サプリメントで死亡率が上がるのか?下がるのか?
今日は、こんな記事が目に入った。
タイトルを読んだだけでは、なんだか怖い感じがする。
当院のクライアントさんの中には、マルチビタミンを愛飲されている方が多く、この記事を目にして不安を抱く方も出てくるだろうと予測できる。
そして、このことについて質問されることも、それがお一人ではなく何人もいらっしゃって何度も同じことを話さないといけないことも予測できる。
このブログを最後まで読んでいただくと、これからの人生でマルチビタミンを飲み続けたほうがいいのか、やめたほうがいいのか? などの判断材料に役立ててもらえると思う。
読み終わった後に、安心してもらえると嬉しい。
とはいえ、ここから先はこんな意見もあるんだなーとリラックスしてお読みください。
死亡確率がさらに4%高い
Yahoo!ニュースの見出しには、こう書いてあった。
まず、そもそもサプリメントの健康や病気に関するエビデンスは乏しいのが現状なので、基本的に健康な人は必要な栄養は食事から摂取することが良いと理解しておいていただきたい。
過去にも、米国成人におけるサプリメントからの栄養摂取量が死亡率と関連しているのかを評価したものがあったが、サプリメントによって死亡率が低下するという示唆は得られていない。
このように死亡率はサプリメントによって低下することは低いとわかっていても、アメリカ国民の77%の方が利用していることが米国栄養評議会(CRN)の調査で分かっている。
そのなかでもマルチビタミンの使用率は凄まじく、国民の3人に1人がマルチビタミンを愛飲している。ちなみに、使用者がマルチビタミンに期待する結果は病気の予防である。
改めて調べてみると凄い使用率に驚いたので、真面目に米国サプリメント会社の株を買おうか悩んでいる。笑
今回、ヤフーニュースに取り上げられていた調査は、エリッカ・ロフトフィールド博士らによって、一般的に健康な成人は長期にわたる毎日のマルチビタミン摂取と死亡率との間にどのような関連があるのか?を調べたものだった。
やはり結論は、マルチビタミンの毎日の摂取と死亡率の減少との関連は認められなかった。でもなぜ、Yahoo!の見出しには「死亡率4%さらに高い」なんて怖い感じになっていたのか?
答えは、研究発表の結論の一文を抜粋したから。研究発表の結論を読んでみとわかることなのだが、マルチビタミンが死亡率に影響を与えていないと書いてある。
サプリメントを利用する人を想像する
マルチビタミンをすでに愛飲している人(しようと思う人)は、もともと死亡リスクが低い生活をしている傾向がある。
冒頭に書いたように、マルチビタミンを使用している方の目的は病気を予防するため。「予防しよう」と思えるということは、今は健康だ!というメッセージが含まれている。
このため、結果として「マルチビタミンを使用している人は死亡リスクが低い」と結論づけられたとしても、それが本当に純粋なマルチビタミンの効果なのか、もともとの健康的なライフスタイルによる効果なのかを区別することが必要。
もちろん、その反対もある。
健康状態が芳しくないために、食事で補えきれない栄養素をサプリメントから摂取しよう!とか、健康状態が悪化した人が健康を改善を試みてサプリメントを使い始めることもある。
この場合、サプリメント使用が高い死亡リスクを招いたように見えることがありますが、それはサプリメントのせいではなく、もともとの健康状態の悪さが原因の可能性もある。
そしてなによりサプリメントに興味を持ち始めるのは、どこの国でも20代よりも70代の方々でしょう。年齢を重ねると健康関連商品を使用する確率は高まると同時に死亡する可能性も高まることも忘れてはいけない。
これらの要因を考慮して、マルチビタミンの使用が死亡リスクにどのように影響するのかを正確に評価することが専門家の仕事。もちろん研究では、これらの交絡要因を取り除いて真の関連性を見つけ出すために賢人たちが努力をしてくれています。
なので、ニュースをみて判断してしまうのはあまりスマートな行動ではありません。間違った解釈をしないためにも、できれば一次情報にふれる癖を高めていくことが重要だと感じます。
サプリメントはお金の無駄なのか
ここまで読むとサプリメント不要主義が芽生えそうですが、使い方によっては効果的な場合もある。
例えば、妊娠前や妊娠初期の女性が葉酸を積極的に摂取することは厚生労働省でも推奨しているし、高齢になるとビタミンB12の吸収機能が落ちてくるので、食事で補えきれないビタミンB12をサプリメントで補助してあげると栄養状態が維持しやすいこともわかっている。
これは多くのことに当てはまることですが、物事の多くは白か黒かハッキリ分けることができず、ちょうどいいことは大体グラデーション領域にある。
だけど、それを考えるには大きなエネルギー消費を伴うため、私たちはより簡単に判断できる白か黒かを選びたくなる。特に、健康に関してはわかりやすい判断を求めたくなるのではないでしょうか。
だからこそ、まず健康状態については自己判断せず医師や専門家に相談することをお勧めします。
マルチは大切
マルチビタミンをネタに今日はブログを書いてきましたが、健康にとって「マルチ」というキーワードは本質をついています。なぜなら、真の健康状態を目指すには多様な行動と思考が必要になるからです。
すこし想像してみてください。どれだけ質の高い食事をとっていても睡眠を怠っていると元気で過ごすことは難しいとおもいませんか?また、生活習慣が健康的で完璧だったとしても、もし、収入がなかったら今ある健康状態はキープできるでしょうか?
