45歳おっさん初マラソンサブスリー日記(当日)
2024年2月11日
モルテン水飲むと軽量化しやすいと聞いていたが、一向にその気配もなく起きる。レースほぼ4時間前でおにぎり2個とR-1の朝食。池の最寄り駅でサイサイ選手と合流して阪急電車で姫路へ向かう。途中駅で乗り換え時間があるたびに軽量化チャレンジ。おかげで新開地〜姫路の山陽は立つ羽目になった。残念。
1時間おきに朝食バナナ的ゼリー。あと薄めに作っておいた汁だけ味噌汁をちびちび啜りながら移動。
姫路について、出走仲間と記念写真を撮って会場へ。なかなか寒い。一応一番薄いウインドブレーカー上下持ってきていて、スタートまで着ていて持って走るつもりにしていたのだが、どうしたもんやら、道中経験豊富マコト選手に聞いてみた。
そういえばさ、スタートの時に羽織ってるものってどうするんやろ?
100均とかのカッパ着といて捨てて走んねん。とのこと。なるほど。
それでも寒くない?
我慢。とのこと。だって少しでも軽くしたいやん。なるほど。
着替えるときにヨシタカ選手からも、ワセリン塗っとくという技を教わる。見ていると耳まで入念にほぼ全身に塗ってはる。真似をしてワセリンテカるるええ男になる。
着替えながらセブンのパウチ入りフルーツミックス1袋食す。
ウェアはチームのマーク入りBRINGのノースリに、エルドレのキャップと腕が痩せたので縫って細くしたアームカバー、変態パンツの上にYuya Boysの短パン、今はなきTHE ATHELETICのソックス、思い出せないくらい昔に買った100均の黄色いふわふわ手袋。Yuya Boysの短パンは単なるビール屋さんのマーチャンダイズアパレルで、腰ポケットは無いが、持ってる中で一番生地も薄く軽いのでここぞという時は着用している。ラン用ウェアにこだわらない。全体的にやや派手めだが、明るい方がやる気がでるのと、目立つほど沿道から声がかかって元気でるやろ作戦である。おやつはnaked bandに入れていく。
その上に、ちょうど参加賞にノースリのカッパが入ってたのをかぶってスタートブロックへ。軽量化は諦めたけど、排水だけはしておく。けっこう排水行列が長くてスタート位置は下がるだろうけど。スタートブロックは同行者たちとひとりだけ離れてBなので気楽にじっくりトイレに寄ってから向かう。
待ち列で両手もカッパの中につっこみながら、直前食として黒糖わらびを1本と、梅干し。
芸能人の方が挨拶されているし、ロバートマイルズも流れてこないのであんまりスタートって感じもしない。
ぎゅぎゅっと列が詰まって、パンって音が聞こえた。
さて、初マラソンのレースプランといえば。あんまりよくわからないというのが正直なところ。ただ出たとこ勝負でいったオンタケで散々な目にあったので、いちおういくつか考えておいた。
・尻の不調もあるが、まあ痛くても走るしかないんで、経験してる範囲の痛みならそのまま走る。
・前半はいちおう4'10"切るペースくらいを目安にする。ただし調子良く感じたら、雰囲気に飲まれてるだけだとしても、4'03"くらいまで上げてもよし。
・特にBからというスタートの特性上、最初はフラストレーションも溜まるだろうが、そんなもんと割り切って溜める。ただし反動で速くしすぎない。アップがわりと割り切ろう。
・後半は上げたくなれば4'00"までOK。あかんくても4'10"で出し尽くすとこまで押し続ける。
まあ、無策にも近いけど、想像ついてないなりのプランである。
パンて音からしばらくして歩き出す。ちょっと流れが早くなったと思ったら詰まって歩くを繰り返す。徐々にマシになるが人の壁が現れてスピードに乗せられない。縫うように急ぐ人もいるけど、そこまではせんとこ、とちょこちょこ走る。コースの端っこ、側溝の上が空いてて比較的走りやすい。シクロクロスで磨いたコースを見る目か(笑)。
2kmほどしてスピードが上がり始める。ああいよいよ速く走らなあかんのかイヤやな、というのと、タイム目指すならこのロス取り返さな、というのが混ざってへんな感じ。
5km、23分弱で通過。
腕時計の表示は、合計タイム、合計距離、平均ペース、現在ペースの4つ。徐々にペースが上がり、5キロすぎてしばらくすると平均4'30'"まで戻る。心拍は表示せず一度も確認しなかった。
