ジョグ厨、サンダルで走ったってよ ONTAKE100k 2024
びゃゃーゃゃぁーんん。って感じのブザーがスタートの合図だった。
時計のボタンを押して走り出す。
(のこり106km)
初レースだった昨年に続いて2回目のONTAKE100(100kmくらいの部)。この間2つもレースに出ていたので、我を忘れることもなく落ち着いている。一緒に行ったサイサイ選手、チェル選手、テラサワ選手をはじめ練習、、ではなくウダウダ仲間の選手たちもだいたい近くにいる。
予報は雨。ということで雨用サンダルをチョイス。だったので、濡れながら走りたいのにしばらくは降らないのでひとまずスタート直後の水が流れているところに突っ込む。
1年ぶりの東京からのトーゴ選手と喋りながらロードを進む。午前0時、真っ暗な中のスタート。アップもしてないし夜中で変なテンションだし、のんびり、ゆっくり、というても昂った気持ちをぐぐっとローにしていくイメージで。イージーに。イージーに。イージーに走る。
当日入りの会場へは当社比かなり早起きして向かった。早起きは三文の徳とはよく言ったもので、道中にも余裕がある、会場に着いてからの準備や補給にも余裕がある、色んな方々にも会える、と良いこと尽くめであった。さすがに顔の広いチェル選手に紹介してもらいながらの初めまして祭りである。SNSいつも拝見してるメチ選手初めまして、〇〇で聞いた声そっくりの江西選手初めまして、お顔は知らなかったけど見上げたた瞬間この人やーと理解したのび太氏選手初めまして、、、上げ始めるとキリがない。
嬉しくて色々話したいが、それはレース前、ご挨拶できただけでもラッキーというもの。
(のこり103km)
3kmほど走ると身体も気持ちも解れてきた。自然とペースが上がり、界隈集団から少し先行し始める。心拍も65%くらいでちょうど良い。さすがに前方からスタートだけあって抜くことはほとんどなく、抜かれるばかりであるが、先は長いと焦らずにいるうちに林道上り区間に入った。
ONTAKE100k。御嶽山の南麓で開催される林道レースで、出場したのは約100km(今年は106km/約2700mUP)の部門。大きくいうと50kmちょっとのループが2つある。コースは舗装路とガレた林道、いわゆる登山道はなし。自転車の方にはSDA in 王滝と半分コースが同じというとイメージがわかりやすいか。石や岩だらけの道をロックアンドロールオールナイトである。
さて、今年の作戦は、特に前半頑張りすぎないこと。上りは目安は心拍で75%HRmax程度。下りは急ぐ意識ゼロにしたヨチヨチジョグ。以上。
昨年は前半で脚を完全に売り切って絵に描いたような大失速をかましたので、少しでもうまく走れる区間を伸ばすのが目標。と言ってもどうせ俺のこと、気分良さに任せて突っ込みすぎるのは目に見えている。が、せめて後半の半分、3/4地点くらいまでは売り残していきたいものである。
(のこり100km)
上りは派手なスピードではないがワシワシ高度を上げていける。歩きまで入れなくても少し緩めれば心拍は目標値に収まる。この辺りアップダウンが多く下りでは盛大に抜かれまくるが、そのほとんどは上りで追いつく。昨年よりベースの走力が上がっているのだろうか。上げすぎない、が実践できており、かつ、思ったより順調なペースで、こら今年のnoteは書くことないんちゃう?などと考えていた。その後大間違いだったことを知るのだが。
おんたけに照準を合わせたのは2月の姫路城マラソン後、ランニング由来でない怪我(酔っ払ってコケて肩の骨挫傷w)も含めて長めのレスト期間が明けてから。と言ってもあまりコースの特異性に合わせた「練習」はするつもりはなかった。マラソンがあまりにも練習的だったので、ひたすら好きなジョグを好きなだけしていただけであった。
3月は戻し期間で少し抑えめだったが、4月5月6月の3か月はわりと心置きなくジョグができた。我慢することがないので精神衛生にも非常に良かった。ただひたすらショートジョグのみ。長いのは、5月頭のユリカモメ70kmが最長で、林道はチェルさんにお誘いいただいた林道スイーツ練が2回でそれぞれ35〜40km。それ以外はロング練はなし。林道は練習というよりも装備テストの側面が強かった。
