置き傘
僕は置き傘屋。
置いているうちに忘れられてしまった置き傘を買い取っている。
置き傘は汚れている。
蜘蛛の巣がついていたり、
埃に塗れていたりする。
僕はそれを丁寧に拭き、洗う。
綺麗になった置き傘を店頭に並べる。
彼らが待つのは新しい主、
ではない。
彼らを置いていったかつての主。
彼らにとっては今も主。
再会を待つ彼ら。
再び巡り合った時に湧き上がるのは、
喜びか、憎悪か。
僕は知らない。
僕はただの置き傘屋。