ダイヤモンドプリンセスの新型コロナに関する取材を受ける前に、知ってほしいこと。
このnoteは現在ダイヤモンドプリンセスに勤務されている友人の方々、そして元ダイヤモンドプリンセス勤務の友人の方々へ特に伝えたい内容になります。
僕、そして僕の友人にもメディアからのアプローチがあったので、もしかしたらあなたのもとにも、今回のダイヤモンドプリンセスの件に関して、メディアからの取材要請がきているかもしれません。
そんな方達に取材を受ける前に知っておいて欲しいことがあります。
まず参考までに自分のケースをお話しします。
先週の土曜日Twitterを通じて、あるワイドショーのスタッフから連絡が来ました。
番組スタッフによると、番組の内容として乗客のケアに尽力しているクルー(乗務員)の頑張りを伝えたいという趣旨でした。
僕は何人かの、ダイヤモンドプリンセス号乗船中の同僚と連絡を取り合っており、彼らがどれだけ大変な思いをして頑張っているかを知っていました。
そして先週の土曜日にいたるまでは、テレビで放送されるのは乗船されている乗客のクレームや生活に対する不満ばかり。
クルーの頑張りが放映されている気配がほとんど無いと感じたため(“感じた”と濁したのは自分は今ジョージアという国に住んでおり、日本のメディアを全て追えないためです。)そういう趣旨ならばと快くOKし、スカイプにて取材を受けました。
一時間ほど取材していただき、放映されたのはおそらく5分程度。
その内容に関しては『クルーが頑張っている』というよりも、どちらかといえば『クルーがかわいそう』といった内容の編集となりました。
編集に関して、自分はメディアを特段責めたりするつもりはありません。
まずはクルーに世間の注目が集まったことに関しては良かったと思います。
放送が終わり、さらに新たなメディアが、番組が、多数出演オファーをしてきました。
そして取材を受けたメディアから、今回取材した内容を同局の番組でも流して良いかと、打診されました。
しかし自分は全て断りました。
理由は偏向報道されたからではありません。
理由はメディアがクソだからではありません。
自分がメデイアの『取材』というものの意味を、完全に履き違えていたためです。
取材とはその名前の通り、「材料を取ってくる」ということにあるのです。
どういうことかと言うと、今回のケースだと例えばメディアが「クルーメンバーの悲痛な叫び」みたいな感じの報道でいきたいなーと考えた場合。
それに合う材料を探し始めます。自分の場合TwitterやYouTubeで多少の露出があったため、きっと白羽の矢が立ったのでしょう。
この人ならきっと「クルーメンバーの悲痛な叫び」の材料を引き出せるはずだと考えたのでしょう。
一方、メディアに出る人は自分の想いを伝えたいという気持ちがあります。
テレビという今でも大きな影響力を持った媒体を通じて、元同僚に頑張れというメッセージを届けたい。クルーズ船に関する正しい知識を知って欲しい。という気持ちがあったとします。少なくとも自分はそうでした。
そうなった場合、生放送以外では向こうに編集権があるので、こちらがどれだけそのメッセージを伝えたとしても、それは残念ながら放映されることはほとんどありません。
少し前に検察の「ストーリー捜査」が話題になりましたが、それに似ていると思います。ストーリーを構想し、それに合うキャストを探す。
「こうだ、こうに違いない。じゃあそんなことを言ってくれる人を集めよう。」
それが取材というものなのです。
これに良い、悪いということはありません。それが取材なのです。
最近自分のフェイスブック上に友人からのこのよう投稿が目立ちます。
これに対して、なんでこれをメディアは放送しないんだ!
偏向報道だ!
と怒っている人や憤っている人が多くいて、Twitterでもこのような投稿に注目が集まっています。
これはメディアが隠蔽したり、意図的に放映していないわけでは無く。
それよりも演出したい内容。例えば「悲劇のダイヤモンドプリンセス」というシナリオがあるためにそうなっているだけなのです。メディアが放映する内容はメディアが決めるのです。そしてそれは多くの場合、視聴率というものによって左右されます。
残念ながら豪華客船に乗って優雅な生活期待してたやつら、ざまぁ。といった人や、ネガティブな内容の方が人の注目を集めるといった性質上、それは仕方がないのです。そしてそれが嫌であれば、テレビを見なければ良いだけの話です。
今乗船中の乗客の方におられましても、おそらくポジティブなことを言っている人もいれば、インタビューの中にポジティブな内容を含んでいる人もいるでしょう、しかしメディアが「劣悪な船内環境」、「悲劇のダイヤモンドプリンセス」を演出したいと思った際、ポジティブな内容を話す乗客はキャストとして、メディアが用意したその舞台に採用されません。ポジティブな内容を話すとカットされます。
それが『取材』というものなのです。
それを知らないまま、メディアの取材を受けてしまうとお互い不幸になります。
僕の様な人間にもTwitterのフォロワーがおり、フォローしてくれている人達がいます。例えば
「あの映画、本当に面白いよ。」
という情報を僕のツイートから受け取るのと、メディアから受け取るのでは、何にも忖度する必要のない僕個人からの情報のほうが「あの人が言うなら。」と信用してくれる人もいると思います。
個人が発信できる時代で、その情報が時に、メディアより価値がある時代なのです。
つまり何が言いたいかというと、現在ダイヤモンドプリンセスに勤務されている友人の方々、そして元ダイヤモンドプリンセス勤務の方へ。
本当に伝えたい想いがある場合はTwitterやYouTubeを使いましょう。
メディアという舞台に立ち、演じてでも伝えたいことがある場合や、自分の言いたいこと100%使われなくても良いと思った場合のみ、メディアの取材を受けましょう。
このあたりの相互理解がないと、取材され、こんなはずじゃなかった!となってしまい、お互い不幸な感じになってしまいます。
僕は先にも言ったとおり、メディアがクソだと言いたいわけではありません。
僕のYouTubeのコメントに「マスコミはクズ。」といったコメントを残す方や、これから取材を受ける可能性のある同僚に対して、取材を受ける側のメディアリテラシーが足りないと、マリオネットになってしまう可能性があることだけ、このnoteで伝えておきたいのです。
ちなみにこれがメデイアとの最後のやりとりです。
この後、一切連絡が来なくなりました笑
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豪華客船で6年働き、ディズニークルーズ、ホーランドアメリカクルーズ、そしてプリンセスクルーズと働いてきましたが、船上は地球上最も安全な場所の一つだと思います。
今回のことを機に豪華客船で旅をする人や、働く人が減らないことを切に願っています。
では今日はこの辺で Von voyage!
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