一方で昨年は疲労骨折明けということもあり平地ジョグばかりだったことが脚売り切れにつながったのではないかとの仮説から、週1〜2で峠や山でのジョグは入れた。
(のこり90km)
ジョグはやっぱり万能やな。
noteのタイトルはそうしよう。
順調に上り、下る。
お腹のポケットからわらびを取り出して食べる。今回はレモンわらびだった。うまい。2時間経って、2個目のわらび。30分に1個の計画の半分だ。が、これ以上食べるとお腹いっぱいで動きにくそうなのでまあいいか、と思うことにする。
補給食は、食べ切れないとわかっていた量を担いでいた昨年の反省から、厳選していた。
●セブンの黒糖・レモン・苺・ラムネ各わらび詰め合わせ(ほんとは全部黒糖が良かったが買えなかった)合計10個。
●セブンのわらびと同じ大きさの羊羹2個。
これらが30分に1個。
●セブンの柿の種1袋。
●梅チューブ。
●塩分チャージラムネ5粒。
これらが味変と非常時用。
このセットが中間エイドまでの分。同じセットをデポしてある。
(のこり80km)
そのままの調子で25km地点、最初のエイドステーションについた。クロさんから直々にお水をいただく。ハンドフラスクに500mL。腰のボトル350mLが2本。まだボトル出てくんのかいなwって顔をしてはった。
バナナ1/3とオレンジ一切れもいただいてすぐ出発。エイドで時間を使うのはなんだか嫌なのだ。たぶん滞在時間で数人抜かせている。
去年は最大3.2L準備していたので、きっちり飲み切ったとはいえさすがに重すぎた。今年はぐっと抑えてこの3本合計1.2Lをベースに、暑さ次第で予備のハンドフラスク350mL1本を足して1.55L。中間デポには、日が上った後半に最大容量増やす用500mLのハンドフラスクを置いてきたので、おそらくフルにはしないだろうが最大2Lまでは対応できるようにしていた。だって水切れほどつらいし、危ないものはないからね。
(のこり78km)
一息ついたのもあってまた順調に上っていく。なんとなく知り合いっぽい女子選手を追い抜く。確かめよとも思うが夜中に長髭のおっさんにジロッと見られるのも気持ち悪いやろな、と思って。知ってたら愛想なしでゴメンと心の中で言いつつ通過した。
と、左足の甲にかすかに違和感。
ああこれはサンダルの紐が擦れておるな。剥がれにくい工夫をしつつ擦れ止めのテーピングをしていたが、少しずれたところに当たっているっぽい。時間がもったいないし、このくらいだと普段なら走り続けるところだがまだ80km近くあるので、止まってチェックする。テーピング剥がれではなく場所がちょっとずれている。足裏から甲までぐるっと回すように新しくテーピングをする。
とかしていると「まっくすさん大丈夫ですかー」とさきほどの女子選手がやってきた。果たして、春巻きおにぎり丸選手であった。ちょっとゴニョゴニョみたいな受け答えをした気がするがはっきりとは記憶していない。
リスタート。ん。ちょっとテーピングきつい。のですぐ止まってまた貼り直し。
まあ、雨予報だしサンダルで紐擦れはするやろなと思っていたし、都度都度対処のつもりだったので計画の範囲内。で、また走り出す。
シューズ、というか、足元をサンダルにしようというのは、マラソンが終わってすぐに決めた。
理由のひとつは、昨年靴で失速したこと。ペース配分があかんかっただけではあるが、おそらくクッションのある靴だと飛ばせてしまうぶん走りが乱雑になるのもあるとの仮説。サンダルの方が遅いけど丁寧に走れて結果脚が残るのではないか説。
もうひとつは、実際問題疲労感に差がないこと。サンダルの方が下腿や足裏の疲労は強い。一方で靴だと上腿に疲労がくる。どっちもどっちだし、どちらかと言えば上腿の方が自信がなかったりもする。
さらに、上りは軽いサンダルの方が楽。
そして、天候変化や水たまりもある環境での濡れ対策としての水捌けの良さ、長時間行動によるむくみ対策としてのサイズの寛容さ。
マイナスの要因は、石を蹴飛ばさないか、足裏に砂やら何やら入ってくる、紐の擦れ、だけ。
ほら、サンダルにしない理由はないでしょ?
