ドイツの秋の味覚 フェーダーヴァイサーと玉ねぎケーキ
少々残念なことに、ドイツには日本ほど旬の食べ物がない。
それでも、春にはホワイトアスパラガスが店頭に並び、道路沿いには小さな販売小屋が建ち、ホワイトアスパラガスを売り出す。
ついでに、苺も販売しているところが多いので、春先にはついつい出かけてしまう。
ドイツ人は、このホワイトアスパラガスを好きな人が非常に多い。
すっかり秋も深まり、すでに厚手のコートが必要になって来た。
そして、この季節しか飲めない、旬の飲み物がある。
それが、Federweißer(フェーダーヴァイサー)だ。
白い羽という名前を持つこのワインは、発酵途中のワインだ。
とても甘いので、まるで葡萄ジュースを飲んでいる感覚で、つい飲み過ぎてしまう。
ボジョレーヌーボーを知らないドイツ人がいても、フェーダーヴァイサーを知らないドイツ人はいないだろう。
発酵途中のため、蓋の部分には小さな穴が開いている。
ドイツに来たばかりの時に、友達の勧めでこのワインをお店で頂いた。
とても美味しかったので、店頭でこのワインを見かけた時に買って帰り、瓶を冷蔵庫に横にして置いた。
結果は、ご想像通り。
冷蔵庫は、蓋から漏れたワインで水浸し。
蓋に穴が開いているとは知らなかった私は、一体何が起こったのかと慌てふためいてしまった。
瓶をよく読むと、瓶を決して横にしないようにと大きく書かれていた。
渡独したばかりの時期の、小さなミスの一つだ。
そして、そのワインのお供として、Zwiebelkuchen(玉ねぎケーキ)を一緒に食べる。
Zwiebel 玉ねぎ➕Kuchen ケーキ
ケーキと言っても甘いデザートケーキではなく、キッシュのようなものと説明したら分かりやすいだろうか。
今年も何度かフェーダーヴァイサーを飲んだ。
先日、パートナーの両親と会った時に、フェーダーヴァイサーを飲んだ話をしたら、玉ねぎケーキを作ったかと聞かれた。
店頭では、フェーダーヴァイサーの隣に玉ねぎケーキが売っている事が多く、つい買ってしまうので、一度も作ったことがなかった。
パートナーの母が、次に実家に来る時には一緒に作りましょうと提案してくれた。
そんな事がきっかけで、パートナーの実家を訪れた際に玉ねぎケーキを作ることになった。
パートナーの母は、私のためにレシピを書いておいてくれたのだが、彼女の気配りにはいつも本当に驚いてしまう。
下準備
ベーコンを炒める
写真を撮っておこうと思ったのに、料理とおしゃべりに夢中で、写真のことをすっかり忘れていた。
私はどうやら、料理記事を書くには向いていないようだ。
焼き上がってから、やっと思い出して写真を撮る。
これは、熱いうちでも冷めてからでも美味しい。
フェーダーヴァイサーの赤・白・ロゼと共に、みんなで頂く。
久しぶりに焼いたわ、とパートナーの母が言い、手作りは美味しいな、とパートナーの父が言う。
赤白ロゼ、それぞれのフェーダーヴァイサーの味を飲み比べ、みんなで一緒に飲めたことを喜ぶ。
私は、パートナーの母とキッチンに立っている時間が好きだ。
一緒に料理を作ると、私のやり方と彼女のやり方が違っている時があり、「へぇ、Ditoはこんな風に作るのね」と驚かれる。
そして「私はこうやるのよ」と、彼女のやり方を教えてくれるのだ。
大抵の場合、彼女のやり方のほうが簡単だし、何より美味しい。
ドイツ人男性は大概がマザコンだ、なんて言う人もいるが、パートナーもとても母親思いだ。
もちろん、父親の事も大切にしている。
私が料理をすると、ありがたいことにパートナーはいつも褒めてくれるが、パートナーの一番好きな料理は、母親の手料理だと知っている。
だから、実家に行った時には、なるべく彼女と一緒にキッチンに立ち、パートナーの好きな料理やケーキを教わる。
パートナーの子供の頃の話
困った話
笑った話
みんなで旅行に行った時の話
飼っていた犬の話
最近の姪っ子や甥っ子の話
近所の人の話
新しく買った洋服の話
美容院に行く話
来週末にお呼ばれをする時に何を持参すればいいのか迷っている話
話は延々に尽きず、私達は今度は片付けをしながら、更に多くの時間をキッチンで過ごしてしまう。
サッカーのハーフタイムや、時間を持て余したパートナーや父が、そろそろ料理は終わった?と聞きに来て、料理や材料を横からヒョイとつまみ食いする。
そんな時、私達を見るパートナーの目が、いつも以上に優しい事に、私はしっかり気付いている。
私はパートナーの実家で過ごす時間が、とても好きだ。
かけがえのない時間。
失いたくない時間。
フェーダーヴァイサーを、来年もみんなで一緒に飲みたい。
もちろん、手作りの玉ねぎケーキと一緒に。