『自力と馬力』第八話
どんな時代においても、親と子の葛藤は様々な形で繰り返し、この世界に最高の可能性を生み出しています。
とても素敵なことですね。
今回は農業を題材に描きました。
何度も失敗を重ね培ってきた技術は、新しい技術よりも劣るものばかりです。
しかし、経験から得た知識でしか解決出来ないこともありますよね。
LimitlessCreationsでは作品を描く際に、
意識している事があります。
それは『共存』
世の中がAIやハイスペックなもので溢れても、
そこには必ず人の手が必要です。
人間が得た知識と経験を最高に活かす為のツールであり、便利に活用することを目標としてほしいと感じております。
『便利』は過去から未来への贈り物です。
新しい風
「風土の実り」は全国で話題となり、村の農業に新たな希望をもたらした。しかし、その成功は同時に村の外から新たな「風」を運んできた。
悠太と村人たちは、外部からの期待と圧力にどう向き合うのか、自らの哲学が試される瞬間を迎える。
大企業からの提案
ある日、悠太のもとに大手食品メーカー「オーガニック・ネクスト」の担当者が訪れた。
担当者は「風土の実り」をさらに全国展開するため、企業とのパートナーシップを提案する。
「ブランド力をもっと活かして、全国のスーパーやレストランに展開しませんか?」
提案内容には多額の資金援助と、広範なマーケティング支援が含まれていた。
しかし、条件の一つに「生産工程の統一」が盛り込まれており、それは村の多様性を犠牲にする可能性があった。
悠太はその提案に魅力を感じつつも、どこか釈然としない思いを抱えた。
村内の議論
村の会合で提案内容を共有すると、またしても賛否が割れた。
「これが村を発展させるチャンスだ!」
「でも、企業に支配されるのは嫌だ。」
「生産工程の統一なんて、俺たちのやり方を否定することだ!」
村人たちの議論が白熱する中、悠太は沈黙していた。父・寛人がその場で口を開いた。
「土地は、お前たちがどうしたいかをちゃんと見てるぞ。自分たちで納得いくやり方を見つけろ。」
父の言葉に、悠太は改めて自問した。自分たちが目指すべき未来はどんな形なのか。
若者たちの視点
会合の後、村に戻ってきた若者たちが悠太に話しかけた。
「企業の提案を全部受け入れる必要はないけど、村が広がる可能性を閉ざすのも違う気がする。」
彼らはSNSやデジタル技術を駆使し、村の作物を直接消費者に届ける仕組みを提案した。
1. オンライン販売: 農家ごとに個性を活かした商品を届ける。
2. エコツーリズム: 村に訪れる人に作物作りを体験してもらう。
3. 地域発信型イベント: 村の文化や伝統を都会に広める企画を展開する。
悠太はそのアイデアに希望を感じながらも、実現には多くの労力が必要だと感じた。
父との衝突
悠太は父に若者たちの提案を話したが、父は厳しい表情を浮かべた。
「お前、また風に流されてねえか?土地を守るってのは、そんな簡単な話じゃねえぞ。」
悠太は反論した。
「父さん、俺たちがこの土地に誇りを持ってるからこそ、それを広めたいんだ。それがこの村の未来に繋がるんじゃないのか?」
父はしばらく黙っていたが、やがてこう言った。
「好きにやってみろ。ただし、土地が悲鳴を上げたら、その声を聞き逃すなよ。」
新しい風を受け入れる
悠太は村の若者たちと共に「自分たちの手で広める」プロジェクトを始めた。まずはオンライン販売を試験的にスタートし、SNSを通じて都会の消費者に直接アプローチした。
また、都会から観光客を招き、収穫体験や地元の食文化を楽しんでもらうツアーも実施した。その結果、村の作物は「生産者の顔が見える安心な食材」として人気を博し、需要がさらに高まった。
土地が見せた未来
プロジェクトが成功し始めた頃、悠太は父と共に田んぼに立っていた。
「父さん、俺たち、村の未来を少しは変えられたかな?」
父は土を掴み、ゆっくりと答えた。
「土地は正直だ。お前たちが本気で向き合ってるなら、それは必ず返ってくる。」
悠太はその言葉に頷き、空を見上げた。新しい風が、村に希望と誇りを運んできたのだ。