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旅の終わり
旅の終わりを告げるのはいつも開けたドアから入ってくる冷たい風だった。
私の家族は旅行が好きで一時期は毎週末にどこかへ行くのが定番になっていたほどである。
家族で出かける時には父に運転を任せ私は後部座席で作業をしているか大抵は寝てしまっていた。
私が小さかった頃は特に実に色々な場所に連れて行ってもらった。代表はやはり甲府である。昔から城が好きだった事もあって甲府にある甲府城には数え切れないくらい人生の中で訪れている。
月に四回甲府に行っていた月もあったほどだ。
そんなに行くものだから毎回のコースはほとんど固まっていた。最後には必ず温泉に行って締めるというものだった。
温泉から帰る帰りの中で車に揺られながら少々湯冷めして、最終的には毎回と言っていいほど夢の中であった。
当たり前の話だが、旅には必ず終わりがある。そして夢は旅の終わりを近づけてしまう。気づいた頃には車は停止して親に家に到着したことを告げられる。家に着く時間というのは大抵まだ小さな子供には遅い時間で、目を開けるのにも時間をかなりかけていた記憶がある。
その間にも両親は荷物を運ぶ準備をしている。まだ寝ている私をさらに急かすように外の冷気が私の足元から迫ってきているのを感じるのである。
そんな毎度の経験もあって今でも車で冷気を感じると寂しくなるのである。