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なろう全然知らないオタク女がなろうアニメを観る【#モブせか】


『超余裕!』で、なろうアニメの心構えを知った前々回。

『魔王学院』で、俺TUEEEの極北を知った前回。

実はこの他にもいくつかお試しで視聴していた作品があり、そろそろなろうアニメの本質は掴めたかな……とメガネを光らせていましたが、すみません、全然わかってなかったです。

何の前情報もなく、なんとなく再生してみたひとつのなろうアニメ。

え?
めちゃくちゃ面白いよ?

※この記事、一番無駄な自分語りが多いです。ごめんなさい。聞いてください。


©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』を観た

Q. 女性向けなろうアニメかな?

A. ゴリゴリSFロボットアニメ

【あらすじ】

超絶女尊男卑乙女ゲームのモブキャラに転生した辺境貴族のリオンは、うっかり悪役令嬢を助けてしまったことで物語の中心人物に。

なぜか親密になるヒロインと悪役令嬢、同じ転生者の偽ヒロイン、憎めないおバカイケメン五人衆(攻略対象)、敵国の皇女……様々なキャラクターがゲームとは違う動きを見せる中、リオンは旧文明の遺産である相棒ルクシオンと共に、王国の存亡をかけた戦いに身を投じてゆく。
(投じてゆく寸前でアニメは終わってます。でも二期決定してるし原作はちゃんと完結してます。ヤッタネ!)

【視聴直後の感想】

男の子(性別を超えた概念的存在)の夢のすべてが詰まった作品。

このオープニング映像を見てくれ。
止め絵の多様で「あ、予算少ないんだ……」って赤ちゃんでもわかるよ。
そんなハンデを背負いながらも、プロたちが最大限盛り上がるオープニングに仕上げてくれている。

曲前半で主要キャラをお披露目。どういうポジションのキャラか? というのも、わりと一目でわかるようになっている。
徐々に盛り上がるBメロ、格納庫が開き、エアバイクにまたがった主人公の背中。アップになったアロガンツ(主人公機)の赤く光る目。

そして疾走感のある伸びやかなサビで、満を辞してエアバイクが大空へ飛び立つ!
続いて戦艦から出撃する、重量感たっぷりのアロガンツ!(とメインウェポンのスコップ!)

それを見上げて微笑むヒロイン二人……各回名シーンの数々……激しい空中戦を繰り広げる主人公の凛々しい雄叫びで〆(シメ)……。

これは我々が、幼かったあの日に置いてきた夢のカケラ。
平日夕方にやっていたロボットアニメそのものです。


あまりの郷愁に、毎回オープニングを飛ばさずに見ちゃってたよ。
曲自体もとても良い。タイアップなのかはわかりませんが、『モブせか』の世界に生きるリオンにぴったりだと思います。


続いて良いところ、残念なところに入りますが、他記事と違って「残念なところ」から上げていきます。
残念なところを全力でカバーしたプロ根性のたまものが、本作『モブせか』の魅力のひとつだと思うからです。



『モブせか』の残念なところ

(1)書籍版と違いすぎるキャラデザ

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

一昔前の『花とゆめ』あたりにありそうな、ちょっとクセのあるキャラデザです。
「乙女ゲームの世界」であれば正しいデザインだけど書籍版とかけ離れているし、特に男性視聴者にとっては、なじみがなさすぎて戸惑ってしまうのではないでしょうか。

作画が悪いとはそこまで感じませんでした。
動きは少ないけど、そのぶん丁寧に描かれていると思います。そう、ロボットやメカがね……。

ロボも美少女も高クオリティ! とはいかないのがオトナの世界。
美少女よりもロボを優先する潔さは、内容的にも客層的にも正しい判断だと思いますが。
各SFガジェットも3Dじゃなくて手描きだし、なめらかでド迫力のバトルシーンも無い。(これは良いところにも繋がってくるので後述します)

なろうの主流からは外れている変わり種でしょうが、多くの高評価とファンを得ている作品なので、二期はもう少しカネをかけてくれ! と視聴者全員が思っているはず。


(2)勘違いしやすいタイトル

100%余計なお世話だけど言わせてください。
タイトルで損してます。

なぜなら、女性向けなろう作品が溢れた現在、このタイトルは「冴えんモブ女が転生した乙女ゲー世界で、なんやかんやイケメンに見初められてハッピーエンド」みたいな凡百の内容を想起させるからです。

『モブせか』は、どちらかといえば古き良き少年漫画やラノベやギャルゲーを愛し、なろうに興味が薄い層に好まれる作風だと思います。
それなのにこのタイトルでは、本来の客層にあまりにも届きづらい。

すでにじゅうぶんな人気を誇っている作品なのでめちゃくちゃ余計なお世話ですが、せめて男性主人公であると一目でわかるタイトル(ロゴデザインで「モブ♂に厳しい~」と記号をつける等)なら、今まで気にもとめなかった人の目にも留まりやすいのではないかなと感じました。

実際、自分も「なろうに向き合おう」と考えなければ一生知ることがなかったと思います。
この後、『サクラ大戦』『斬魔大聖デモンベイン』『BALDRシリーズ』などがだ~い好きで、世の中の速度についていけないじじい男の子(概念)たちに『モブせか』を布教しまくり、いたく感謝されました。ちなみに私は『BALDR SKY』に青春を捧げていたけど後悔はないよ。



『モブせか』の良いところ

(1)主人公の魅力

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

意地悪・守銭奴・煽りスキルMAX・口達者で図太くて外道騎士なんて異名を持っていて、でも根は優しい。弱きを助け強きを挫く正義感の持ち主……ということを本人は絶対認めない。なぜならツンデレだから。

