『福岡学生演劇祭2023』
8/13日 @ぽんプラザホール
ABCブロックを通しで観劇。
全部で9団体💦
集中力の限界を感じました(自業自得)
各団体の感想を思うがままに書いてゆきます。
紙アンケートと重複する内容もあるかと思いますが、ご容赦下さい。
また、当方、当地の学生演劇団体に詳しく無い為、団体事情等を汲み取れていない点もご勘弁ください。
Aブロック
A1 まいにゅーぎあ『いつかの電話』
何かしらの実体験に基づいて書かれた作品のように感じられました。
家族という「決められた、逃れられない関係性」の中で生じる擦れ違いは普遍的で、共感を生みやすいテーマです。それを、リアルに仕上げている点は良かったと思います。
しかしながら、今作の擦れ違いについて言えば、どこかエネルギーに欠けます。妹の涼香が思い悩むには、もっとインパクトある一撃があっても良いのでは。と思います。
また、妹の本心を引き出すという意味では、姉の台詞中に何らかのきっかけを混ぜる(要所要所でイラっとさせる)等、掛け合いを経て葛藤を膨らませる書き方にすると、飽きない会話になるかと思います。
A2 闘う!あらいぐま『あまやどり』
メインのお2人の立ち居振る舞いが、まるで本物の親子のようでした。特に母親役の方は、演じるにあたり、人間観察を重ねてきたのではないでしょうか。(若しくは、ドラマや舞台作品等からのインプット量が多いか、です。)
途中の試みは、演劇的にとても面白いと感じました。様々な動作から生まれる音が、「雨に聞こえる」という気づきと驚きを与えてくれました。また、舞台と客席との一体感を生み出す一つの手法として、大変勉強になりました。
脚本面については、主人公らが、置かれている状況を受け入れるのが早いと思いました。観客の理解度と、(母親は一旦置いておいて)娘の理解度を一致させた方が、導入しては親切だと思われます。
ストーリー先行ではなく、やりたい演出先行で書いている分、その辺りを丁寧に描写しないと、単に設定を観客に押し付けているだけになってしまい、勿体無いと感じます。
A3 でいどり。『爆弾は見ない』
舞台設営のフェーズから「一体何がどう始まるんだ」という期待感を抱きました。冒頭シーンでは、馬鹿、太陽などという独特な言葉選びによって紡がれた台詞がテンポよく流れていきます。序盤のうちに、世界観に引き込まれました。
もっとも、以降の台詞には違和感がありました。ビジュアル面が抽象的な世界であるにも関わらず、セリフが超具象的で、ズレが生じていたからです。
2人の葛藤は、全て現実世界のままに語られる〈Twitter、など〉ので非常に分かりやすいと感じます。その分、観客がイメージする絵はあくまで現実世界の風景一色となるので、「よく分からん世界のよく分からん人たちが、死ぬほど現実的なことで揉めている」という理解しにくさもあります。
どうせならば、思い切って全部抽象表現に寄せる or 具象的なシーンは演技の具象度を上げる方が、客ウケは良いかと思いました。
Bブロック
B1 エンタメユニット爆笑サンライズ『あめ』
団体名をみて、コメディ一色でわちゃわちゃ系の作品を勝手に期待していました。
…違いました(笑)
「観客を舞台の世界に誘う」という点で、一番良かったです。他団体が素舞台をどう見せるか、という方針なのに対し、この団体だけ違ったと思います。絞った照明と舞台美術、適度な雨音、役者。ビジュアル面の作り込みが確りしていました。
主役の彼も頑張っていました。どこか気怠そうに、フラフラとした立ち居振る舞いが良かったです。モラトリアムを体現していました。
但し、彼の心情変化にはあまり追いつけませんでした。言葉を選ばずに言うと、勝手に苦しんで勝手に解決された感があります。私個人の感触としては、演劇というよりも、「なんかよく分からないけれど、なんか綺麗だったっぽい」というポエムさが先行してしまいました。
B2 ギムレットには早すぎる『らぴっど・ふらっと・ぷらっとほーむ』
観客を置いてけぼりにする作品が多い中で、とりわけ「客を巻き込む」ことに成功していたように思います。昨年度の優勝団体ということもあり、自分自身も期待感を持って観劇していましたが、同様に、楽しもうという雰囲気のお客さんが多かったです。身内が多いのか、劇団のプレゼンスが高いのか、はたまた役者の巻き込み力が強いのか。よく分かりませんが、最も理想的な「舞台と客席の関係性」であると感じました。
私の理解力不足もあり、ぶっちゃけ何が言いたいのかはよく分かりませんでしたが、それを超える演出的な面白さがありました。芸人的なパワープレイ(咽せる男、虫眼鏡くん)やシチュエーションもの(エスカレーター)、シュール系(ダダ滑りツッコミ)等、繰り出される笑いのバリエーションはとても幅広くて。役者陣の魅力的な演技も相まって、30分間、飽きることはありませんでした。
