僕とカバ🦛
🦛はじめての『カバの話』スラム🦛で読んだ話
小学校の低学年のころ
毎年、秋になると動物園に行った
私は動物園が好きではなかった
あのどこからともなく漂ってくる動物のにおいが嫌いだった
それでも動物園に行くのは楽しみだった
入園と同時に毎年、お菓子の袋をもらえファンタが飲めるからだ
父は仕事で家にいないことが多く
動物園に私を連れてくると大はしゃぎだ
あれを見ろ、これを見ろと言ってはペンギンやゴリラの前に連れて行くと
カメラを向けて私と動物たちをカメラに納めていく
そんな父を見るのが私は好きだ
そして私は父におねだりをする
ファンタが飲みたい
父は喜び勇んでファンタを買いに行く
母は私に果汁100%ジュースしか飲ませない
赤紫色のファンタは
母の私には与えないリストの筆頭だ
だからファンタは、こうして父と二人で出かけるときの私の楽しみだ
ファンタを待つ私を父はカバ舎の前においていった
カバが寝ている
カバのにおいがする
カバと目が合う
じっと私を見ている
カバが大きく口を開けた
冷たいものが私の手の中にするりと入ってきた
私の手には瓶に入ったファンタがあり
隣には満足げに煙草を吹かす父がいた
私はカバに目をやった
やはりカバは大きな口を開けて私を見ている
私はカバと目を合わせながらファンタを飲む
カバの味がする
匂ってくるようなカバの味がする
大好きなファンタを残す私を見て父はちょっと寂しそうだった
今でもファンタを見るとあのカバを思い出す
あの目を、あの味を
あのカバの血を
カバを飲んだあの日を
あれからファンタが飲めない