前方に見覚えのある後ろ姿が見えてきた。マコト選手である。ほんと今回は色々指南してもろてありがたいなーと感慨にふけってたら、不意に左から声をかけられる。最近お会いできてなかった神戸練のキムラ選手やないですか。ごぶさたですで登山の話とかしたかったのだがさすがに余裕なくご挨拶のみにて失敬。
マコト選手は精密ジョグ機械のように、4"30"で通すとの公言通りのペースで順調そう。ひと声交わして、先へ行く。ここで抜かなければタレて腰ポンされることもないなーなどと思ったりもしたのだが、イバラの道を走るのである。
給水所が現れた。ついに!練習の成果を見せる時。しかし練習と違って人が多いやないか。ただ、思った以上に置かれた紙コップは背が高くてミック式の上からつまむスタイルで難なく取れた。そしてグッと潰して細くした飲み口から飲む。ポカリうめー。練習してて良かった!
8kmが来たので最初のおやつを食べる。前日半分食べて残しておいた黒糖わらび。口を折り込んでテープ止めしておくことで開けやすいし、ひとくちで入る量になる。小さくコロコロしてるので持ちにくいのは欠点であるが。この半分黒糖わらびを8/16/24kmで3個、あとは売り場で一番高かったモルテンのカフェイン入りジェルとアミノバイタルかなんかのやつを様子見て30km以降で使う補給5回作戦。あとはセブンの酸っぱい梅干し数個と塩タブレットを袋から出してまとめて小袋に入れたものを用意していた。
時計は意識せず、体が動くに任せて走る。時々確認するとだいたい予定通り4'03"〜09"くらいのペースっぽい。実際はわずかだけどアップダウンあるので感覚を重視。ほんのちょっとした上りは少し落とし、下りは上げて、パワーを一定にするイメージでいく。気持ち良い。
10km、43分台で通過。
10kmすぎくらい。やや足が怪しい。オンタケで足が終わって棒になった時の前兆のような感じ。うーん、このまま行くとやだな、と思いつつ、オンタケではほんとに足が終わったのは激下りを経ての50kmなので、まあなんとかこの調子で足を削っていって削り終わるのが42kmになればいいや、ということで放置。ペースを維持することにする。
懸念点であった尻の調子はいつも通りくらいの痛みで耐えている。今まで左足着地で息を吐く癖があったのを、調子の悪い右尻側にうまく意識を向けるため右足着地で息を吐くように変えた効果か?
13kmをすぎると、テッパン選手が見えた。サブエガペースで突っ込むと聞いていたけれど、体が重く調子悪そう。知り合いを抜くとテンションが上がってしまうが、釣られてペースも上がらないように気をつける。
その後すぐにサイサイ選手にも追いつく。さあ、ここからいつもの池の感じで走ればいいや、と思い言葉を交わすけど余裕が違う。こちら息上がり気味やけどサイサイ選手余裕ある。うーん、俺大丈夫か?? 一緒にいこか的なことを言った気がするけど特にペースは変えず。気がつくといなくなっている。排水欲求があると言ってたので行ったんだろうか。
しかし長い。まだ1/3しか走ってない。そろそろ飽きてきた気がする。が沿道からほどよく声がかかるので気が紛れてよい。「髭がんばれ」は50回くらい言われた気がする。「それ本物?」という質問もしばしばあった。ところどころ名前で呼んでくれる人もいる。まさか俺が走ってるとは思わなかったけど居合わせた知り合いもちらほら。派手めスタイルで正解である。
15km、1:03分台で通過。
秒単位のところはこの5kmで少し増えてるから4分ちょっとペースなんだろう。
ここまで順調に取れている給水が、ここで右側に現れる。右??そんなのアリなの??ここまで左ばっかりだったし、勝手に左と思っていたので練習も左しかしていない。というわけでわかりやすく失敗、撮り損ねた。練習でやっていないことは本番でもできない。すぐにもう1チャンスあったのでそこで取れてことなきを得る。
本格的に飽き始めて、もうすぐ中間地点というころ、よくわからないけどぎっしり詰まった集団が前方に出現。流れてるけど渋滞みたいな感じ。ペースがちょっと落ちる。なんやこれ??
