マイナーに惹かれる私が推す、スキな曲
はじめに
私は音楽が大好きだ。しかし、不思議なことに私がいいなと感じる曲の大半がカップリングやアルバムに収録されている楽曲だったり、シングルのA面だったとしても一般的に定番と言われるものから外れたものが多い。
(故に友人らとカラオケに行くと、知らない曲になるので思い切り歌うことができない。)
今回は、そんなマイナーな楽曲たちに心惹かれ、広大な音楽の海へと日々潜っている私が、もっと世の中の人々に知ってほしい、スキな楽曲について語ってみた。スキな気持ちが少しだけ零れ落ち、4曲になってしまったが、どれも聴く人の心に響くものだと胸を張って言える。
星野源
1曲目は、誰もが知っている星野源。だが楽曲は恋やSUN、アイデアといった誰もが耳にはしたことがあるものではなく"Weekend"だ。2ndアルバム"YELLOW DANCER"の二番手をつとめている曲である。
もし、シングルとしてリリースしていたとしても、十分勝負できた曲だと思うぐらいクオリティが高い一曲だ。
この曲にはイントロが無く、サビを2回繰り返して曲が幕を開ける。そこに、聴く人の耳と心を鷲掴みにする力がある。
最初のサビだけは、ボーカルとコーラスにスポットライトが当たるような、シンプルな構成になっており、非常に耳に残りやすい。そして、繰り返した2回目のサビ以降は、全てブラスやストリングスが参加する華やかなものになっている。
そのため、最初に聴いたシンプルなサビがしっかりと耳に残り、何度も聴きたいと思うし、口ずさみたくもなってしまう。まるで魔法のようだ。
トラックそのものは、楽しそうな夜の雰囲気と爽やかさを持ち合わせている。全ての音を生楽器でレコーディングし、有機的で血が通ったサウンドからは彼が表現したい世界観が伝わってくる。
米津玄師
続いて2曲目は米津玄師。こちらも誰もが知っているアーティストではあるが、紹介したいのは"PLACEBO+野田洋次郎"という、RADWIMPSの野田洋次郎さんとコラボしたナンバーだ。昨年リリースされた5thアルバム"STRAY SHEEP"に収録されている。
トラックはAメロの始まりやサビ等、曲のいたるところに風鈴の音とは違うが、それに近い澄んだ高音の効果音が響いたり、シンセの音使いもグラッシーなものが多用されていて、ひんやりとした涼しい真夜中を感じさせるような内容となっている。
ドラムやベースのグルーヴ感と、ヴァイオリンの流れるようなと音色は胸の高鳴りを感じさせ、どうにもならない逸る気持ちを表現する歌詞が、恋に落ちて止まらなくなってしまった心境を表現している。それはとてもドラマチックなものだ。
米津さん影のあるソフトな歌声と野田さんの澄んだソフトな歌声、どちらも聴けるのは一度で二度美味しい。こういったひんやりとした曲調で野田さんの歌声が聴けるというのも、コラボならではのよさだ。
今回に限らず、いつかこの二人の共演が実現することを切に願う。
前半2曲の紹介が終了したが、星野源も米津玄師も有名人過ぎるため、ある程度邦楽を聴いている人ならどちらも知っているかもしれない。
「『マイナーに心惹かれ潜っていく』というとはどういうことだ?これはメジャーな方なのでは?」と言いたい人もきっといるに違いない。
さて、ここからが本番だ。
3曲目と4曲目は私が今一番推してる2組のアーティストの楽曲になる。
音楽を聴くのが趣味と話すと「誰が好きなの?」と、定型文のように返されるが、アーティスト名を教えると決まって「……ごめん、両方ともわからない」と申し訳なさそうな顔で言われる。
マイナーなのに加えてジャンルも年齢も違う2組であるため、どちらも好き好んで聴いてる人はそうそういないだろう。
削除(Sakuzyo)
3曲目は削除(Sakuzyo)。Spotifyで”削除”、もしくは”Sakuzyo”と検索するとヒットする。ゲームミュージックを中心に制作しているコンポーザーだが、その界隈では有名人であり、早くから音楽家としての道を歩み始めているため、天才との呼び声が高い。