大賞を受賞したのも、納得しました。
B3 劇団焚火『いけないらしい』
個人的、ダークホースな団体でした。
序盤こそ、B1と同じやり口か…?と思ったものの、蓋を開ければ全く別物で。B1が「世界に誘う」ならば、B3は「世界に無理やり連れ込む」でしょうか。
落語、噺家のエッセンスが含まれた話しぶりに、どんどんと引き込まれるようでした。作品全体が、役者たる彼のカリスマ性、センスで成り立っている感じがします。
ストーリーをみると、終盤、「してはいけないらしいこと」で伏線回収を畳み掛けるのが良かったです。一方、伏線をはっていく中盤に中弛み感がありました。寄席ではなく演劇ですから、演劇的な飽きさせない工夫を取り入れると、尚良いのではと思います。(「複数人を1人で表現する」という工夫以外に、です。)貴団のカリスマ性で、更にブラッシュアップされれば、めちゃくちゃに強い作品になりそうです。
Cブロック
C1 よんもじオノマトペ『超不自然』
主役の彼の、どこか頼りないけれど皆から愛されるキャラクター性が良かったです。特に、マキちゃんとの気まずい雰囲気が最高でした。この他の役についても、互いの関係性を演技から感じ取れるのが良かったです。
ただ、セリフがあまり口に馴染んでいないような印象がありました。ワンシチュエーションの日常劇だからこそ、いかに「違和感の無い」演技をするかが大切になると思うのですが、なんだか発声がぎこちなく、途中まで気になってしまいました。
また、出てくるトピックは面白い(打ち上げドタキャン、まきびし、冷蔵庫にAV等)と思ったのですが、ストーリー全体の構成には再考の余地があるかもしれません。漠然とした設定と最後のオチを土台に、役者に当て書きしているように思えます。雰囲気で書くのではなくて、序破急を意識した展開にした方が、全体的なメリハリがつきそうです。
C2 立つ鳥濁した痕始末『ボディ』
設定が良くできた作品だと思いました。
これが映画やアニメだったら、なきがらの方も描写せざるを得ないですからね……。きっと、興醒めしてしまいます。「観客の想像力に頼る」ことこそが、演劇でフィクションをやる意義なんだろうと思います。
他にも1人芝居の作品はありましたが、これが1番、精神的にハードだったのでは無いかと思います。
舞台上で1人という孤独。役柄では、誰からも気付いてもらえないという孤独。双方への不安感が、役者さんの中でリンクしていたようで、それが意図せず、観客の心を掴んだのではないでしょうか。終始、観客の視線を集めていたのが、印象に残っています。
ストーリーでは、広げた設定を回収し切っていない点が少し気になりました。また、話は時系列で進んでいきましたが、その過程をどう見せたいのか(※観客として、どう見たら良いのか)が分からず、単に説明を聞かされている様だったのが、残念でした。セントラルクエスチョンを序盤ではっきり提示してあげれば、より親切な作品になろうと思います。
C3 劇団テスカトル『ミラクルダークホース』
最後にして一番の問題児でした笑笑笑
私はメタ笑いが嫌いでは無く、むしろ大好物なので良いのですが、あの雰囲気に不快感を抱いたお客さんは少なく無いと思います。(終演後に、軽く不満を漏らされている方々を目にしました。)
作中で言及があった通り、批判的な声はあくまで自己満足に過ぎないのかもしれません。それでも、「お金を払って観に来てくれている人がいる」以上、作り手サイドは見せる意識を忘れてはいけないのだと思います。私自身、作り手サイドを担ってきた演劇人として、そう強く思います。この点、貴団は明らかに欠けています。(※個人的には、意味不明さをエンジョイ出来ましたので、別にいいです!)
作品の内容は、文化祭でヤンチャな中学生たちがコントやりました位な感じです。それだけ内輪ノリを感じました。また、出演者の方々は何を目指し何を求めているのかイマイチ意味不明でした。あまり楽しくなさそうに演じているのも、ちょっと違和感がありました。作り手側が楽しいのであれば、(見せ物としての完成度がイマイチでも、)百歩譲ってOKだと思うのですが…。
まさかそんな訳ないとは思いますが、全て狙って作ってるなら天才です。そうではないなら、厳しいようですが、もっと客観視した方が良いかと思います。
読み返せば読み返すほど、「どの立場でものいうてんねん」という感じがしています。大変申し訳ありません。
烏滸がましいですが、今後の皆様の演劇活動の参考に1mmでもなれば、嬉しいと思っております。
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