どうやら3時間のペーサーとその後ろについているランナー集団っぽい。こりゃ困った。ついていけばサブスリーの近道なのかもしれないが、囲まれて走るのは嫌だし、なんだか今日やりたいレースじゃない。良くも悪くも調子に乗った今のペースで走りたいのや。
ということで、道路左端に寄って道幅が膨らむたびに少しずつ抜いていく。側溝やら道端の土草ゾーンも使う。無駄な上げ下げというのはわかっている。けどね、いつかこうやって上がらないと3時間より前に行けないし、やるなら今なのよ。路肩の悪路をバシバシ飛ばすこと数回、やっと抜けるとすっきりとした視界が広がる。やっぱりこっちの方が気持ち良いね。
20km、1:24分台で通過。
中間地点が来た。1:28:57。実際は秒まで見えてないけど、1.5時間に1分くらい余裕あるのは見えた。さて、ここからが本番である。体も動くし気持ちも乗ってる。なんならちょっと下り坂。ということでスピード乗せていく。あとから見返すと、22〜24kmは3'59"まで上がってた。
ここでチェル選手に追いつく。なんだかんだ言って安定して速いやないの。ふざけたおっさんの本気を感じる。「これで押していこう!」と力強く言われる。なるほどこうやって協調して進むのか。さすがベテラン、と思いながら24kmで3個目の半分黒糖わらび補給。この時なんか足にピシッと違和感。
25km、1:44分台で通過。
チェル選手とは1〜2kmくらい並走してた気がするが、気が付くと気配が消えている。確かにサブスリーよりは速いペースになっている。こりゃ飛ばし過ぎと泳がされたな。まあまだこれで良いけれど、30kmだか35kmだかの壁がくるとどうなる??未知。遭遇したくない未知。
30km、2:05分台で通過。
まだ粘れているがだんだんしんどくなってきた。10kmすぎで感じた、終わりの前兆が少しずつ大きくなってきている。予定より早く、モルテンのカフェイン入りジェル投入。粘れ俺。特にちょっとした上りがうまく走れない。下りは走れるので、そこでうまく勢いをもらって粘る感じ。これが壁?
足裏もきつくなってきた。やっぱり靴が薄かったんかな。今回選んだのは新品50kmくらいしか履いてないAltraのエスカランテレーサー。サンダル、ナイキの厚底カーボン、もう少し履き込んだエスカランてレーサー全て同じ強度のペーランで試して決めた靴。厚底カーボンは足残りは良いだろうという確信がありながら、履きこなすために慣らす期間がないということで見送った。この過程を踏んでなければ、あああっちの靴で走ってれば・・・と思うところ。このあたりで多少つらくなることは織り込み済みだったので余計なことに意識を飛ばさずに走り続ける。
が。つらいもんはつらい。
足攣りはほとんど経験がないが、そうなってはいかんと思って梅干しか塩タブレットを取、、、あれ、入れてた小袋がない。25km手前で黒糖わらび食べたときの足の違和感って、この小袋を落として足に当たったものだったのか、と気づく。気づくが時すでに遅し。
遅いが、ここまで前給水所でポカリを取っているから大丈夫。と言い聞かせる。そう思うと給水の練習はほんとやっておいて良かった。1回失敗はあったものの全ての給水所で、しかもスピードも落とさず取れている。こういう細かい積み重ねなのよね。
35km、2:26分台で通過。
アゴが上がってきているのがわかる。上半身が下半身から遅れてきているのがわかる。なんとか首筋や腹筋で前へ前へと引っ張る。が、持続しない。時計の上ではそれほど失速していないが、いよいよ終わりが近づいている感じがする。朦朧とした感じもある。ここまで、走っている意識はそこまでなく気分良くやってきたが、意識が明後日の方向に飛ぶ感じ。アミノバイタルみたいなやつを取る。
