それ半導体のおかげです:入門 1-03半導体?、シリコン、珪素、Silicon他
半導体工場の建設について、新聞やニュースでよく取り上げられています。この半導体工場では、主にどんな材料が使われているかご存じでしょうか?。
最近話題になっている半導体工場のほとんどは、シリコンという半導体を取り扱っています。シリコンまたの名を、元素記号Si、Silicon、ケイ素、珪素と呼ばれています。なお、シリコーンは、ゴムのような柔らかい素材で、シリコン化合物ですが、半導体ではありません。
シリコンの他にも、半導体素子に必要な能力によっては、化合物半導体と呼ばれているガリウムひ素:GaAs、ガリウムナイトライド:窒化ガリウム:GaN、シリコンカーバイド:SiCなどの半導体ウェハが使われています。また、絶縁体ですが、サファイア:Al2O3も使われています。半導体は、まずはシリコンでできることは、シリコンで半導体素子を作って、シリコンではできないことを化合物半導体でモノづくりをするようになっています。それらを開発するエンジニアが、いつごろどれくらいどんなことで頑張っているのか、特許の件数をもとにひもといていきましょう。
今回の記事では、特許件数エリアを解放しています。さて、みなさんが知るどれくらい前から、担当エンジニアのみなさんが頑張っているのか、みてみましょう。
以下は、半導体ウェハに加工される半導体材料について、日本に出願されている特許を、特許庁の分類コードを組み合わせて抽出し、件数をまとめてみました。(*1)
図1は、シリコンのウェハに関する特許出願の年次推移を示しています。過去から現在にわたり開発が続けられ、2000年ごろからさらに活発になっている様子がうかがえます。前章の1-02ウェハでは、2000年ごろまで高品質で高い生産性を確保するための開発が活発に行われていたことを述べました。なので、図1の結果になったとき、びっくりして何度かやり直しました。あらためて発明の名称を見てみると、「高性能化(例えば、複合基板、教科書にないドーピング(不純物)など」を示唆するキーワードが見受けられました。シリコンウェハは、これからも進化し続けるのかも知れません。
図2は、ガリウムひ素ウェハに関する特許出願の年次推移を示しています。ガリウムひ素ウェハは、赤外色、赤色、黄緑色のLEDやレーザ、高速動作用のトランジスタに使われています。図2では、1990年ごろまで盛んにガリウムひ素ウェハの開発が行われていたことがわかります。これは、2024年現在も主流である6インチサイズのガリウムひ素ウェハが1990年代後半には、量産出荷されたことに起因しているかもしれません。しかしながら、ガリウムひ素の開発がここで終わったとみるのは尚早かもしれません。ガリウムひ素ウェハには、さまざまな化合物半導体(例:AlGaAs、GaInP、AlGaInPなど)が結晶成長(エピタキシャル成長)されます。またそれらを使った製品がみなさんのお手元で使っていただけています。次の機会にこれらの特許出願動向≒エンジニアの頑張りを紹介できればと思います。
図3は、サファイアのウェハに関する特許出願の年次推移を示しています。サファイアは、宝石であって、半導体ではないのでは?と思う方も多いかもしれません。確かにサファイアは、電気を通さない絶縁体です。しかし、このサファイアウェハの表面に、ガリウムナイトライドを結晶成長してLEDが作られているのです。そう、2014年に日本人の赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏がGaN高輝度LEDでノーベル物理学賞を受賞されたときに用いられていた基板が、まさにサファイアウェハなのです。図3では、2010年ごろをピークに特許出願数が減っている傾向が見て取れます。エンジニアのみなさんは、もしかすると次のターゲットに軸足をシフトしているのかもしれません。それは、図4,5が物語っているかもしれません。
図4.5は、それぞれ、ガリウムナイトライド、シリコンカーバイドのウェハに関する特許出願の年次推移です。どちらも2000年後半から盛んに開発が行われていることが見て取れます。
図3,4から、どうやらガリウムナイトライドは、サファイアウェハに結晶成長することからガリウムナイトライドウェハそのもので半導体素子を作っていくようにシフトするのかもしれません。
ガリウムナイトライド、シリコンカーバイドのどちらの材料も、近年では、パワー半導体として、新聞やニュースで取り上げられています。図4,5では、今後どちらがもしくは他技術(オン シリコンなど)がパワー半導体の主流になるにせよ、エンジニアの皆さんが、我々の暮らしがより豊かになるように開発を頑張っていることがわかるかと思います。
ちょっと専門的な話になりますが、ガリウムナイトライドもシリコンカーバイドも、高温で作業すれば良質なモノづくりができることは、グラフ横軸左端の1970年よりも昔から考えられていました。高温とは、約1000℃です。この温度で生産できるほどの装置を開発するには、たくさんのエンジニア、装置を作るための装置、材料、時間、お金が、かかります。一足飛びには、いかないのです。例えば、シリコンカーバイドは、1990年ごろ、実は、ガリウムナイトライドに先立って、青色LEDとして販売されていました。しかし、図5のように1990年ごろのシリコンカーバイドウェハの開発は、活発とはいいがたい状態です。これは、シリコンカーバイドのLEDは、物性的な限界(間接遷移発光)があり明るくすることができないことがわかっていたためと考えられます。これに対して、ガリウムナイトライドは、みなさんのお手元のスマホ、液晶テレビや天井照明、信号機などで使われている通りとても明るく光り、予想通りたくさん使っていただけています。たくさん使っていただける予想がたっていたので、サファイアウェハ表面に約1000℃の温度で結晶成長する量産技術をエンジニアのみなさんのがんばりによって確立されました。もちろん、その技術は、シリコンやガリウムひ素で培われた技術を発展させたものでしょう。そして、図4,5のように、それらの技術が受け継がれて次世代のガリウムナイトライドやシリコンカーバイドの開発に進んでいると言ってよいでしょう。
よく製品の生き残り、勝ち負けが、取りざたされます。より安くて高性能なものが生き残るのは、当然です。ですが、それとは別に、エンジニアが培った技術があって、それらは、特許の形で後進の糧として積み重ねられていると、私は思います。
補足
*1)このグラフは、特許庁が行っている特許分類を基に作成しました。特許分類コードのうち、本文の視点に沿うように分類コードを選択、組み合わせて検索した結果をまとめています。特許検索の視点や手法(キーワード使用など)が異なるとおのずと結果が異なります。あくまで、各企業、エンジニアのみなさんの頑張りを想像する一例として、見ていただければと整理を試行いたしました。
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