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#3 北米大学ホッケーの壁

皆さんこんにちは、冨田開です。

私が在学するNew England CollegeはNCAA Division3 NEHC(New England Hockey Conference)に所属しており、2020-2021は約一ヶ月程の簡易シーズンを行いました。試合数は全部で12試合(2試合はコロナの影響によりキャンセル)で、チーム成績は3勝7敗でした。また3月28日を持って今シーズンが終了した事をご報告させていただきます。

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今シーズンの総評

今シーズン私は一度も試合に出場する事ができませんでした。と言うのもベンチに入ることも、試合に帯同する事も殆どありませんでした。唯一、週末ホームゲームの時にスーツを着て試合を見に行く以外は、土日は寮からライブの試合を見ることが殆どでした。今までのホッケーキャリアの中で試合に出れない事は何度かありましたが、ベンチにも入れず、試合に帯同もしないという状況は振り返ってもありません。勿論、悔しい気持ちはあります。同学年のプレイヤーは着々と試合で活躍し、「試合に出ている人」と「試合に出ていない人」とでは何となく距離感があります。しかし正直にいうと、今自分が試合に出れていないのは妥当だと思う自分もいました。私のチームにはゴールキーパーが自分を合わせて五人います。そのうち四人はJunior(大学3年生)です。現状は3年生のファーストゴーリー二人が交代に試合に出場し、一人はサードゴーリーのバックアップ。練習に出れるGKは四人なので、もう一人の三年生のGKは練習にも出させてもらえない状況です。練習が出来ているだけありがたい事ですが、ロースターに入っているGKの中では一番下っ端ということになります。練習は常にファーストゴーリー主体で動きます。GKの競争率はかなり激しいので練習中に変わってもらえないことも多々あります。防具を着て、氷上にのって、一本もシュートを受けずに練習を終えることもあります。日本のように年功序列の考え方はないですが、チーム内での立ち位置やスキルレベルによって評価される事は少ないことではありません。私から見てファーストゴーリーの二人は、今まで北米ジュニアリーグで見て来た中でもかなりレベルが高いです。客観的に見て今の自分よりは間違いなくチームでの評価が高いと思います。私が上手いなと思う理由は2つあります。

・ファーストショットのセーブ率

・入ると思ったシュートをセーブできる


北米のゴールテンディングには何が求められるのか

NCAA D3とはいえプレイヤーはかなりのレベルのシュートを打ってきます。ただ単にスピードが早いだけでなく、攻めたコースやアングルにGK嫌なタイミングでシュートがきます。特にSenior(四年生)やJunior(三年生)は今まで自分が経験したシュートの中でもトップレベルに上手いです。しかしファーストゴーリーの二人は練習の中でも常にファーストショットを95%程度セーブします。私は良く言って90%弱くらいだと思われます。ファーストショット(レッドショット含む)を高いパーセンテージでセーブできるGKは圧倒的に安心感があります。ファーストショット(特にハウス内)を高い確率でセーブできるGKは私の中でも上手い選手の指標です。

『入ると思ったシュートをセーブできる』と言う考え方は少し漠然としていますが、これはコーチやチームメイトに絶大な信頼を与える事ができます。ここで定義する『入ると思ったシュート』と言うのはただ単に2-1のバックドアやブレイクアウェイのようなシチュエーションではなく、完全に正対が遅れたオープンネット状況でいかに反応できるかと言う事です。ゴールキーパーとして私が常に求めるのは『シンプルさ』です。相手がシュートモーションに入る前にPoditioning/ポジショニングAngle, Depth,Square(Box Control)』を完成させてセーブ、ブロックするのが理想です。だからこそ準備段階としてスケーティングスキルが重要になってくるのは言うまでもありません。

Positioning/ポジショニングとは

Positioning =Being in the right place & the right timeポジショニング=正しい時間と場所に(シュートを受ける)準備が完成している

Angle:ゴールの中心とパックを結んだ中心に自分の身体を置く事
Square(Box Control):身体の面がパックに正対(正しい位置に手がある)
Depth:クリーズ内の最適な深さ(縦方向)にいる

簡単に説明するとこんな感じでしょうか。詳しく知りたい方は文字にリンクを貼り付けておきます。(英語ですが)詳しくはUSA HOCKEY GOALTENDINGを参考にしてください。

