箱庭の天使(1)全3話
あらすじ
第2話「見回り」はこちら
第3話「小悪魔」はこちら
第1話 新米教師
1-1 教師の使命
少女たちは、天使だ。
無垢で、あどけなく、純粋で、脆い。
迂闊に触れれば砂糖のようにくずれてしまう繊細なこわれもの。
硝子よりも研ぎ澄まされた彼女たちは誰よりも自由で、
そして、その身も心は、いまだ誰にもけがされぬ白銀のように淡く、白く。
ここは、天使たちを擁する楽園。
私は、今日からここの教師になる。
教師として天使たちを慈しみ、守り、教え導く。
それが私の、教師としての使命だ。
1-2 挨拶は基本
窓から見える空は遠く、高く。吹き抜ける風は青く澄み渡り。
うららかな晴天の今日この日は、近年まれにみる絶好の入学式日和だった。
「はじめまして!今日からこのクラスの担任を務める、如月マリアと言います」
天井にこだました私の声に一拍遅れ、ぱらぱらとまばらな拍手が起こった。
おろしたての長いチョークで黒板に自分の名前を綴る。
なるべく大きく、丁寧に書き記した後、チョークを持ったまま肩越しに振り返った。
今日入学したての延べ32人。
きょろきょろとせわしなく視線を巡らせている子、じっと教壇を見つめている子、こちらの話に耳を傾けながらも、俯き気味に何かを考えこんでいる子。
皆さまざまな表情を浮かべているけれど、そこには一様に不安という影がちらついていた。無理もない。皆まだ15歳の子供で、新生活というものは期待と同じだけの不安が伴うものだ。
ましてや、今日を境に親元からも繁華街からも離れて、全寮制の学園で3年も暮らすとなれば、なおさら。
聖アスタロテ学園高等部。
幼年部から大学まで一貫した教育を行い、公明正大かつ思慮に溢れた才人を養育することを指針として掲げた高等教育機関。
ここはその中でも15歳から18歳までが在籍する高等部にあたる。
入学を許されるのは女子のみ、幼等部からのエスカレーター式、中等部からは全寮制を導入し生活のこまやかな所作から躾を行う――所謂、古き風習を未だ厳格に守っている『お嬢様学校』である。
もっとも昨今は時代の変化に伴い、中等部や高等部からの途中編入や自宅通学、大学にいたっては一部の学部で男子学生も受け入れるなど、昔ほど閉じられた世界ではなくなっている。
高等部は近年校舎も制服も一新し、古臭さはまったく感じられない。
しかしながら、多少規則や体制が変わろうと、世間からの印象は昔のまま、一寸たりとも変わることはない。
『天使の箱庭』。
人々は、この学園をそう呼ぶ。
実際、この学園には“天使”が多く在籍している。
まだろくに翼も生えそろっていない年頃から、上手く隠して生活できるようになるまで――この学園は世俗にまみれた世間から天使を匿い、身を守る術を叩き込む役目を陰ながら担っている。
“天使”であることは恥ずべきことではない。人間社会に溶け込むにあたってそれらしく振る舞うことが重要であり、余計な揉め事を起こさないよう教育を施す。
それが、教師の仕事。そして、尊い使命だ。
「……まずは、入学おめでとう。あなたたちに出会うことができて嬉しいわ」
私は努めて柔らかい声音を装い、生徒たちに向き合った。
静かに息を吸い、吐き出す。
昨日練習した通りの言葉を脳裏に浮かべながら、私に視線を注ぐ32人の顔をひとりひとり、見つめた。
「実は、私もあなた達と同じ教師一年生なの。頼りなく思われるかもしれないけれど、年が近い分あなた達の気持ちはわかるつもり。
だから、遠慮なく何でも相談してちょうだい。……解決してあげられないときは、先生も一緒に悩んであげるから」
最後は悪戯っぽく声色を崩すと、幾人かの生徒の口許に笑みが浮かんだ。
掴みは悪くない。これなら大丈夫そうだ。
生徒たちに背を向けて黒板を綺麗にするかたわら、心の中で次の段取りにシフトする。
「それじゃあ早速授業を――」
チョークの粉を払いながら教壇へ向かう。
もう一度顔を上げて教室内を見回したその時——ふと、視界の端に違和感を覚えた。
窓際の列の、一番後ろ。そこだけカーテンが開け放たれ、燦々とした朝の光が差し込んでいる。
窓まで開けられているのか僅かにカーテンが揺らぐその影で――まだあどけない少女が、じっと窓の外を見つめていた。
目鼻立ちのはっきりした顔立ち。耳の上で二つに結われた艶のある黒い髪。
物憂げな瞳は窓の外に釘付けになったまま、まるで微動だにしなかった。
そういえば、さきほど挨拶をしていた時から、この子だけはこちらに一切目を向けなかった気がする。
私は一瞬声をかけるか悩み――小さく肩をすくめ、教壇に置いていた教科書を手に取った。
私の渾身の挨拶はどうやら彼女の気を引くには足りなかったらしい。それはまぁ、致し方のない話だ。
この年頃の少女たちは気難しく、話を聞けと言えば言うほど反発する。授業さえ聞いてくれれば、今はまだそれでいい。
今日は初日。仲良くなる時間はまだまだたっぷりあるのだから。
ぱらぱらと教科書をめくる。私はこのクラスの担任だが、一時限目の現代文も私の担当教科だ。おかげで移動や準備を気にせずゆっくり挨拶ができた。
私の動きに合わせ同じように机の上の教科書とノートを開きだした生徒たちに、私は付箋を貼っていた教科書のノンブルを告げた。
「はい、それじゃあ16ページを開いて——」
