あと一駅…

始発の名古屋行きへ乗る。出張で関東方面へ行く機会が増えて、ここ最近始発の新幹線に乗るために私鉄の始発に乗る機会が増えた。
始発ってなんだかワクワクすっぞ!なんてことはない、眠いのだ。しかもなれてくると余計に眠い。今日の仕事とアポイントの確認とスケジュールを確認、持ってきた本も新幹線の中で読むためのもの。私鉄の車内はほぼ満員。座る所は無い。
隣には同じ駅で乗ったスーツ姿の女の子が座っている。就活だろうか?乗って座ってすぐに寝てしまっている。他にも立ったまま寝てる人、正面のご婦人は口が開いてる。始発の人間模様はいつ見ても面白い。忙しい日本の縮図のようだ。

名古屋駅まであと一駅というところで、ふと隣に座っている女の子のきっぷが見えた。「〇〇⇒580円区間」とあるのでおそらく名古屋駅で降りるんだろうなと想像してしまった。
もう一駅、しかし女の子は眠りこけている。そう、眠りこけているのだ。首をもたげてという表現が正しいのか、おつかれなのか、ぐったりと熟睡している。お世辞にも美しい寝姿ではない。しかし美しい寝姿とはなんだろうか?いや、そんなことはどうでもいい。きっと可愛らしい女の子なのだろうが、昔見たホラー映画のキャラクターみたいになってる。そのまま起きたらきっと整えたであろう髪型は崩れてしまっているのだろう。余計なお世話だが。

名古屋駅に着いた。ここでは沢山の人が降りる。始発の電車でもここからJRや新幹線に乗り換えるビジネスマン。これから旅行だろうか?スーツケースを引くご婦人。今から出勤だろうか?あからさまに不機嫌な初老の男性と改めて見ると本当にたくさんの人が降りる。本当に人間模様が朝から見て取れる。そして、ネタの宝庫だ(笑)。

僕もその一人だが、そうそう、隣の女の子だ…。忘れちゃいけない。スーツケースを荷物として持っていることから、おそらく出張か、それとも就活か。スーツ姿だからデートやその類ではなかろう…。
「あの、名古屋駅、着きましたよ。名古屋駅」と紳士っぽく起こしてみる。
次の瞬間、ハッと顔を上げた彼女、うん可愛い。思ったとおりだ。
が、顔を上げてから僕にはなった一言が…
「わかってます!」
そう言い残すが早いか、さっそうと立ち上がりツカツカと人混みの中に消えてしまった…。

このなんとも言えない焦燥感と「小さな親切、大きなお世話」という言葉がリフレインした。
あ、降り忘れた。僕は僕で残念な気持ちを抱えながら、もう一駅乗るのだった…。

いいなと思ったら応援しよう!

岩田 武
ライターノウハウや取材の裏話、経営者塾のお話なんかを無料で公開中です。 特にライターノウハウはこれからライターになりたい人必見の内容に濃く濃く書いていきます。 サポートいただいたお金は取材費用や本の購入費用に当てさせてもらいます!