あとは、どのサンダルにするか、ということで林道や峠で晴れ雨のコンディションで確認して、快晴〜ちょい雨ならfit insole No Shoes ver.2、雨ならver.1 resole editionと決めた。
最終的に選択したver.1 resoleはver.2より少し重く硬く、擦れのリスクは高まるものの、トップカバーがいっさい水を含まず悪天でより快適になっていくのと、ソールもVibramチェリーシートで足にやさしいものだった。
(のこり75km)
再び春巻きおにぎり丸選手に追いつく。聞けば12.5時間ペースで進んでいるとのこと。なるほど。ということは、やや俺も突っ込み気味ってことなのか。
と言いながらも無理している感じはないのでええかと深く考えず先に行く。
3つめのわらびを食べて、30kmを過ぎる。
ただただ淡々と上る。80%HRmaxを超える時間が出てきてしまい、めちゃくちゃゆっくりにしたり、少し歩いたりする。選手はまばらだがどちらかというと抜く場面の方が多い。その中のひとりに声をかけられる。
あ、1年ぶりのヤマナカ選手!
と思ったがリズムを崩したくないので返事だけして進んでいたが、ちょうど前半ループの最高地点手前あたりで追いついてきはった。昨年駐車場が近くだったことでお話していて、その後FUJIやら彩の国やら完走してはる選手。当然強い。
このペースだと1ループ目が5時間半前後くらいで、2ループ目を6時間半で12時間切りが狙えるくらいですよ、などと言うてはる。まじか。気分良く走ることが最優先事項だった中で、タイム12時間というのがひとつ頭に刷り込まれた。
(のこり70km)
そしていよいよ1ループ目の下りに入る。3kmで200m下り、5kmのアップダウンを挟んで、7kmで550m下る。ここをいかに脚残しながら下るか。下りに難あり、好きじゃない、遅い、苦手、の俺にとって、一番の勝負所である。
夏シーズンはこのONTAKE100しかレースの出場はないので当然体調はピークに持っていくのだが、練習含めて全てをこのレースに振り向けたわけではなかった。あわよくばレースの結果は良い方が良い。そりゃそうに決まっているが、日々気分良くジョグをして過ごす方が優先順位が高い。ということで、林道練峠練をバリバリやってたわけではないのもあり、特に下りがポイントだったのである。
あのう、ぼく、下り飛ばすとすぐ脚終わるんで、信じられないくらいゆっくりいきますんで、先行ってくださいね。そうヤマナカ選手に伝えると。ヤマナカ選手も同じ考えとのこと。と言いながら、どやろなーと思いつつ並走してお喋りしながら下る。昨年サイサイ選手とオーシャン選手について飛ばして下った風景の流れを思い出しながら、それよりゆっくりとなるように意識する。
幸いヤマナカ選手とは歩調が合った。たまに後ろから速い人が抜いて霧の中へと消えていく。ゆっくり喋りながら気楽だし何より楽しく下っているうちに、1段目が終わった。上り返してアッペンダウン。アッペンダウン。
(のこり65km)
強い疲労感はないが、このまま続けるのは良くない気がして、念のために屈伸と短く軽いストレッチをしようと思い、ここでヤマナカ選手に先に行ってもらう。
すぐ復帰して後から追う形になる。
まあそのうち追いつくかなどうかな、と思っていた時、ガシャっと音がした。
なんとヤマナカ選手が転倒している。あらら。。。
すぐ立ち上がってゆっくり動いているので致命的な何かではなさそうだが、追いついて見ると腕からわりと血が出ている。下りでぶち抜かれて、上り返しで追いついた女子選手も一緒になって、処置していくか、必要量のものはあるか、など聞いたところ大丈夫とのこと。付き添いが必要な状況ではないと判断して先に行く。
4つめのわらび。
(のこり60km)
ロードに入ってからは心拍70%HRmaxで、キロ5分台前半ペースで走れている。疲労感もそれなりだがそこまでつらくはない。長い下りはしんどかったが、えっちらおっちら、ヨチヨチが奏功しておるなあ、などと思いつつ中間スタートゴール地点へ向かう。
最後のちょっとした上りも快調である。ここで3km下りでぶち抜かれ、登り返しで抜き返し、再び7km長い下りでぶち抜かれていた女子選手に追いつき、ご挨拶。こうまでも得意不得意が違うのも面白いな、などと思っているうちに1ループ目が終わった。
クミコさんがいてはって、帰ってきたなー、とほっこり。ボラありがとうございます!
