モノローグ「山のあなた」 第六稿(7/27追記) モノゼミ講評後
男が一人ベットのそばに座って手紙を読んでいる
ベットには男の父親が横になっている
男、声に出して手紙を読む
山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう。
この詩が好きでずっと遠くへきた気がします。
送り出してくれた日を思い出します。
手紙を傍らに置く
(父親の顔に自分の顔を近づけて) 息、静かだかね。
痰の吸引はしなくてもよさそうだね。
酸素濃度あげとこうか、 聞こえる、父さん。
今日は雪だよ。
ストーブつけようか。 赤ランプついてる、昨日灯油足しとけばよかったね。
母さんは、寝てるよ。
僕がここにいるから、明るくなるまで寝かせてあげるよ。
静かだね。
布団をめくり足を見る
チアノーゼか、マッサージしないと。
(傍らから瓶を取り出し) これが馬油(ばーゆ)かな。
足先から上だよね、わかってるよ。
馬油を手に取る
さらさらだけど、においきついね。
足元に移動し、マッサージを始める
・・・冷たい足だ。
苦しくない、父さん。
何も聞こえないね。
つるつるだ。すね毛もなくなっちゃうんだね。
足を変えてマッサージを続ける。馬油をひとすくいとる。
獣臭かな。 馬の油ってかいてあるもんね。
かみさんがね。動物飼おうかって言ってるんだ。
子供も出て行ったし、でも、ほら 俺、犬猫駄目じゃない、 アレルギーで。
だから、魚はって聞いたら、触れないからダメだって。
毛があるものがいいんだって。
モフモフしたいんだって。
(父親の顔を見て) 今のその顔をみせたら伯母さんたちびっくりするよ。
スキンヘッドで眉毛もなくなって。
ハムスターとか・・・
リスなら大丈夫かな。
父さん、今年喜寿だっけ。俺が厄年だから、そうだよね。
伯母さんたちにも声かけないと・・・
マッサージの手を止める。
色がもどっってきた、息も深くなったね。これなら大丈夫だ。
相変わらず大きい手だね。
グローブみたいだよね。
ほんと・・・力仕事してきた手だよね。
よく肩車してくれたよね。
泣いてると必ず肩車してくれた。
中学になってからも肩車しようとしたろ。
布団をかけなおす。先ほどの手紙を手に取って
この手紙。
伯母さん宛のやつ。 出さなかったんだね。
今でも、会うたびに、結婚式で泣く父親なんか初めて見たって笑うんだよ。
伯母さんには、言わなかった。
あの時、泣いてたんだ、俺も。
気がつかなかっただろ。
気がついてたら…
小学生の頃は、よく連れてってくれたよね、伯母さん家。
伯母さんね、もうだれも住んでないじいちゃん家にも連れってってくれたよ。
そこに、リスがいたよ。
がりがりに痩せたリスが
遠くを見てる。
父さんが、ここでご飯炊いてたって、麦藁で、ご飯炊いてたって。
そこの竈も見せてくれた。
あっと言う間に燃えてしまうから、炊き上がるまで、ずっと、かまどの傍にいて、詩集読んでたって。
みんなで期待して学校出してやったのに、詩ばっかり読んでたって・・・
何見てたんだろうって・・・
間
伯母さんにあっても、手紙は見せないよ。
寒いね寒くて静かだね。
父さん。
聞こえてる。
父さんは・・・
手紙を広げる
不治の病から闘病生活に入って十二月で二年六カ月になります。
姉ちゃん、すみません。
こんな姿になってしまって、
もうすっかり疲れ切ってしまいました。
こんな話で、すみません。
お気を煩わして大変申し訳ありません。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。姉ちゃん。
恩返しできなくて。
間
こんなになって謝らなくても。
叔母さんは呼ばないよ。
静かだね。
おやすみ父さん。
解決すべき課題
①対象に意識はあるのか?✔
②なぜストーブをつけないのか?✔
③なぜ伯母さんは呼ばない方がいいのか?✔
④手紙の中身は何なのか?✔
⑤最後、何かが起きているのか?
ポイント
父には意識がある、叔母さんの手紙の内容を出す
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