開演
開演の瞬間が何より恐ろしい。
どんな悲しいシーンより、
どんな笑えるシーンより、
どんなクライマックスより、
一番、人の目が集まるから。
開演。
幕が上がる。
皆が息を呑む。
舞台には僕が一人。
すべての目玉が僕を凝視する。
だから僕は振舞おう。
堂々と華々しく、あまりに惨めなその役を。
笑えばいい、顔をそむければいい。
だけど一瞬でも、
僕はすべての観客の視線を奪った。
開演の瞬間が何より恐ろしい。
そして、何よりも誇らしい。