時計を見れば、5:39。
わ、これめちゃ順調やん。というか順調すぎるというか、突っ込みすぎちゃうのん??? 一瞬頭をよぎるがエイドワークに集中することにする。
江西選手がいはって、補給食と水でリスのようにほっぺたを膨らませてちょっとかわいい。ご挨拶。絵に描いたようにフゴフゴしてはる。たぶん先いってますがんばりましょう的な内容だろうと推察して、荷物受け取りへ。ヤマナカ選手もすぐに無事帰ってきていて再会。ほっとした。
さて、エイドワーク。
●補給計画を変更。1時間1わらびで行けると判断し、後半は6わらび+2羊羹+梅チューブ+塩分チャージ+柿の種とすることに。ということで、中間デポからは1わらびだけ足す。
●コーラを半分飲む。
●オリゴ糖入りフルーツミックスを1袋食す。
●naked bandのお腹擦れが出てきており、ウェアの内側から外側へ出す。
●そのお腹含めて何かに触れているところ全体にシャモアクリームを追い塗り。
●左足甲のテーピングが剥がれてきていたので、貼り直し。(テーピングは持つ用と別にデポにも入れておいたのも時間短縮になった。)
●ここまでやってデポ袋再預け
●水を1.2Lに汲み直して出発。
所要時間7分。あとで記録を見てみるとこのエイドで15人ぶん順位を上げられていた。
(のこり52km)
出て200mほどでパックになって帰ってきているチェル選手とゲンヤ選手とスライド。続いて800mほどの坂の途中でサイサイ選手、オーシャン選手、と続いてスライド。
この差は十分ひっくり返るなーなどと思いつつ、知った顔とスライドすると元気が出て2ループ目最初の上りにとりかかる。
1ループ目同様の目安で上っていくと、先に出た選手をちらほら拾っていける。
明るくなってきたのもあって、抜いたり抜かれたりのときに声がけするようになる。上りの調子が上がらなそうな選手に「身軽そうでいいですねー」と声をかけられる。
そう、身軽(に見える)のだ。
今回はザックなしで出場した。
背中の排熱や必然的に荷物が軽くなるというのは二の次で、一番の目的は、自由に腕振りができるようにすること。
持ってないけど最新のイカみたいな背中が細いザックだと背中側は腕を自由に引けるので良いという意見もあるかもしれないが、前側がボトルと干渉してどうしても体に近く畳めない。普段からのコンパクトフォームのまま走ろうと思うと腰まわりで荷物を持ちたいと思った。
ただ、揺れないよいものがない。
持っているnaked bandは少し容量が足りないのと、詰め過ぎると揺れる。他社のウェストベルトも試したり意見を聞いたりしたが、やはり揺れが問題。ウェストベルトのボトルホルダーを改造してみたりもしたが、テストの結果は芳しくない。
ってことで、これは自作するか、となった。
ヒントは大型ザックのヒップベルト。あの安定感が欲しかった。ゴムの力を使うのではなく、幅広テープと自在バックルの組み合わせで固定する。体に固定するベルトと、つけた荷物を安定させるベルトと2重構造とすることでさらに安定化。救急用品、ライトや熊鈴、その他ギア類は腰の後ろに、その両脇にsimple hydration 350mLを刺す。レイン上下は挟んで垂らすことで重い塊を作らずに揺れを軽減という仕組みだ。
荷重を分散させるためにnaked bandも併用し、補給食やスマホはこちらに入れた。パンツのポケットを使うとnakedは減らせたかもしれないが、足捌きが良くテンションの上がる柄のパンツはランニング用ではないので、サイドとバックにしかポケットがなく、ゴミ入れと軽いワセリン入れとしてだけ活用した。
水は腰の2本以外はハンドフラスク。結局片手分しか使わなかったが、水をたくさん持つ場面では両手の予定だった。
ハンドが苦手な方もいてはるようだが、これは慣れだけでなく、フォームによるところも大きいのではないかと思う。手の位置が体に近いコンパクトなフォームだと重り(水)の重心をあまり動かさずに腕が振れるので苦にならないのだ。一方で手の位置が体から離れるフォームだと重りを大きく動かすので疲れるというわけ。逆から見ると、そういうフォームであれば体の前にボトルがあっても腕振りに干渉しないので、背負ってもストレスが少ないザックで良いのだと思う。
