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君の目の前から完全に姿を消すための撤退戦

たぶん君といた時間より長かった。それに比べたら君の記憶の中に深く完全に沈み込んでいくのは一瞬だった。最初から無かったことにしか出来なかったし、その運命から逃れてどのような接点もまた再度作り出せなかった。関係しない関係性しか有り得なかった。


フォローを外したのに忘れられない君のIDをコソコソ検索し、ひとり勝手につらくなる傷付きをもう繰り返すのに疲れたということ。記憶から消してもう二度とアクセス出来ないようにしたい。その文字列だけが頼り。せめて君の葬式には行きたかった。どこかでまた会える可能性だけでもあればよかったのに。


誰かに会うことすら疲れてしまった。しばらくしたら元気でるのかな。でもきっと君しかダメだったんだろうなと思う。あの時の自分とあの瞬間の君だけにしか感じ得ない奇跡の時間ってあったんだと思う。美しくも後味が悪い思い出に囚われて生きていくんだろうな死ぬまでずっと。


ひとり部屋の中で君の名前を突然つぶやくようなことがある。口を突いて出てきた言葉になんて馬鹿なんだと我に返って、その度に早く忘れようと努めるけれど、うまくいかない日はいつもこんな調子だ。もうあれから何年も経つのに。もはや忘れたくて、どうでも良くて、嫌な思い出なんだけれども。

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