進化していくゴールテンディング

上手いGK程この基本の技術を3つをシンプルに素早く使うことができます。しかしこれは理想論であって必ずしもシュートを受ける前に自分の理想の体勢が完成していないこともあります。そこでいかに反応してセーブできるかが重要になってくるのです。昔はシュートを受ける前には必ず静止してセーブする事が主流でしたし、練習メニューもGKが止まってからシュートを打つようなものが多かったと思います。勿論、基本は今も変わっていません。正対(静止)-セーブ-フォロー、これが基礎であり、理想です。しかし現代はそれに加え『動きながらセービングする』技術が求められてきています。バタフライスライドをしながらハイショットにくるシュートに反応したり、パスコースが他になくシュートに限られた場合はC-cutを使って少し前に出たり、後ろに下がったりしてセーブすることもあります。(やりすぎるとフェイクされた時に終わります)。進化していくホッケー戦術やプレイヤーのスキルに対してゴールキーパーも日々進化していく事が求められるのです。動きながらのセービングは静止してのセービングより格段に難しく、複雑な動作が求められます。例えばブロッカー(右)側からキャッチング(左)側へのパスにレフトハンドの選手がブロッカー(右)側のハイショットを打ったとしましょう(これだけでもう複雑)。身体自体は左にバタフライスライドするのに対し、右手(ブロッカー)だけは進行方向と逆の右方向に出します。(勿論、T-Pushして正対してからセーブするのが理想です)。どちらにせよ先行方向と逆向きにセービングしなくてはなりません。この技術を試合のは対展開の中で正確に使うのは難易度はかなり高いですが、現代のセービングではこれが求められています。そしてこれが私の言う『入ると思ったシュートをセーブできる』と言う考え方です。

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同じカンファレンス内の他大学のGKもかなりレベルが高く、試合は滅多に点差が離れることはなく接戦になることが多いです。改めて大学ホッケーのレベルを実感した年になりました。



New England College Lee Clement Ice Arena

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振り返り/まとめ


今年はコロナウイルスの影響や大学1年目と言うことでバタバタしてしまい、あまりSNSを更新できませんでした。大学の授業状況やリンクの設備などを教えて欲しいと言う意見も頂きました。ありがとうございます。学校は春学期が5月中に終了し、終わり次第日本に帰国する予定です。今回のオフで大学について色々と紹介して行けたらと思っております。他にも何かアメリカや大学のことで質問があればいつでも聞いてください。




最後になりますが、今シーズンは私にとって苦しい時期が続きました。本来『挑戦する』と言う言葉はかカッコ良さげですが、上手くいく事ばかりではありません。新しい何かに挑戦することは勇気が要りますし、不安がつきものです。前に進むだけでなく、時には後ろに下がる時、下がらなければ行けない時が必ず来ます。短期間では決して成果が出ない時もあります。

成果が出ないときこそ、不安がらずに、恐れずに、迷わずに一歩一歩進めるかどうかが、成長の分岐点であると考えています。』羽生善治

そんな時こそ

常に明確なビジョンを持って、歩き続ける事が大事なのかもしれませんね。


チャレンジしなくちゃ
生きてる甲斐ない
どこまで行けるか?
走り続けよう


The easy way has no meaningですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。それでは最近悪さをする事に目覚めた反抗期アーサーくんの写真と共に今回は締めさせて頂きます。

それでは! See you later!! #3

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冨田開(とみたかい  1999年5月23日)は青森県三沢市に長男として生まれ、6歳の時に友達から誘われホッケーを始める。小学校三年生の時に試合前ゴールキーパーが不在だった際、ジャンケンに敗北した事をきっかけにゴールキーパーを始めさせられる。小学生は三沢ジュニアアイスホッケークラブ、中学生では三沢中学合同(三沢市立堀口中学校)でプレーする。U16日本代表に選出されロシア遠征に参加、青森県選抜チームに選出され全国大会3位、三沢中学合同チームでは全国4位となる。その後、東京都国分寺市の早稲田実業学校に進学。高校3年時にU18日本代表としてスロベニアの世界大会に参加。高校3年夏に早実を自主退学しカナダオンタリオ州にあるOntario Hockey Academy(オンタリオホッケーアカデミー)ホッケー学校に転学。卒業後は2年間アメリカのジュニアリーグ(20歳以下の育成リーグ)3部でプレーする。
2018-2019 North Iowa Bulls(NA3HL)- Wisconsin Whalers(NA3HL)2019-2020 Pittsburgh Vengeance(USPHL Premier)
今秋からNCAA Div3 New England College(ニューイングランドカレッジ、ニューハンプシャー州) 北米大学ホッケーリーグ2部に挑戦。









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