1ループ目はこの装備がうまく機能していた。
工夫の余地がありありなのが発覚してくるのは後半のことである。
(のこり45km)
2ループ目の上りも順調そのものであった。
これはつまらないnoteになるぞ。
などとヨコシマなことを考えていると、当然のごとく試練が降ってくるよねって話である。上りが終わりアップダウン区間のダウンが来たら、全然脚が出ないではないか。
あかんではないか。
順調と思っていたが、裏ではやはりいつものロボット化が進行していたのだ。
ちょうど強まってきた雨をもたらす天に向かって「うそーん」と言うてみるが、嘘ともマコトとも答えはくれなかった。変わりに後ろからどんどんと快調に下るランナーを賜った。
嗚呼、そういえば昨年もこのあたりは脚が痛すぎて泣きながらオーシャン選手と歩いていたなあと思い出す。同じではないか。ちょっと前半抑えてうまく走っているつもりやったけど、結局大差ないではないか。人類は進歩も調和もしておらぬではないか。
絶望である。
絶望していたら腹が減る感覚があったので、羊羹を食べた。
羊羹は咀嚼を伴うので空腹が収まった。
空腹が収まると、絶望の中にひとすじの光が見えた。
俺、まだべた歩きしてへんやん。
そうである。ペースこそ激遅になっているが、確かにトボトボ歩く、とまでは落ちていなかった。
「俺、成長してるやん。」と声に出して言ってみる。ポジティブ思考である。声に出せばその通りになる、と自己啓発的なウェブサイトに書いてあった気がする。時折強くなる雨音にかき消されそうになりながらも「今年はかなりマシ」とぶつぶつ言いながらヨッチヨッチ進んだ。
雨が強くなるにつれて雨用サンダルは威力を発揮したと思う。他の選手が蛇行して避ける水たまりも全部ストレートにつっこんで進んだし、まとわりつく砂を落とすためにもむしろ水流の中を選んで走った。気温は気にならなかったが、それは脚のクールダウンに役立っていたはずだ。
(のこり40km)
「かなりマシ行進曲」の世界に独り没頭していると、後ろから嬉しそうな声が聞こえた。
「やっと追いつきました〜〜〜」またもや登場のヤマナカ選手である。さすが。この状態での並走は土台無理なので先行してもらう。これが彼を見た最後であった。
このあたりでお腹に違和感が出てきていた。naked bandのお腹擦れが悪化していた。さらに、自作ヒップベルトも腰を擦っていた。設計通りに揺れはしっかり止めていたのだが、それを吸収していたベルトの圧がかかる皮膚が限界を超えていた。
さすがにこの雨、この距離でのテストはできていなかった。腰〜尻の上部ラインではなく、お腹のnakedの上にベルトをつけかえる。長い距離は持たないだろうが、まだマシなはず。そしてこういう柔軟に対応できるのが構造を考えて自作しておいた良いところなんだろう。
(のこり30km)
お腹、下りの脚、そして擦れる足の甲の三重苦に苛まれながら水交園に向かって下っていると、はるか遠く後ろから「ヒャッハ〜〜〜!!!」と声が聞こえた。振り返ればゲンヤ選手である。俺のヨチヨチ下りの5倍くらいのストライドでかっ飛んでくるではないか。
「まさか追いつけるとは〜〜しかもこんなにも早く〜〜ヒャッハ〜〜〜!!」
まるで北斗の拳の悪人みたいに陽キャなノリである。
俺がケンシロウであれば百裂拳で迎え撃つところであるが、あいにくただの脚が痛いおっさんであったので、「は、速いや〜ん、、フヘヘ」などと悪人に一コマで絡め取られるモブ一般人のような情けない声を出すのがせいぜいであった。次のコマではもうゲンヤ選手の後ろ姿は見えなくなった。これが彼を見た最後であった。
(のこり23km)
水交園エイドでは、そうめん1杯とバナナ1/3をいただく。またもや剥がれていた左足の甲のテーピングの修正もする。擦れの範囲が広がっていたので広範囲で巻き直す。しかし雨の中、時間も焦る中、適切な強度で巻くのが難しい。見切りで出ることとなった。ガード用のテーピングは伸びるタイプも用意しておいた方が良かったと終わった今は考えている。