特徴としては、手掛ける楽曲のジャンルの幅がとにかく広い。ハードコアテクノからオーケストラ編成のクラシックも作ることができて、異なるジャンルを組み合わせた楽曲も生み出すのは、才能の塊とも言える彼だからなせる業だ。
そんな削除さんの紹介したい1曲は"Okome"。日本人の主食ともいえるお米がテーマとなっている。『和食をより美味しく感じれる楽曲』がコンセプトの最新アルバム、”Food and Musik -Japanese Food-”に収録されている。
和の香りを感じる、斬新な三拍子には聴き惚れてしまう。メインメロディがピアノから琴、サックス、アコーディオンへと華麗にバトンタッチし美しく描いていく様は、思わずため息が出てしまうぐらい圧倒される。(特に、サックスからのアコーディオンへの流れは鳥肌モノだ。)
イントロが長いと次の曲に飛ばす傾向があると言われるこのご時世に、歌が全く無いinstrumentalを勧めるのはどうかと思われるかもしれないが、楽器が歌ってるのを聴くのも意外と楽しかったりする。このお洒落なインストを是非聴いて欲しい。
Skoop On Somebody
ところで、Skoop On Somebody(S.O.S.)をご存じだろうか。作詞、作曲、編曲といった楽曲制作から演奏まで、ほとんど自分達でおこなう”セルフ・コンテインド・バンド”だ。
Vo.TAKEとKey.KO-ICHIROの二人がメンバーであり、J-POPにまだソウル/R&Bという土壌が全く無かった頃から活動をし、来年にはメジャーデビュー25周年を控えている。(※2021年10月27日現在のものです。2021年末にDrs.のKO-HEYさんが復帰し、3人になりました)
主に楽曲制作を担当するKO-ICHIROさんは、まるで職人のような人である。いかにいい音質で聴き手に音楽を届けられるかというこだわりは、人一倍どころか人二倍、人三倍だと言えるだろう。常に試行錯誤してるのが伝わる。
S.O.S.の音楽は耳にフィットするような音作りになっていて、どれも気持ちよく耳に入ってくるものばかりだ。
TAKEさんの歌唱力は唯一無二と言っても過言ではない。ストレートに言うと、非常に大人の色気と味がある歌声。加えて、リードボーカルだけではなくコーラスもこなし、作詞もしている。
ソウル/R&Bというジャンルは、セクシャリティな部分が避けて通れない。故に歌詞に関しては、上手く言葉を紡いでいかなければいけない。聴き手の想像を描きたてるような言葉選び、カタカナや英語取り入れ上手くオブラートに包み込む表現は、並大抵の人にはできないことだ。
考えるに考えて選び抜いた言葉が織りなす歌詞は、ただ眺めているだけでも飽きない。
最後は彼らの楽曲"Immortality"だ。デビュー20周年記念でリリースされた11thアルバム"State Of Soul"に収録されている。
まずこの曲のタイトルでもある”Immorality”というワード、日本語だと「不道徳、背徳、ふしだら」という意味だが、英語にするだけでどこか上品さみたいなものを感じる雰囲気に変わる。また、「Borderline」と「Limit line」のような、韻を踏んだ対比表現の使い方は率直に言って綺麗だ。これだけBPMが低い曲でもグルーヴ感を感じることができるTAKEさんの歌声は、聴き手の身体を確実に揺らす。
トラックに関しては、KO-ICHIROさんが得意とするFender Rodesの音色が濃厚な夜へといざなう上に、優しく、けれどもしっかりとしたタッチで奏でられたピアノはまるで素敵なスパイスのようだ。
二人の音楽への愛と情熱が注ぎ込まれた結晶といえる、この曲の上質な夜感と大人な世界を感じて欲しい。
以上の4曲だが、今回は全てアルバムに収録されている物からチョイスしている。もし、楽曲が素晴らしい思ったら、収録されているアルバムを1曲目から通しで聴く、所謂”アルバム聴き”をすることもオススメする。
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