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『自力と馬力』第六話

どんな時代においても、親と子の葛藤は様々な形で繰り返し、この世界に最高の可能性を生み出しています。
とても素敵なことですね。

今回は農業を題材に描きました。
何度も失敗を重ね培ってきた技術は、新しい技術よりも劣るものばかりです。
しかし、経験から得た知識でしか解決出来ないこともありますよね。
LimitlessCreationsでは作品を描く際に、
意識している事があります。
それは『共存』
世の中がAIやハイスペックなもので溢れても、
そこには必ず人の手が必要です。
人間が得た知識と経験を最高に活かす為のツールであり、便利に活用することを目標としてほしいと感じております。
『便利』は過去から未来への贈り物です。

#LimitlessCreations


『村の誇り』


秋が深まり、収穫期が終わった村は活気に満ちていた。
悠太と市川の農業プロジェクトは、少しずつ村全体に浸透しつつあった。
しかし、その成功の裏には、地域外からの期待と圧力も生まれていた。
新しい挑戦が、悠太たちを待ち受けている。


大都市からの提案

ある日、悠太のもとに都会の食品流通会社から一通の手紙が届いた。
その内容は、悠太たちの農業手法に興味を持った会社が、村全体の作物を都市部に流通させるための提携を持ちかけるというものだった。

市川と手紙を読みながら、悠太は期待と不安が入り混じる感情を抱えた。

「これが成功すれば、村の収益は大きく変わるかもしれない。でも…」

市川も慎重な表情で頷いた。

「規模が大きくなれば、それだけ課題も増える。簡単な話じゃないぞ。」

悠太は父・寛人に相談したが、父は短くこう答えた。

「土地が喜ぶかどうか、それを考えろ。」

悠太はその言葉を胸に刻みながら、慎重に次の一手を考えた。


村の分岐点

村の会合が開かれ、食品流通会社との提携について話し合いが行われた。
提案内容には、村全体で作物の品質を統一し、規模を拡大する条件が含まれていた。

一部の農家は反発した。

「品質を統一しろなんて、俺たちのやり方を否定するも同然だ!」
「都会の連中に振り回されるのはごめんだ!」

一方で、若者たちはこの提案に賛成した。

「これが成功すれば、もっと多くの人が農業に興味を持つかもしれない!」

意見が分かれる中、悠太は仲裁役として発言した。

「提携するかどうかは、村の未来をどう考えるか次第だ。
でも、どんな選択をしても、土地を大切にする気持ちを失ったら本末転倒だと思う。」

その言葉に一同は静まり返ったが、議論は平行線のまま終わった。


父との対話

その夜、悠太は父と縁側で話をした。父は酒を飲みながら、穏やかに語りかけた。

「お前のやり方は間違っちゃいない。
でもな、農業は人だけじゃなく、土地も主役だ。
その土地が悲鳴を上げたとき、人間が気づかねえなら、それはただの搾取だ。」

悠太は深く頷きながら、自分の考えを整理し始めた。
土地を守りつつ、村を発展させるにはどうすればいいのか。


新たな提案

翌日、悠太は村全体の会合で新しい提案をした。
食品流通会社との提携を進めるにあたり、次の条件を加えることだった。

1  土地に負荷をかけない生産体制を確立すること
 •機械と手作業を併用し、畑の健康を守る。

2  村独自のブランドを作ること
 •村の作物が持つ特徴や品質を守り、都会に流通させる際にも「村の誇り」としてアピールする。

3  次世代の農業人を育成すること
 •若者たちを中心に、農業を学びながら働ける場を提供する。

この提案は、村の伝統を守りつつ、未来を見据えたものだった。
一部の農家は不安を示したものの、最終的に多数が賛同し、提携が決定した。


村の誇り

提携が決まった後、悠太たちは都会の食品流通会社の代表者を村に招き、新しい取り組みを始めた。
ドローンを使った作物管理や、村独自の農産物ブランド「風土の実り」が発表された。

村全体が一丸となって作業に取り組む中、悠太は父と並んで畑に立っていた。

「父さん、俺たちの土地、喜んでくれてるかな?」

父は穏やかな笑みを浮かべながら、こう答えた。

「ああ、お前のやり方、悪くねえよ。」


数ヶ月後、東京のスーパーに並んだ「風土の実り」の作物は好評を博し、村の名前が広まった。

悠太は収穫後の畑を眺めながら、村の未来に思いを馳せた。

「自力と馬力。
どちらも欠けてはいけない。
それを守りながら、この土地をもっと良くしていく。」

悠太の心には、父の教えと村の誇りが深く刻まれていた。

#LimitlessCreations
#自力と馬力
#父との対話


あとがき


地域の伝統を守りながら新しい挑戦にも立ち向かっていくことで、親子、仲間と共に村自体をブランド化させて確立していく。

テーマである「自力」と「馬力」を活性化の潤滑剤としてもっと深く掘り下げていくことが新たな未来を生みだすのかもしれませんね。

次の話では、さらに拡大する村のプロジェクトが新たな試練に直面するか、悠太の個人的な成長が描かれる展開をかんがえています。

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