解剖学 消化器系(食道~胃・腸)
こんにちは。
本記事をご覧いただきありがとうございます。
今回は、先日投稿しました消化器系(消化管・口腔〜咽頭)の記事の続きで、食道〜胃・腸についてをまとめていきたいと思います。
また、私の書いている記事では教科書に載ってあるイラストをなるべく使わないようにしています。
理由としては、教科書で添付されているイラストは学生にも見やすく綺麗にまとめられているものがほとんどです。
ですが、実際の人体解剖を想定してみると人体の構造はもっと複雑に構成されており、立体的に多角的な視点を持ってイメージ出来てないといけないと思っています。
なので、色々な解剖書から画像やイラストを引っ張ってきて、なるべく立体的に解剖学をイメージできる様になっていければと思います。
食道の基本的構造
食道とは
食道は咽頭に続く部分で第6頸椎の高さで始まり、脊柱の前・気管の後を通って胸腔に入る。さらに心臓の後ろを下降して、横隔膜を貫き(食道裂孔)、胃に達する。
長さは約25cmの前後に圧平された管状器官である。
食道の生理的狭窄部位
・食道は生理的に狭窄を示す場所が3ヶ所ある。
①食道の入り口(輪状軟骨の後ろ)
②気管分岐部の高さ(大動脈弓との交叉)
③横隔膜を貫くところ(食道裂孔)
胃の基本的構造
胃とは
胃は食道に続く袋状の器官で、消化管の中では最も拡張した部分であり、その容量は1~1.5ℓある。
造影剤を飲みX線写真を撮ると、小湾の一部に急角度に曲がる部分が見られ、角切痕(胃角)と呼ばれる。
1)胃間膜
胃の外表面は腹膜で覆われる。
・胃の前面を覆う腹膜と後面を覆う腹膜が小弯側で合して小網となり肝臓に達する。
・大弯側でも胃の前後2枚の腹膜は合して大網となる。
胃はこのように肝臓と腹壁の2枚の間膜でハンモックのようにぶら下がっているので移動性に富んでいる。
2)胃の粘膜
胃の粘膜内面には多数の粘膜ヒダが見られ、粘膜の表面には胃小窩という窪みが無数に見られる。胃小窩は胃液の出る胃腺の出口である。
胃腺には、胃の大部分に分布する胃底腺と幽門部にのみある幽門腺の2種類がある。
・胃底腺
→長い管状の腺で、塩酸(壁細胞)・ペプシノーゲン(主細胞)・粘液(副細胞)を分泌する細胞からできている。
・幽門腺
→短い管状の腺で、粘液を分泌するただ1種類の腺細胞よりなる。
開口部付近にはG細胞と呼ばれる内分泌細胞が散在し、ガストリンというホルモンを分泌し胃の分泌を促進する。
小腸の基本的構造
小腸とは
胃に続く長さ約6mで太さが3~4cmの管状器官。生体では筋の緊張や運動などにより、全長はずっと短くなり3mほどになる。
十二指腸・空腸・回腸の3部に分けられ、十二指腸は腹腔後壁に癒着し腸管膜を持たないが、空腸・回腸は腸間膜を持ち移動性に富む。
1)十二指腸
十二指腸はc字型に湾曲し、膵臓の頭部を囲み後腹壁に固定される。十二指腸の中程の左側に大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)の盛り上がりが見られる。
その中央に膵臓から膵液を運ぶ膵管と、肝臓から胆汁を運ぶ総胆管とが合流した管が開口する。この開口部をオッディ括約筋という平滑筋が輪状に取り組み、膵液及び胆汁の流れを調整する。
2)空腸と回腸
十二指腸は第2腰椎の左側で空腸に移行する。この移行部を十二指腸空腸曲という。空腸は初めの2/5を、回腸は終わりの3/5を占める。両者の間には明瞭な境界は無く一般的に空腸は左上腹部に、回腸は右下腹部に存在する。
3)小腸の組織構造と機能
a)粘膜
小腸の粘膜には内腔に突出し輪状に広がる輪状ヒダが発達する。
輪状ヒダは十二指腸では下方に行くほど増加し、空腸上部で最も発達し、回腸ではヒダは小さく不規則となり快調の末端では消失する。
・腸絨毛
粘膜の表面には腸絨毛が密生する。腸絨毛と微絨毛との間に小さな孔が開いているが、これは管状をした腸線の開口部にあたり粘液を分泌する。
十二指腸では十二指腸腺が発達しアルカリ性でかつ粘性に富む分泌物を分泌して胃液の酸性を中和し十二指腸の粘膜を保護する。