と。
明るく呼ぶ声が聞こえる。後ろからやってきたタイゾウ選手である。「やっと追いつきました〜」などと言うてはる。見た目もいかついが、まだまだ足取りもいかつい。さすがやなあ。勢いが違うので素直に見送らざるを得ないかと思ったが、無理をして押して着いていくことにする。ラストまでは無理とわかっているが、少しでも。体はもう限界だが、意識を足やらの自分ではなく、前方に持ってこれる。これが非常に助かった。
ただ、その背中は少しずつ、確実に、遠くなっていく。自分の走るGについて行けない上半身と頭をなんとか前に向けることだけに集中する。キロ数表示が1つずつ変わっていくのを唯一の楽しみに進む。
37kmあたり、39kmあたりで立て続けに知り合いの応援があって力が入る。ただ弱くなっている腕振りの先についている親指を立てるくらいしかできなくなっている。
40km、2:47分台で通過。
分単位の数字を見るとラップも落ちてきているが、そこまででもないかもしれない。うーん、わからん。
城が見えてきた。もうすぐ終わりだ。あとは1秒でも早く終わらせたい。タイムを縮ませたいというより、終わらせたい。ラストスパートなんかできない。ただ維持。維持というか、落ち込み量を最低限に抑えるだけ。
ここまで40数キロがんばってきたとは思うものの、結局マラソンというものはすべて準備だったな、と思う。事前の各種練習。それはスピードや持久力など走ることだけでなく、補給や給水、排水など、関わる動作全て。そして何を食べ、何を持つのか、何を着るのか。本番やることといえばただ無心で足を動かすだけである。もっと"レース"をすると違うんだろうけど、おのれの限界で走るなら準備がマラソンだ。こうやって思い出しつつ書き出してみるとこの時間の間に起伏がややあるようにも思うが、もっと長いレースに比べれば、ほんとワンプッシュだけである。スタートしたら押すだけ。オートパイロット状態。
城のエリアに入った。フィニッシュゲートも見える。ようやくスパートがかかる。
ゲートをくぐる。2:57分台の表示が見えた。
記録:グロス 2:57:09/ネット 2:56:04
もうちょっとなんらか感慨深いものがあると思っていたが、そうでもない。出し切ったので倒れ込んだりするもんかと思っていたが、そうでもない。
ためいきをひとつついているうちに、続々と仲間がゲートにやってきた。やり切った顔、やり切れなかった顔。それぞれ良い顔だ。
初マラソンの洗礼的なタレというか壁を最後に感じたものの、結果的にはサブスリーはできたし、超がつく上出来の結果である。ペースの上げ下げもあったので、もうちょっとうまく走れる余地もあった気がするが、それは望みすぎというものだろう。スタート渋滞で遅れたのを含めると、前半1:28:57/後半1:28:12でいちおうネガティブでも走れている。何より、ラストの辛さよりも中盤の気持ち良さの方が記憶の中で光っている。
さて、というわけで、45歳おっさん初マラソンサブスリーの話はこれでおしまい。
周りがサブスリーランナーだらけということで、むしろもうちょっと行けたんやないかという思いの方が強いけれど、それも含めて恵まれた環境だったんだろうな。エントリーしたよってあたりから、練習のしかた、心構え、装備、補給、レース前後のちょっとした技、色々教えてくれた仲間がいたから達成できた記録である。ほんと感謝である。
そしてなにより、過程も結果も全力でふざけながら本気で楽しむ姿勢が大きかったんだな。
ありがとう。またなんか一緒に走りましょうね。
チェルさん、サイサイさん、マコヤンさん、こいまるさん、かう坊さん、写真ありがとうございました。