83km地点の水交園をすぎた。残り20%強。ただ、体感では最後の大きな下りが控えるここからがラスト半分である。
まずは上りから。
うん、上りはまだ走れる。
上り始めて少しして時計を見ると9:30であった。ということは、12時間まではあと2時間半。距離は22km強。ということは、キロ7切るくらいでゴールできれば12時間切りということ。ここまでの平均が6分40秒ちょいなのでかなり厳しくはあるが、チャレンジしなくて何のレースやねん、ということでこの上りは無理を押して走ることにする。といっても出力は上がらなくなっていてどんなにがんばっても70%HRmax程度ではあるが、何人かの選手はパスしながら上る。
(のこり20km)
きついが意外とがんばれてはいる。しかし限界はまもなく、、、、と思っていた87kmあたり、舗装から砂利の林道へと路面が変わり、頂上までまだ少し残したあたりで、ついに上りの足も止まってしまった。
これで本格的に12時間切りはなくなった。あとはズルズルといかないように、歩きの中でも速く、走れるところは少しでも走る、と心がけるのみ。
雨と風が相俟って体感気温が下がってきている。寒く感じるほどの強度まで落ちないように必死でくらいつく。一歩ずつ、音に出して息を吸って吐く。リズムをつくる。だいぶ動けなくなっているが、しかし、それでも「今年はかなりマシ」である。
雨具は結局最後まで使わなかった。上はbringのノースリ、下はインナーファクトのシームレスインナー+yuya boysのポリ短パンだった。スタート時につけていたアームカバーはロードが終わるくらいに外し、以降はヒップベルトにくくりつけたまま。いつものエルドレの短ツバキャップに、メガネは今年新調した度付き調光。ノースリの肩の前後がやや擦れていたが、他はシャモアクリームをばっちり塗っていたのでノートラブル。思えば昨年のONTAKEとほぼ同じ格好である。
(のこり15km)
上りも平坦もヨチヨチになりながらなんとか最後の下りにたどりつく。単発では一番長い9kmで600mダウンというプロファイル。ただやれるのはもうとにかく耐えて進むだけ。
一歩ずつ変な声が出る。幸い激痛までは至らないので、うめきながら歩き一歩手前で走っている。
後ろからはどんどん選手が湧いてくる。
しかもありえないほどの速度差で抜いていく。
多くの選手に抜かれざま「サンダルかっこいいすね」「サンダルでこんなとこ走っててすごいっすね」「突き上げあってつらいっすよね」とか声をかけていただく。素直にありがたい。うれしい。
しかしである。
サンダルのわりに、とかサンダルのくせに、とかはどーでも良いののである。
サンダルで走るチャレンジを敢えてしている、というのではなく、単純にサンダルの方が有利だと思って使っているだけだから。だいたい、サンダルで負荷の強い足裏〜ふくらはぎはまあまあ元気だが、大腿四頭筋やらケツハムあたりが硬直して失速しているので、いまつらいのはサンダルのせいではなく単なる筋力不足である。ってことで、ロボット化して遅いのはおそらく靴履いてても同じこと。
「ぼくなんてカーボン履いてて恥ずかしいっすわー」みたいな選手もいたが、なんら恥ずかしいことはない。各自がベストと思う履き物で勝負したらええのである。ルールの中での勝負で、あなたはあなたにとって良い選択をしている、ってだけなんですよ。
というような気持ちと、とはいえ褒められればなんでも嬉しいやんけ、という気持ちの間で揺れ動きながら下がらない高度をジリジリと減らしていく。俗に言う、上りエスカレーターを下っている状態である。下りが次から次へと湧き出てくる。上からは速いランナーが湧き出てくる。阿鼻叫喚の無間地獄。俺なんかそんな悪いことした??
(のこり10km)
むげんじごくは
無限地獄やったっけ?
無間地獄やったっけ?
どっちでもええんやったっけ?