腸絨毛ではその中軸を1本の毛細リンパ管(中心リンパ管)が走り、その周囲を網状に毛細血管が取り囲む。腸の粘膜上皮から吸収された糖質とタンパク質の分解産物は毛細血管を経て肝臓に運ばれるが、脂肪はリンパ管に入る。脂肪を含むリンパはミルク様に見えることから乳びと呼ばれる。
・微絨毛
腸絨毛の粘膜上皮を電子顕微鏡で見ると、微絨毛がその表面を覆っている。
この微絨毛の表面から栄養素が吸収されるのであるが、その吸収面積は輪状ヒダで3倍に、腸絨毛で10倍に、微絨毛で20倍に拡大され、小腸粘膜の表面積は全体で200㎡(対表面積の約100倍)になる。
b)粘膜固有層
粘膜固有層にはゴマ粒大のリンパ小節が散在する(孤立リンパ小節)。リンパ小節が集まって、小判状に見える集合リンパ小節(パイエル板)は空腸下部に多い。
c)筋層
小腸の筋層は平滑筋からなり内層筋は輪走し、外層筋は縦走する。
蠕動運動・分節運動・振子運動により内容は混和されながら下方に向かって移送され、3~6時間かかって大腸へと運ばれる。
一般に筋層は空腸の方が回腸よりも発達が良く、活動も活発である。そのため空腸では内容物が速やかに輸送され、内腔が空であることが多いので空腸と呼ばれる。
大腸の基本的構造
大腸とは
大腸は小腸に続く消化管で小腸よりも太く、全長は1.6mで盲腸・結腸・直腸の3部に分けられる。
1)盲腸
回盲口より下方へ5~6cm進んで行き止まりとなる袋の部分を盲腸と呼ぶ。
・回盲弁(バウセン弁);大腸内腔に小腸(回腸)が首を突っ込む様にして入る部分。
→回盲弁は大腸の内容が小腸へ逆流するのを防ぐ役割を持つ。
盲腸下部の後内側壁から鉛筆くらいの太さで下方に伸びる突起が虫垂である。
虫垂の壁にはリンパ組織が発達し、特に若い人ではリンパ球や抗体の産生が盛んで時に過敏となり炎症反応を引き起こし、虫垂炎となる。
2)結腸
結腸は大腸の大部分を占め、その走行によって上行結腸・横行結腸・下行結腸・S字結腸の4部に分けられる。
a)結腸の走行と間膜
・上行結腸:盲腸に続き腹腔の右側を上行する長さ約20cmの部分。
・横行結腸:上行結腸に続き、肝臓の下で左に屈曲し、胃の大弯に沿って右から
左へと横行する長さ約50cmの部分。
・下行結腸:横行結腸に続き、脾臓の下で下方に屈曲し腹腔の左側をほぼ垂直に
下降する長さ約25cmの部分。
・S字結腸:下行結腸に続き、左腸骨窩空仙骨の前をS字状にカーブする長さ
約45cmの部分で直腸に移行する。
✔︎横行結腸とS字結腸は腸管膜を持ち移動性があるが、上行結腸と下行結腸は長間膜を持たず、後腹壁に半ば埋まる。
b)結腸の外科的特徴
・結腸膨起:結腸は数cmおきに腸に紐を締め付けた様なくびれがあり
このくびれにより作られた結腸壁の膨らみを結腸膨起という。
また、結腸の表面には縦に走る幅1cmほどの結腸ヒモというスジが3本、等間隔に並ぶのが見られる。この結腸ヒモには腹膜に包まれた小さな腹膜垂という脂肪の袋がぶら下がる。これらの3つの特徴は結腸を小腸から区別する目印となる。
3)直腸
直腸は大腸の終わりの部で、S字結腸が仙骨の前面に達すると直腸となり仙骨の湾曲に沿って下降する。尾骨の前に達すると急に後方にほぼ垂直に屈曲し、外界に開く(その開口部が肛門)。
4)大腸の組織構造と機能
a)粘膜
大腸には腸絨毛は見られず、腸腺には粘液を分泌する細胞(杯細胞)が多数を占め、消化液の分泌は行われない。大腸では消化作用はほとんどなく、水の吸収が主である。肛門は機械的刺激に強い重層扁平上皮に覆われる。
b)筋層
大腸の筋層は内輪層と外縦層の2層の平滑筋からできている。ただし結腸では外縦層が3ヶ所に集まり、結腸ヒモの形成にあずかる。
肛門では内輪筋が特に発達し、内肛門括約筋を作る。この平滑筋でできた括約筋の他に横紋筋でできた外肛門括約筋がある。前者は反射的に、後者は随意的に肛門を開閉する。
以上、今回は消化器系(食道〜胃・腸)についてまとめました。
次回は、消化器系(肝臓・胆嚢・膵臓・腹膜)についてまとめていこうと思います。
間違っている点や、気になる点があれば気軽にコメントしてください。
本日もご覧いただきありがとうございました。