心機一転、新14番
3月末、唐突な初夏をおもわせるような、いいお天気の日。ふと鼻先をお線香の香りがかすめた。お寺の敷地の脇を歩いていたときだった。まっしろな日差しをうけてザラザラ光るブロック塀そのむこうで、お墓に手を合わせているひとがいたようだった。「冬場いけなかったし、せっかくのお天気だからお墓参りにでも」ということだったのだろうか。
人間にかぎらず、あたたかくなるとなにかと活動的になるもの。数日まえは、ぬかるんだ空き地の水たまりの上を、アゲハチョウが2匹ひらひら飛んでいるのを見かけた。冬のあいだには見られなかった光景で、目についた。ただ気になるのは、せっかくのカップルでのお出かけだというのになぜ空き地チョイスなのか。近くに緑あふれる公園もあるだろう。さてはうかれて場所まちがえたな。初デートがサイゼでがっかり、みたいなことにならなければいいが。
ぼくらのサンフレッチェはどうだろうか。あたたかくなって活動的になったかといえば、なかなかどうして、そういうわけにもいかなそうだった。アビスパ福岡戦、かなりお堅いゲームでドロー。ゴールを急いているシーンが多く、どこか余裕がなさそうに見えた。でもこれはしょうがない。徐々にあたたかくなっていくこの時期、余裕がなくなるのはムリない話なのである。
選手はみんな冬まっさかりの1月からからだを動かし、まだ寒さの残る2月末からリーグ戦を戦っている。身体のチューニングはすっかり冬仕様だ。気温があがれば当然温度差で苦しむことになる。またこの時期は、ちょうど選手としての日常になれてくるころ。年明けにこしらえた立派な意気込みも、そろそろしなびてくる。モチベーションが迷子になることだってあるだろう。
そしてなにより花粉症だ。この時期症状に苦しむ選手はおおいはず。しかもうかつに市販の抗アレルギー剤も飲めないときた。事前に対策しておかないといけないし、対策したとて、うまくいくともかぎらない。鼻ずびずびで走れば苦しいし、かゆい目では視野も確保しづらい。ぼうっとするアタマもあわさって認知機能はずたぼろだ。
ほかにも、ちょっとまえには確定申告もあったし、新生活をむかえるご家族のこととかもいろいろある。この時期の、選手のパフォーマンスを下げる要素なんていくらでもあげられる。不調はもうあるものとして受け止めざるを得ない。
ただそんななか、松本泰志さんがやけにハツラツとしていた。花粉症とかないのかな。うらやましい。有効なプレーをしているかどうかは詳しいひとにお任せするが、すくなくとも精力的であることはまちがいない。
1+7で8という意味合いもあったはずの17番をエゼさんにゆずり、名古屋の某氏お気に入りの背番号"14"を背負ったことしの松本泰志さん。カズさんへのあこがれを胸の奥にいったんしまって、心機一転新シーズンをむかえたにちがいない……なんてじつに妄想のはかどるステキな変更劇、そこを経てのスタメン奪取である。ぼくはもう身もだえするのをおさえられない。
とりあえず興奮ついでに「この活躍、去年の名古屋グランパス戦観て、わかっていましたけどね!」と自慢げにここに書き残すことにする。
くー、たまらんぜ。