ポケカに見る、平均とばらつきについて

きっかけはこちらの投稿です。
(いつも参考にさせてもらってます)

多くの方が、Day2に残ったり決勝トーナメントに進んだのはルギアやライコポンが多いのに全体の勝率で見ると低いことに疑問を持ったのではないでしょうか。

それに対して、私はこんな仮説を立てました。

仮説を立てただけでは無責任だと思ったので、できる範囲で検証してみました。

方法

やり方としてはこんな感じです。

まず、128人参加の大会で、スイスドローで7回戦(全勝者が1人になるまで)を想定します。

この128人を4つの群に分けます。

  1. 平均0、標準偏差1のパワーを持った群

  2. 平均0、標準偏差0.5のパワーを持った群

  3. 平均0、標準偏差1.2のパワーを持った群

  4. 平均0、標準偏差1.5のパワーを持った群

標準偏差が大きいほど、上振れも大きいが事故りやすいデッキ、分散が小さいほど爆発力はないが安定するデッキと考えて良いと思います。

この一人ひとりに対して、それぞれの属する群に応じた各対戦ごとのパワーを乱数を用いて割り当てます。

例えば、最も標準偏差の小さい2つ目のグループの一人に割り当てられた乱数はこんな感じ。

それに対し、最も標準偏差が大きい4つ目の群に割り当てられた乱数はこんな感じ。

こうして対戦ごとのパワーが割り当てられたプレイヤーを、同じく乱数を用いてランダムにマッチングさせます。

これに対し、単純に数字が大きい方を勝利とする、という単純なシミュレーションです。
例えば、上に例示した2名が5戦目にマッチングしたら、前者のパワーは0.571033、後者のパワーは1.1181856なので、後者の勝ちとなります。

あとは、通常のスイスドローと同じように勝数が同じプレイヤーを集めて乱数を用いて乱数を用いてマッチングして勝敗を決める、ということを7回繰り返すだけです。

結果と考察

やってみた結果、それぞれの群の勝ち数の分布は以下のようになりました。

どの群も平均は同じなので、平均勝数は同じになるはずなのですが、2群目が若干引く見えますがサンプル数を考えれば誤差範囲だと思います。

思ったより差が出なかったなー、というイメージですが標準偏差が小さい2群目が3勝、4勝に集中していることと、上位8人を決勝トーナメント進出とするならば、8人中6人が標準偏差の大きい3群目、4群目から出ていることは仮説を裏付ける結果のようにも思います。しかしそれなら逆に0勝、1勝も標準偏差が多い群の比率が大きくなると思いますがそうはなりませんでした。

なんで差が出なかったかを考えていて、それぞれの度数分布をグラフにしてみたら以下のようになりました。

これを見ると、標準偏差0.5のグラフだけ極端な形をしていて、それ以外は差が小さいです。これが2つ目の群だけ極端に3勝、4勝に集まった原因だと思
えました。

あまりパラメーターを極端に振りすぎると現実感が無くなるように思ったのでこういう設定をしたのですが、あまり差が出なかったのでちょっと極端に振ってみることにしました。

方法②

方法は同じですが、群を次のように変えてみました。

  1. 平均0、標準偏差1の群

  2. 平均0、標準偏差0.5の群

  3. 平均-0.1、標準偏差2の群

平均も若干変えてみました。また128は3で割り切れないのでサンプル数は43、43、42としています。

度数分布のグラフは以下のようになります。

これなら差が出るやろ、ということでやってみました。

結果と考察②

結果は以下のような感じになりました。

平均を下げたので3つ目の群の平均勝数が小さくなっているのは予想通りですが、勝数のばらつきにはあまり変化が出ません。

ここまでやって気づきました。

「いくら1戦ごとのパワーのばらつきを大きくしても、期待値(平均)が同じなら1戦ごとの勝率は50%に収束して結局差がでないのでは」と。

以前こういう記事を書いて、1戦ごと(対面ごと)の勝率にばらつきがあった方が大勝ちする可能性が高いという計算をしました。

それと同じような発想だったのですが、今回の仮説はちょっと違ったようです。

ではなぜ発端となったような事象が起こるかということに戻ると、
・以前の記事と同じように有利不利がはっきりしていること
・使う人によって勝率が大きく変わってくること
ということが考えられますが、現時点ではなんとも言えません。

ばらつきの大きさは弱者の戦略の一つ

では、1戦ごとのパワーのばらつきに意味がないかというとそんなことはないと思います。
例えば、こんなパターンを考えます。
これまでと同じような発想で

  1. 平均0、標準偏差1のプレイヤー

  2. 平均-1、標準偏差1のプレイヤー

イメージとしてはデッキは同じものを使っているが、プレイングスキルが1の方が高く、まともに勝負すると1の方が勝つことが多い場合のような感じです。
この両者の確率分布を表すとこのような感じです。

この両者が同じように乱数を用いて1万回対戦したところ、2から見た勝敗は

2,429勝7,571敗

という結果になりました。

これを2の人が平均パワーはさらに下がってしまうが、上振れも下振れも大きいデッキを使ったとして次のようにしたとします。

  1. 平均0、標準偏差1

  2. 平均‐1.5、標準偏差3

確率分布はこのようになります。

この両者が、同じような方法で10,000回対戦したとき2から見た勝敗はこのようになりました。

3,144勝6,856敗

となり、デッキパワーの期待値が下がっても勝率は高くなりました。

ということで上手い人に普通にやっても勝てない場合、こういうデッキを使ってワンチャンを狙うという戦略は、弱者の戦略として合理的だと思っています。

まとめ

ということで、あまり結果として得るものがなかった記事を書いてしまいましたが、このような仮説と検証を繰り返して理論は生まれていくことでお許しください。

けど、統計データを見るときは平均と共にばらつきを見ることが重要なのは間違いなく、ばらつきを意識することでデータの見かたや考察に、さらにはデッキ選択にも幅が出ると思います。

そしてこれらを認識するとよく見る「運だけ」という議論が意味を成さないこともわかると思います。
なぜならカードゲームは確率と切り離せず、好きこのんでこの運が絡む世界に足を踏み入れているのですから。運だけだって立派な戦略です。

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