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意識は先端に宿る

20代の頃から私はあまり化粧っ気がない。それでもファッションやお洒落が大好きで楽しみたい気持ちを持っていた。仕事の忙しさや日々の慌ただしさに振り回されていた頃の私は、髪の毛の手入れやネイルにまで気を配る時間を持つ気持ちのゆとりがなかった。今から思うと、毎日に追われ疲れ切っていて、それどころではなかったのかもしれない。40代になり、気分でメイクを変えてみたり、最近はファッションの好みも変わってきた。20代に置いてきてしまった女性性の楽しみを今頃取り戻してようやく味わい始めることができている。
ヘアスタイルもファッションの一部。改めて自分が着たい服、したい髪型を意識し始めた。自分を楽しむためには髪の毛のお手入れも大事!と思ってからは月1回は美容室に行き、必ずトリートメント。プロの施術で髪の手入れをするようになった。毎日使うシャンプーも基本何でもいいと思っていたけれど、「髪にとって何がいいか」「美しい髪にするためにどうすればいいか」という視点を持つようになった頃から、美容室のシャンプーやトリートメントも購入し、ホームケアにも自然と意識が向くようになった。髪をコーディングしてサラサラになるというこれまでの常識も何か違う気がした。
元々髪の毛量が多く、パーマもあたりにくい直毛で短くても長くても広がりやすい。そして年齢と共に癖も出始め、扱いにくくなってきたことを感じていた。それが私自身とても嫌だったのだ。

「自分が心地いい髪型ってなんだろう?」
「綺麗な髪の毛にするってどういうことだろう?」

お風呂上がりに暴れる髪の毛を乾かしながらしばらくそんなことを考えていた。馴染みの美容師さんにも相談してみた。髪の毛の生え方にもバラつきがあるらしく、ある部分だけ毛量が多いようなのだ。髪の毛が少ない人やボリュームが出にくい人にとっては羨望の目で見られるかもしれないけれど、多すぎるのも実は辛い。畑のように根本から引っこ抜きたい気持ちなのだ。
そんな無謀なことも現実的ではないし、自分が与えられたものを最大限生かす方が自然であると思った私は、変えられないものは受け入れた上で理想のヘアスタイルを手に入れようと心に誓った。
髪の毛の扱い方は専門である美容師さんに聞いてとにかく実践。ドライヤーの前後でヘアオイルを毛先に馴染ませたり、ドライヤーのコツも聞いた。そんなちょっとしたことの積み重ねで私の意識は美髪へ向かっていった。

こうして1年ほど経ち、伸ばし始めた髪に少しずつお手入れの結果が現れた。まず、手触りが違う。毛先のまとまりが違ってきたのと、面倒な毎日のドライヤー時間が少し楽しめるようになっていた。毎日支度するヘアスタイルにちょっとした自信が持って出かけていけるようになった。誰かと比べて美しいかということではなく、自分の中で美しいと思えたかどうかがきっと大事なのだろう。

「自分の持ちものを生かす」

お化粧でもファッションでも生き方でも実はそうなのかもしれない。
自分を整えたいときは、指先のネイルや髪の毛という”自分の先端”に意識を向けてみるといいのかもしれない。

「なんだか最近疲れている。」
「なんとなく気分が上がらない。」

生きていたらそんな時がしょっちゅうあるけれど、好きなカラーのネイルを塗ってみたり、髪の毛を綺麗にしてみたり、自分の先端を少し変えてみる。ほんのちょっとしたこと。それだけで、いつの間にか澱んでいた自分の無意識が軽くなる。自分を心地よくすることは自分でできる。
先端に宿る新鮮なエネルギーが自分を包んで守り、向かうべき方向を示してくれるような気がする。

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