がいらないビジネスモデルではないので、事業成長がリアルに床面積の増加で見えるので、目に見えるものを扱うビジネスは成長が肌で感じやすいです。

最近、弊社に投資していただいているエンジェルの方からの引き合いでフィリピン市場に挑戦しようとしている起業家やそのキーパーソンを繋いでいただく機会が多少ですが増えてきてます。偉そうなことを言える立場では全くないどシードのスタートアップですが、やはり私も同じく色々な方に教わってきて今があるので、ちょっとでも還元したく、経験のシェアをさせていただいてます。

そこで、どうせなら公開できる範囲の話は先に公開しておいて、実際にお会いする際はもっとディープな話ができるといいなと思っているので、このnoteを書くことにしました。

前提としての自己紹介

ちなみに私たちは、2022年3月コロナ禍で起業してから、2年が経ち3期目に突入しております。Day1からグローバルでスタートしている点が他の日本のスタートアップとは少し違ったところで、メンバーはフルタイムは今まだ共同創業者しかおらず、二人ともフィリピン人です。最初はUGC動画マーケティングからスタートして、そこで2回エンジェルで資金調達を行い、事業も順調に伸びていました。スタートアップW杯のフィリピン予選で入賞したり好調でしたが、突如売り上げがガクンと落ち(スタートアップでよくある最初の谷)そこから学びのために立ち上げた自社ビジネス(現在の着物ファッション)が思いの外に伸び、起死回生を計り今に至ります。
なので我々がToB、ToC領域両方経験していること、またフィリピンの方のエンジェルもシリーズBのToBスタートアップ、シリーズCのToCスタートアップのファウンダーが入っていることからある程度のフィリピンのスタートアップ状況も肌感を持って話すことはできるかと思ってます。

アジェンダはちょうど近日お話しする日本のスタートアップの方とのアジェンダを元にしようと思います。
あくまでまだ2年しか事業を経営していない目線であることを理解いただいたうえで読んでいただき参考になれれば幸いです!

①フィリピン市場参入する上での障壁
②フィリピンでの市場開拓方法
③どのようなデジタルマーケティング手法が主流か?
④浸透度が髙いアプリやソリューション
⑤フィリピン市場のトレンド(現地で勝負しているからこそ感じるリアルな感覚)
⑥日本企業がチャレンジしていく上での注意点
⑦堀さん達のGo-to-Marketプラン (何故現在の手法をとっているか?)

①フィリピン市場参入する上での障壁


結論、参入障壁は低いと思います。理由としては英語が主要言語になるので基本全て英語で完結するからです。これは自分たちがやってみて思いますが、圧倒的なフィリピンマーケットのベネフィットです。例えば東南アジアで一番大きなマーケットのインドネシア市場も我々も試みたことがあるのですが、そもそも言語が変わりますし、現地のキーパーソンがいないと何もできません。それに比べてフィリピンは言語の壁がない(もちろん大学受験レベルの英語は必要ですが)、さらに”日本人であること”が優位に働く国です。日本人へのリスペクトが大きいですし、外国のものに対してのリスペクトも非常に高いのがフィリピンです。Made in Japanブランドが大きいのがフィリピンの特徴です。我々も例えば動画マーケティングの時は、日本のスタートアップということを売っていました。理由は、”クオリティを担保する”こと、”しっかり納期も守る”といういわば、日本人にとって当たり前のことを当たり前にできなサービスが横行しているので、日本クオリティを持っていけばそれがそもそもの優位性になります。我々が失敗した理由はそもそものマーケ絵とが小さすぎたことなど別のところに起因するものと分析しており、日本クオリティは優位だったと分析してます。

②フィリピンでの市場開拓方法


ToBもToCもMetaです。が長くやっていたToBの方から話します。我々はフェイスブックコミュニティを有効的に活用して、効果的に広告も使いました。フェイスブックの広告はやはり鉄板ですし、インスタグラムの広告も同じくです。まずはそこで顧客を獲得してあとはリファラルで伸びていくイメージです。
オフラインは全く持ってダメでした。これはあくまで実体験ですが、展示会や自主イベントの企画などオフラインも一通り試しました。ToBの際も一番コンバージョンが良くLTVも高かったのは圧倒的にオンラインでした。オフラインだと雑音が入りすぎます。例えば展示会などは、営業目的の名刺ばっかりだったり、なんなら無料でもらえるボールペンなどを集めに来ているおじさんおばさんなどをフィルタリングしないといけません。
感度の高い人間はそんなところに行かずに、Facebookや紹介で情報を得ているように感じます。
これは他のスタートアップも同じようだと思っており、例えば他のYCスタートアップも展示会などはそんなにパフォーマンスよくなさそうでした(あくまで個人の見解)。

③どのようなデジタルマーケティング手法が主流か?