などとしょうむないことを考えながらヒィヒィ下っていると、上から「ひゃ〜やっと追いつきました〜うれしいです〜」と飛んで下ってきたのが、1ループ目で抜きつ抜かれつした女子選手。1ループ目の下りで見たのと全く変わらない軽い足取りは惚れ惚れする。地獄のロックファイヤーにてハードラックウーマン(※ゴールして知ったのだが女子優勝の選手であり超グッドラックウーマンであった)に再会である。再会はうれしいが、着いていく気力も余力もなくご挨拶にてお見送り。
(のこり6km)
アイワズメイドフォーラヴィニューベイベー地獄からの脱出の時がくる。名残惜しいがあと6kmのロードで終わりである。
そういや、去年はヤマネ選手(今年は100mileナイス完走おめでとうございます!)と一緒にとぼとぼ歩いた道を、今年はひとり黙々と早くも遅くもない中途半端なペースで走る。終わってほしいような終わってほしくないような。もっとできることがあったようななかったような。
ゴールでは多くの友人たちが待ってくれていた。
12:24:13
12時間切りはかなわなかったが、なんとか12時間半は切れた。途中欲を出したわりには失速であるが、毎度おなじみ「結果だけ見れば上出来やん」なタイム。
順位も昨年の85位から少し上げて60位。
ちなみにサンダルの部1位。
まあ、サンダルの部というもの自体、途中書いたようにナンセンスだと思うのだが、褒められるならありがたく受け取るイェーイ。
速報サイトによるとラップは以下
1ループ目着 5:39:24(54位)
エイド滞在 0:07:13(区間31位)
1ループ目発 5:46:37(39位)
〜水交園 3:27:50(区間71位)
水交園着 9:14:27(45位)
〜ゴール 3:09:46(区間181位)
(2ループ目全体 6:37:36(103位))
ゴールタイム 12:24:13(60位)
こう見ると1ループ目の突っ込みも効いているがエイドが早かったのが効いてるな。あと6分長くいたら12.5時間切れなかったわけなので。
(仮説・作戦答え合わせ)
どうせ気分にまかせて走るでも上限は75%HRmaxは、意外と外れでもなかった。2ループ目中盤で脚の終わりを感じたのでもうちょっと落としていけばゴールでちょうど売り切れにもっていけた気がする。が、まだまだ経験不足の身。今は抑えすぎよりも限界を超える(が、前回ほどではない)くらいの走りができてちょうどよかったと思う。
林道やアップダウンに対策した練習は特にしなくても良かったと思う。新しい何かを試すにはフィールドに出た方が良いが。それよりもやるとしたら上腿の筋力アップかなと思う。明らかにそこがボトルネック。
補給はスタートまでの食事に大きく影響を受ける。しっかり取れれば100kmレースであれば思ってるより減らせる。移動の朝昼しっかり食べた前提で、会場に着いた15時ころからスタートまでの間に晩御飯にプラスしてだらだらと和菓子(草餅、水まんじゅう、五平餅など・・)を10個くらい食べていた。前回は序盤を固形物にしたりカロリー増やしたりしていたが、その必要はなかった。
ザックなしは良い。やっぱり自由に腕が振れるのが良い。今回のnaked+自作の組み合わせも良かった。ただ、揺れない分それを引き取ったお腹の擦れは酷い・・・ので改良は必要。
サンダルは良い。靴の前回より結果も良かったし。ただまあ、荷物の影響も大きいと思われるのでどこまでサンダルの恩恵があるかは不明。紐擦れ対策はもっと練る必要がある。LUNAやfit ver.2などだとまだマシだったと思うが重めフレックス硬めのソールの時の紐の使い方は改良が必要。
擦れ対策のテーピングは巻き方要注意。あるいは伸縮テープを使うのもありかも。今回一番尾を引くダメージは実はこのはがれにくいように足をぐるりと巻くように貼ったテーピングが動きを制限した結果、長指伸筋の腱がすっかり炎症を起こしたことだった。レース後半日以上経ってから症状が出てきたのだが、紐自体と合わせて処置も工夫が必要。
ふう。
思った通り長くなってしまった。
そら100kmも走ったのだから長くもなるよね。
しかし、楽しかった。
お会いしたみなさん、一緒に行ったみなさん、ありがとうございました。
またどこかで走りましょう〜 (或いはビールでも)