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『自力と馬力』第五話
どんな時代においても、親と子の葛藤は様々な形で繰り返し、この世界に最高の可能性を生み出しています。
とても素敵なことですね。
今回は農業を題材に描きました。
何度も失敗を重ね培ってきた技術は、新しい技術よりも劣るものばかりです。
しかし、経験から得た知識でしか解決出来ないこともありますよね。
LimitlessCreationsでは作品を描く際に、
意識している事があります。
それは『共存』
世の中がAIやハイスペックなもので溢れても、
そこには必ず人の手が必要です。
人間が得た知識と経験を最高に活かす為のツールであり、便利に活用することを目標としてほしいと感じております。
『便利』は過去から未来への贈り物です。
『土地の未来』
悠太と市川圭介の農業プロジェクトが動き出してから半年が経った。
少しずつ賛同者が増え、村全体に希望が芽生え始めた。
しかし、その拡大には新たな課題が付きまとった。
プロジェクトの成功には、単なる努力だけでなく、村全体の意識改革が必要だった。
限界と課題
ある日、悠太の家に賛同した農家の一人である中村が訪れた。
彼の表情には困惑が浮かんでいた。
「機械化のやり方を取り入れてみたけど、思ったよりも結果が出ないんだ。」
中村はトラクターを導入したものの、操作に慣れず、畑の一部をうまく耕せていなかった。
また、地域の年配の農家たちからは、伝統的なやり方を軽視していると批判される声もあった。
「効率だけじゃダメなんだな…でも、どうしたらいいか分からない。」
悠太は、その言葉に深く共感した。
彼自身もまた、効率と伝統の間で葛藤していたからだ。
父の叱咤
その夜、父・寛人に中村の話をした悠太は、父の厳しい言葉を受けた。
「お前が責任を持って広めたことだ。
人にやらせるだけで終わるなら、やめちまえ。」
その言葉に、悠太は目を伏せた。
自分の農業哲学はまだ完全に形になっていない。
自分自身がもっと学び、伝えなければ、このプロジェクトは失敗してしまう。
土地に学ぶ
翌日、悠太は市川と共に中村の畑を訪れた。
そこで目にしたのは、トラクターの重みによって硬く締め付けられた土と、不揃いに育つ作物だった。
「土が息苦しそうだ…。」
悠太は膝をつき、土を手に取りながらつぶやいた。
市川もその様子を見て頷いた。
「やっぱり、機械化だけじゃダメなんだな。手作業で補う部分も必要だ。」
二人は中村に、トラクターの使い方と手作業の重要性を丁寧に説明した。
若者たちの参画
そのころ、村に都会から戻ってきた若者たちが集まり始めた。
彼らはSNSを通じて悠太たちのプロジェクトを知り、興味を持ったという。
「僕たちも手伝わせてください!」
彼らは最新の技術やアイデアを持ち込み、農業に新しい視点を加えた。
ドローンを使った畑の管理や、土壌データの解析など、これまで村では考えられなかった方法を取り入れ始めた。
「こんなことができるなんて思わなかったよ。」
中村をはじめとする年配の農家たちも、若者たちの技術を見て興味を示し、徐々に受け入れるようになった。
父と息子の共闘
秋の収穫期、プロジェクトの成果がついに形になった。
トラクターと手作業を併用した畑では、質の高い作物が実り、収穫量も過去最高を記録した。
父・寛人も悠太のやり方を認めるようになり、初めて自ら若者たちに教えを乞う姿を見せた。
「俺もまだまだ学ぶことがあるな。」
その言葉に、悠太は胸が熱くなった。
父と自分が、ようやく同じ目線で農業の未来を語り合えるようになったのだ。
悠太は収穫を終えた畑を見渡しながら、深く息をついた。
「この土地を守るのは、俺たち次第だな。」
父と市川、そして若者たちと共に、彼は農業の未来を築いていく決意を新たにした。
その背中には、「自力」と「馬力」を融合させた新しい農業の可能性が刻まれていた。
村全体がプロジェクに巻き込まれ、さらに若い世代が農業に参画することで新しい可能性が生まれる。
村が一つになり、より大きな挑戦に立ち向かっていく。
さらなる哲学と現実の融合を通じて進んでいく。