上に通じますが、Facebookが日常に浸透しているのでまずはそこToCならインスタグラムです。ちなみに我々の今の顧客獲得はほぼ100%インスタグラムです。Facebookもありますし、TikTokも開設まではしました。試した上で、インスタ一本でやるのが一番いいと判明して、そこだけの一本足打法です。
Googleはあんまり試したことはないですが、日本人よりも検索でTiktokやインスタを利用している頻度が多いことは間違いないので、Metaに傾聴している感覚はあります。
あとちょっと話はズレるのですが、プロモーションがやたらと好きな国です。これはフィリピンだけなのか東南アジア全般なのか分かりませんが、毎月ゾロ目のタイミングで必ずセールがあります。Lazadaもそのタイミングでアプリ名を変えたりします。”Lazada 8.8”のような。広告×プロモーションの合わせ技がキーかと思います。我々もToBの時は基本それだけやっていました。
ただ無料にすると質の悪い顧客が集まりすぎてしまう(これに関しては大きく反省してこのnoteで書きましたので、そこは日本以上に注意が必要かと思います。こちらの無料モンスターは想像以上に手強いです。笑 
私たちもひどく失敗しました。

④浸透度が髙いアプリやソリューション


ここは人によって知りたい内容変わりそうですが、こっちの人がいつも使うアプリは、SNS系でいくと、Facebook, Instagram,Tiktokで、日本のようにFacebookが廃れてスタートアップだけの世界になっている(笑)感じはなく、まだ全ての人々の生活の中心がFacebookです。特にビジネスにおいて。メルカリとかがないのでその変わりがFacebookと考えるとイメージつきやすいかと。LINEの変わりもFacebookです。Tiktokはまだまだ若い層中心のイメージで、ストレートにいうと教育レベルがそこまで高くない人が多いプラットフォームの印象。安いものとかはみんな結構Tiktokで買ったりもします。
生活になると、Grabはもう中心の中心。どこへいくにもGrab、何かを買うにもGrabです。バイクとかはAngkasを使う人も多いですが基本的には中間層以下です。余談ですが、Angkasのマーケティングはすごく上手です。あとは日本でいうAmazonや楽天の代わりはshopeeかLazadaになります。Amazonの方が10倍便利ですが。笑
あと我々が事業主として多用しているのはLalamove。こちらでは当日配送が当たり前で、我々もサプライヤーとの発想はこのアプリをほぼ毎日使ってます。詐欺もあります。笑
この辺は、こうやって書くとすごく表面的な話になってしまいがちなので、直接お話しする際に、領域に合わせてより深く話せれたらと思います。
ここでスタートアップの参考になる話をすると、いろんなスタートアップを見ているとやっぱり苦戦している理由に、こちらの人は”モールによく買い物をする習慣があること”だと思います。
確かにコロナ禍で一回だけ、いろんな分野でのDX化が進みました。それでも結局コロナが明けると、みんなモールに買い物に戻るんです。ちなみにこっちのモールは日本人の自分は行きたくありません。な座ならめちゃくちゃ混んでいるし、レジは死ぬほど遅いし、そもそもモールに行くまでの交通渋滞が最悪。それでもECでものを買うのではなく、モールで買うにはいくつか理由があって、一つはオンラインでの詐欺が多いからやっぱり見て買いたい、あとこれは最近自分で気づいたのですが、外を安全に歩けないから子どもがいると必然的にモール=安全に歩ける場所になること。つまりモールに行くのは買い物だけではなく、我々が公園で子どもを散歩させるような場所のイメージになるんです。
「だからモールか」と最近自分の中で腑に落ちました。

⑤フィリピン市場のトレンド(現地で勝負しているからこそ感じるリアルな感覚)


