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8月13日

 父が亡くなった年の夏、わたしは実家に数日泊まった。父がめちゃくちゃにした家の中の片付けに精を出しては「すっきりする」と言っていた母だったが、新盆の灯籠を一人でながめるのはちょっと寂しいかなと訪ねた。
 母はわたしに玄関の提灯を見せて
「今は電気で点くんだよ便利だね」
と言った。

 日が暮れてきたのでわたしは提灯の電源を入れた。


 翌年の春、母は亡くなった。置き床(おきどこ)の上に日記があった。
「8月13日 〇〇(私の名)が提灯を点けてくれた。この子はよく気がつく。嬉しい」
と書いてあった。



お読みいただきありがとうございました。

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