なんとなく、難しいのが想像できたのではないかと思います。
では、さらに想像してみてください。健康状態も収入も十二分に豊かだったとしても、話し相手がいなかったらどうでしょうか?「一人が好きだから問題ない」とか「ペットがいるから大丈夫!」なんて声が聞こえそうですね。笑 それも一つの価値観ですが、人は人と関わりを持たないと健康状態をキープすることは難しくなるという研究発表もたくさんあるほどです。
他には、健康情報を得るためにアクセスする場所でも健康格差は生まれるので、大人になってからも読解力や理解力を鍛えておいたほうがいいかもしれません。(これは僕の悩みでもあるので、ここを鍛える方法を教えてください!)
ちなみに、健康状態を調査するアンケートには「学歴」を尋ねられることが多々あります。これが意図することをストレートに表現すると、頭の良さと健康状態の良さは関連性があることがわかっているからです。
海外の論文などを読んでいると例えば「大卒40代女性」と「40代女性」で分けてカウントしているものがあって、完全に相関しているとは言い切れないが、大卒の方のほうが健康状態が良い結果が出ていることが多い。(収入も考慮しているんだと思います)
こんな感じで、「健康に生きる」ことは様々な要因が複雑に絡みあって成りたっている。コントロールできそうなようで、もしかするとコントロールできないものなのかもしれません。
とはいえ、元気にエネルギッシュな毎日を送るのに必要なものはマルチビタミンよりもマルチな視野と考え方といえるでしょう。
このブログの結論
栄養はサプリメントよりも食事で補うことが良い。
さらに理想を言えば、定食スタイルで食べるとよい。なぜなら、これこそマルチ(総合的)に栄養が補えるからだ。
もし、利用しているサプリメントがあるならば、その栄養素を食品に置き換えられないかを考えてみていただきたい。「食べる」から効率だけ考えて「とる」ことがメインになってしまうと消化機能にも悪影響が出るからです。
私たちの体にとって「おいしい」と感じることが消化吸収の効率に大きな影響力を持つことを忘れてはいけない。味、香り、食感を感じることによって唾液や胃液の分泌が高まり、食べた食材の恩恵を受けることができるのだが、サプリメントは決しておいしいと感じることはない。
それに、サプリメントは食品から一つのビタミンだけを抜き取って固めた不自然な食べ物である。そのような物体を、30万年間も進化をしていない私たちの内臓へ入れたとしても最善の対応ができるとは思えない。(もちろん最新科学で工夫されているけど)
こんな風に進化過程を考えたとしても、やはり食材を食べて栄養抽出は内臓に任せるほうがいいと感じる。
現時点で普通に食事ができる身体であれば、食事で健康を維持していただきたい。忙しことを理由にサプリメントを摂取しているのであれば、根本的な問題は忙しさを穏やかにすることであって食事を簡素に効率化することではない。
現代は「効率化」と「速さ」が高評価を得すぎている。この全体的な価値観の偏りが健康にも影響を与えているのではないかと僕は思う。
長々と書いてきましたが、会話しながら笑って、ゆっくりよく噛んでご飯を食べることがやっぱり元気になる秘訣だよってことです(^^)/
最後まで読んでいただきありがとうございます!