他のnoteでも書きましたが、やはり発展途上国で年々成長しているこの国において、スタートアップ=テック系のスタートアップではなく、衣食住スタートアップが伸びている感覚です。現に一番伸びているスタートアップはPickup coffeeという、コーヒースタンドのスタートアップです。2022年にスタートして昨年$40M調達してます。理由は日本のコンビニの美味しいコーヒーのポジションが空いているので、シンプルにそこのシェアを取れているからです。このように、衣食住に関わるビジネス、スタートアップが伸びやすいというのは2年やってみての肌感覚で、自分たちの反省点としては”テック”にとらわれすぎたと反省してます。
すごくシンプルにいうとテックなんてものは、あくまで人件費が高い国でその人の置き換えにおいて価値を発揮するもので、フィリピンのような大学卒の給料が数万円の世界では、そこにいる目の前の人を10人雇った方が効率がいいわけです。ToBのSaasなどがそんなに目立っていない理由も、そこにあると私は見ています。そもそも、人件費が安いからテックで置き換える必要がない、またプラットフォームを入れたら教育しないといけないが、1年から2年で辞めていくこのフィリピンでその教育リスクを取りたくないと経営者なら考えてしまうと思います。実際にこちらに10年いるような日本人のスタートアップ関係者でも2年くらいいたら”長くいるね”という感覚になるらしいです。実際に経営してみてもそれは本当です。大体一年くらいで辞めていくイメージです。
なので、長くなりましたが、トレンドは圧倒的に衣食住にまつわるような生活にダイレクトに関わるToCサービス、ToBのテック系は今はまだ難しい、というのがトレンドと言えるかと思います。
ジェネシアの鈴木さんがGlobisのYouTubeで話されてましたが、ToBのSaasっぽいものを無料で導入してもらってそのオペレーションを抑えに行くが筋だと心から思います。我々は最初のUGC動画マーケティングではそれができなかったです。
改めてですが、このグロービスの動画はこれから東南アジアへ行く方に本当に参考になると思います。


⑥日本企業がチャレンジしていく上での注意点


特に日本企業だからの注意点はないかと思います。が、あるとすればリーガル面かと。我々はまだ政府の目にも止まらぬようなサイズなので問題ないですが、子会社として登記する場合は莫大なお金が必要になってくると専門家から聞いています。なのでシンガポール登記でスタートするスタートアップも多いですし、その辺りは注意が必要そうです。この辺は専門ではないので、あまり深くは書きませんが、今我々もその辺りはディスカッション中です。
あとは当たり前の話になるかと思いますが、日本とは全然違うマーケットになるので、決済権限を持った人が日本とは別物としてやる必要があると思います。スピード感も大事だと思うので、そういう意味では別のスタートアップ立ち上げくらいの感覚でやるのがいいかと思います。
逆に上手くいくと我々の今のように、英語で作ったサービスを一気に英語圏へ持っていけるので、そういう意味ではアドバンテージが大きい国です。我々もマーケ費用はかけずにアメリカにサービスが広がっており、今顧客の半数くらいはアメリカ含む海外です。もちろん東南アジアの途上国のフィリピンとアメリカ、でもグラフィックは変わりますが、フィリピン人は常に英語で情報収集しているので割とアメリカは身近にあること、また特にToCでフィリピンで売れるならアメリカでも売れるだろと思えるなと、これは自分でやっていて感じてます。

あと注意すべきは採用もかなり注意です。すぐ辞めます。本当にびっくりするくらいすぐ辞めます。なので、すぐ辞めるを前提に採用することがいいです。これはこちらの経営者から聞いた言葉ですが、人材会社からは「忠実だけど頭は良くない人か、頭はいいけどお金を盗む人どちらがいいですか」と言われるとのことです。半分冗談ですが、実際にお金を取られるとかはよくある話で聞くので、採用は日本よりも難しいかもしれないです。

採用に関しては、色々試行錯誤してたどり着いた方法をPodcastで以前話しており、我々は履歴書は見ない、スキルチェックをしっかりする、インタビューはしない、というやり方に辿り着きました。
共同創業者や現地責任者レベルを採用するのは相当ハードルが高いので、今は3人の信頼できて機動力のある共同創業者だけであとは10人のパートタイムで穴埋めしてます。
過去にフルタイム社員を採用したことがありますが、奇しくもフルタイム社員がいなくなった今の方が事業成長が早くなっているのは偶然ではないと思ってます。

⑦堀さん達のGo-to-Marketプラン (何故現在の手法をとっているか?)


すでに話した通り、インスタでの一本足打法なのですが、なぜかというとシンプルに一番コンバージョンとLTVがいいから。特に我々のステージでは変に色々手を出すよりも上手くいっているところによりダブルベットしていく方がいいと考えているからです。
ちなみにこのインスタの一本足打法は、実は日本でもyutoriという会社が同じような領域で上手くいっており、ToC特にアパレルにおいてはグローバルスタンダードかと思います。

以上、簡単ですがちょっとまとめてみました!
今後お話しする方はどうぞよろしくお願いします。


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