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若者の大企業離れは本当か?

気になる記事があったのでPic。若者の大企業離れが進んでいるらしい。らしいなのでリサーチしていないわけだが、この話は事実だろう。
デジタルネイティブと呼ばれる子達が大企業の風潮にはとても耐えられないと思う。また、頭の固い上司の下で何年も耐えて修行みたいな事をするならとっとと起業して稼げてしまう世の中だ。

ちょこっと思い出話をしようかな…

ちょっとだけ、中小企業診断士(以下診断士)を取った後の話をしよう。
診断士に合格したのは2008年、世間はリーマンショックの嵐に震えている時期だ。某自動車部品メーカーに務めていた僕は、この前兆を掴んでいた。前年の2007年冬、アメリカ出張がきっかけで、世界中の部品在庫を調べ、リポートに挙げたことがこの話の始まりだ。

リーマンショックの前兆は、アメリカ合衆国の中古家屋市場の下落から始まった。出張先のヴァージニアのある街で「For Sale」のついた新築中古物件が増えた。新築中古物件とは、一度誰かの手に渡った物件を転売目的で売りに出す物件を指す。リーマン前は実はこの物件が飛ぶように売れていた。

「新築物件を投資目的で購入して、それを転売して利ざやを稼ぐ。」どこかで聞いた話ではないか?そう、日本のバブル期そっくりなのだ。しかしこの取引には裏面があった。投資目的で購入する個人がどこから資金を調達するのか?である。その個人が調達する先は銀行だった。しかも自身が住んでいる家を抵当にだしてカネを借りるのだ。で、この抵当の付け方が曲者で、物件価値の3倍まで銀行が保証して貸し出すというかなり危険な取引だったのだ。

という訳で、個人が借金して家を買い、その家に投資目的ならこれだけの価値があるので3倍まで融資できますよ~という甘い話。しかも借りてから10年間は利子の返済だけでいいですよ~というとてつもなく危険な商品だったのだ。そこで暗躍したのが、この抵当権を買い取っていた証券会社を始めとしたノンバンク。個人負債を引き取って、それをまた転売。夫妻の中には建物を含む抵当権がついているので、「売れれば」お金が回り続けるという仕組みだ。これが回らなくなったらどうなるか?バブルが膨らみ続けて、弾けるのを待つのみ、本当にバブルだった。

が、個人はそこまで詳しくこの危険な商品を知らずに借りていたのだ。しかも抵当には家具、家電、クルマと個人の所有物に至るまでつけてカネを貸してくれるのだ。そう、個人は「借りたカネは転売すれば3倍になる」という錯覚を起こして自分のカネのように使うわけだ。となると、一攫千金を狙うので先の話の通り、住まない新築を購入する。そして転売する。需要に対して供給が追いつかないうちは飛ぶように高値で売れるが、ある一定の段階で需要を満たしてしまい、値崩れを起こす。そして売れなくなる。バブル崩壊が始まるのだ。

ヴァージニア州はワシントンDCに近いこともあって比較的高収入の個人が多かった。クルマ業界の異常に気が付いたのは、とても個人では所有しきれないほどのクルマを持っていたこと、それを転売目的で所有していたこと、売れないが、買った価格の3倍で売りに出していたことが挙げられる。
同時期にT社の高級車が月間売上の最高値を更新したとニュースになった。しかし、カリフォルニアのモータープールからディーラーにクルマが配送されない事態が2ヶ月続いた。理由を調査すると、「ローン審査中の購入者が多い」とのことだった。

ディーラーは注文書を切ってしまえば一台の実績になる。例えばローンが通らなくても注文書だけ切ってしまっていた。そのためモータープールには出荷されないクルマが溢れ、満車状態が2ヶ月続いたのだ。
この動きはT社だけでなくM社やB社にも波及していた。全米が異常なバブル状態だと気づくのに十分な状況だった。

日本に帰国して、この調査書を上司に上げた。何度も会議の席に同席したが、僕の報告書が取り上げられなかった。つまり会社は「今、受注が好調なのだからなんの心配もない」という間違った結論を出し続けていたのだ。
リーマン・ショック後の日本の製造業がどうなったか、ご存じの方は多いだろう。もしこの時、僕が上司や役員を説得できるだけの根拠を示して、社会全体に警告を打てたとしたら、製造業があれほど落ち込むことはなかったと思う。しかしそれができなかった、会社が許さなかったのだ。だから日本の製造業は一度死んだ。

この期に及んで大企業は生き残るのか?

大企業に入ること、これは将来の安心や安定を得るための一つの手段だと思われてきた。いわゆる神話だと思う。が、時代は変わった。この神話は本当に神話になっている。もう大企業が安心だとか、安定した将来を約束してくれることはない。それは次の記事が証明している。

この発言には関係者はかなり驚いたことだろう。トヨタと言えば、毎年のベア基準の会社として有名だ。企業のトップが思いつきで発言した内容ではもちろんない。日本という国のシステム自体、根幹から崩れてきていることを示す。

なにも大企業が悪いわけではないのだが、この期に及んで大企業を選択する余地が今の若い子にあるのだろうか?と疑問に思う。インターネットの普及から、英語を話すことが当たり前になって、隣の外国人が人として接することができる世代に、凝り固まった「ものづくり至上主義の人たち」は太刀打ちできない。常識そのものが全く違うのだから、気に入らないものを気に入らないと発言して、自由に日本国外へ出ていける人材に育っている。

ひとつだけ大企業のいい所を挙げるとすると、大きなプロジェクトはその企業の社会性や信用性を持って任されることが多い。そのためオリンピックや未来型インフラなど社会の根幹になるような仕事は大企業でないとできないことが多いのだ。そのために所属するとなると話が違うかもしれないが。

雇用の流動を覚悟すべき、人材を人財へするには?

この先何年間かはわからないが、雇用の流動は覚悟すべき時代だと言える。若者は大企業を求めていない。自分が活躍できる企業ないし自治体、もしくはアイディア次第で自分で事を起こすだろう。その流れはもう始まっていて、スタートアップから利益を上げている起業したての企業はたくさんある。

メディアという大きな流れに乗っかっていると、時々スタートしたい若手と出会うことがある。この子達は最大限人生を楽しみたい若者なのだ。つまり楽しむための仕事を選択する権利を持っている。大企業だから絶対良いという理由がないのだから、どこまで追いかけても優秀な人材は流出するのだと思う。

ではこの子達とどう向き合うのか?一つ提案するならば、社会性や理念を一つの個として認めて、その上で対等にお付き合いすることだと僕は思う。よく目上の人を敬えというが、今後は自分のできないことができる人を敬う事だと思う。できないことを素直にできないと言える。こんな頭の柔らかい企業人は少ないが、そこで止まってしまうといわゆる若い子にどんどん先に進まれてしまうのだ。

人材を人財とするには、会社関係なく枠組みを外すことだ。今の日本にはここが足りないのだなと気付かされる。

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