主人公リオンは、ほぼ『こち亀』の両津勘吉だと思って間違いありません。

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

口八丁手八丁で相手をとっちめて実利を得る計算高さがあるくせに、肝心なところで詰めが甘いせいで「なんでこうなるんだ~!?」となるまでが様式美。
リオンの非道な行いに対する相棒ルクシオンの辛辣なツッコミも冴えわたり、ヒロインからも高頻度で叱られ、一部を除き学園や王宮でめちゃくちゃ嫌われている。主人公チヤホヤなんて夢のまた夢です。

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

『モブせか』における「スカッと」要素は、主人公の過度な持ち上げでも、ヘイトキャラへの容赦ない制裁でも、チートアイテムを使った無双シーンでもありません。

言いたいことを言い過ぎなくらいハッキリ言ってくれる(やってくれる)リオンの傲慢さ、表裏一体の優しさ、高潔さを、視聴者側がすんなり理解できるように描いている点です。

リオンのことをほぼ両津と言ったけど、両津だってしょーもない悪徳警官です。
でも、悪徳も人情も持ち合わせているからこそ人から愛され、読者からも愛される。

個人的に一番ぐっときたのは、ルクシオンというチートを遠慮なく使って勝つことにためらいがないくせに、どんなピンチに追い込まれても殺人は犯さないところ。
そんなことをすれば自分の精神が耐えられないと自覚しているし、何より「ルクシオンに殺戮なんてさせたくない」と本心から思っている。
そして書籍版では、軍人としてのその甘さが後々響いてくる皮肉な展開も、リオンの魅力を底上げしていると思いました。

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

そんなリオンの相棒ルクシオン(CV石田彰)
こいつがまた可愛いんだわ……。ヒロインみんな可愛いのに、それを押し退けて一番可愛い。
彼(?)とリオン、ツンデレ同士のじゃれ合いも魅力のひとつです。


(2)ロボットかっこいい~!

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

アロガンツかっこいいね~~~~~!!!!!

ずんぐりした重量級で黒装甲で赤く光る目なんて最高じゃん。どう見ても悪役の機体だけど。
このタイプのロボット(作中での呼称は「鎧」)を主人公機に据えるあたり、作者さんのフェチズムを感じる。

フェチズムはアニメ制作陣にも感じていて、手書きで描かれたロボットたちには、手書きだからこその「凄み」みたいなのがあります。

絵としてガツンと迫力があるんですよね。へたにチープな3Dでは決して味わえない「妙」です。アップになった時の影の描き方とか、好きな人にはたまらんのではないかと思います。

鎧だけでなく、ルクシオンの本体である戦艦、飛行船、エアバイクなどなど、それらが活躍するシーンでは動き自体少ないものの、映えるカットをちゃんと入れてくれている。

限られた予算の中で工夫を凝らし、カッコよく仕上げようというプロ意識。
こういう熱意のこもった作品をお出しされると、オタクは嬉しくてついニヤニヤしちゃうね。


(3)噛ませ役も成長する

©三嶋与夢/マイクロマガジン社/モブせか製作委員会より引用

「主人公をナメてかかって返り討ちにあってざまあ。二度と主人公に逆らいません。もしくは主人公の軍門に下ります」
みたいなキャラクターが、今のところいないのがいい。(ちゃんと胸糞悪い悪役はいる)

主人公をナメて返り討ち、は攻略対象五人が序盤で体現してくれるのですが、彼らもまたリオンと関わるうちに成長していきます。根がアホちゃんなボンボンなのはなかなか治らないけど……。

特によかったのが、真の意味で敗北を認め、リオンを肯定して仲間になるのではなく「リオンに勝ちたい」「男として超えたい」と思ったこと。
単なる噛ませの踏み台にせず、矜持を持つ一人の人間としてとして描く、作り手の誠実さを感じました。


(4)命の価値が重い

なろうアニメを見始めて実感したことですが、なろう系って残虐描写・暴力描写が多い。
なんでだよ? 世界観や設定はゆるふわしてるくせに、なんで命の価値がこんなに軽いのさ。
人が死ぬのがダメなのではなく、暴力を「スカッと」「ざまあ」に安直に結びつけるのは、とても受け入れられるものではありませんでした。

『モブせか』は世界観がシビアで、そして命の価値も重い。
前述したようにリオンは殺人へ強い忌避感があり、アニメ化されている範疇では絶対に命を奪いません。
さらに、理不尽な扱いや暴力を受けても、自分一人が泥を被るだけなら耐え忍ぶ冷静さもある。(大義名分があれば水を得た魚のように反撃するけどギャグ描写にとどまっている)

これにはすごく納得したし、共感しました。
だってリオンは「日本人の転生者」なわけです。
現代日本の価値観を持っているのに、いきなり転生先でヒャッハーして暴力をふるう、まして命を奪うなんてできるわけがない。

このあたりを徹底しているおかげで露悪的な残虐描写もなく、安心して見ていられます。
そんなリオンも、いつか軍人として手を下す判断を迫られる……という展開が最終盤で示唆される。
アニメ二期はどこまでやってくれるのかわかりませんが、公国との戦争を描くのであれば避けては通れないでしょう。



まとめ

ベタ褒めになっちったね(照)
しゃーない、この手の王道ヒロイックSFロボットものが大好きな層にとっては、行きつけのうまい定食屋の味なんだもの。うまいものはいつ食べてもうまい!

限られたリソースと話数で、ロボットバトル、エアバイクレース、鎧vs戦艦vsモンスターのSF&ファンタジーごちゃ混ぜ空中戦を描き切り、視聴者を楽しませようとした制作スタッフさんを尊敬します。

『モブせか』は作者にもスタッフにもファンにも愛されている作品なのだと、初見の自分にもよくよく伝わってきました。

アニメ二期も楽しみにしています!

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