生徒たちが準備をするのを見回しながら、そっと、先ほど窓の外を見つめていた女生徒に視線をやる。
彼女は相変わらず気だるげに窓の外を眺めていたが、その手元では既に、指示された教科書とノートがまるで最初からそうであったかのように開かれていた。
1-3 孤立した生徒
時間というのは、意識していない時ほど風のように通り過ぎていく。
明日からの段取りを説明し終えたちょうどその時、その日最後のホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。時間配分は完璧。我ながら素晴らしいと胸の内で自らに賞賛を送る。
号令と共に一礼した生徒たちがそのまま蜘蛛の子を散らすように教室を飛び出していく。
今日の放課後は各部活動の勧誘会が予定されていたはずだから、皆それを楽しみにしていたのだろう。
各々が興味の赴くまま一人で、あるいはグループになって移動していく背中を眺めていると、自分の青春時代が重なって甘酸っぱい感傷がこみあげた。
教卓で書類を整え、角を揃えながらほとんど無人になった教室内を見回す。
一瞬で喧噪の遠のいた空っぽの机たちの列を眺めて——ふと、その片隅に、まだ人影が残っているのを見つけた。
教室の窓際、一番後ろの席。
今朝、ずっと窓の外を眺めていた女子生徒だ。
彼女はいまだ窓の外を眺めたまま、無人となった教室でただ一人、彫刻のごとく今朝と寸分変わらぬ姿勢で着席していた。
物言わぬ石像と違うのは、時折窓から吹き込む風に、二つに結った髪が揺れる瞬間だけ。
机の上には何もない。教科書もノートも、先ほど配ったプリントも既に仕舞い終えているようだ。
机の横にかかっている鞄の蓋もきっちり閉まっていてあとは帰るだけのはずなのに、なぜまだ窓の外なんかを眺めているのだろうか。
私は教卓から離れ、なるべく驚かせないよう足音を潜めて彼女に歩み寄った。
三度、風が彼女の髪を揺らす。
私はそっと身を屈め、彼女の視界に入るようゆっくりとその顔を覗き込んだ。
「どうかしたの?」
声をかけると、ようやく少女の目がこちらを向いた。
しっとりと艶やかな細い黒髪。切り揃えられた前髪の下で、長い睫毛に縁取られた瞳が大きく二度瞬く。
真っ直ぐな目だった。光の加減で赤色を帯びて、きらきらと、午後の陽光を反射する。
怯えるでもなく嫌悪するでもなく、ただただ真っ直ぐ射抜いてきたその目に、心臓がどきりと不意打ちを食らって跳ねた。
「……………………」
「……なにか用? センセ」
鈴を転がすような音が彫刻——否、少女から発せられた。
それが人の声で、言葉で、私に投げかけられたものだと理解するのに、数秒の間を要した。
「…………えっ、ああ、いえ」
まさか問い返されるとは思わず、私は慌てて言葉を探す。
頭の中で、研修で培ったマニュアルを広げる。
コミュニケーションの最初は共感から。その教えに従って、まずは彼女を知ることから始めることにした。
「そんなに窓の外を眺めて、何か面白いものでもあった?」
「別に」
そっけない返事が間を置かずに返ってきた。
そして会話はそれっきりで途切れ、再び沈黙が蘇ってくる。
……あっけなく、終わってしまった。これじゃあいけない。
この子はどうやらおしゃべりが好きなタイプではないらしい。脳内のリストにそう書き込んで、今度は別の話題から攻めてみることにした。
「今日は部活動の紹介もあるのに、まだ帰らなくていいのかしら?」
「帰るって、どこに?」
「どこ、って……」
また問いが返ってきた。それも、何とも答えづらい問いだ。
なかなか噛み合わない会話にしどろもどろになりながら頭をフル回転させる。ここできちんと答えられなければ、生徒たちの信頼を得るなんて夢のまた夢だ。
彼女たちが帰る場所と言えば寮。けれど彼女の求める答えはそうではないはず。ずっと一人でいるし、もしかしてこの子は高等部からの編入生で、友達を作るのが苦手な子、だったりするんだろうか……。
だとしたら、教師としては放っておけない。なんとしてでも彼女と向き合わなければ……。
考え込んでいたのは数秒だったはずだけれど、その間にすっかり彼女から意識が逸れていたらしい。
出し抜けにカタンと音がして顔を上げると、彼女が立ち上がって机に欠けていた鞄を手に取ったところだった。
「あっ……」
「ねぇセンセ」
私が言葉を発する前に、彼女の瞳が私を射抜く。
紅玉のように赤く光る眼が、ほんの僅かに、細められる。
「センセはどうして……ココに来たの?」
――どうして、ここに?
質問の意図がわからず、私は言葉を詰まらせたまま立ち尽くす。
どうしても何も、私は教師で、ここは学校。どうしてわざわざ数多ある学校の中からこの職場を選んだのか言えば、私自身、“天使”だからに他ならない。
この学園は“天使”を養育する花園。無論教師も皆“天使”である必要がある。
だから私はここに来た。人生の、“天使”の先輩として、生徒たちを教え導くために。
それが私の責務で、さだめで――そして、生きる意味。
しかし、この答えは、おそらく彼女の問いにはふさわしくない。
こんなことを生徒に語ったところで仕方ない。もっと彼女の立場に寄り添って答えてやるべきだろう。
答えを探し、私はふと視線を机の上に落とした。
机の上には彼女の鞄がある。年頃の少女にしては飾り気のない、黒い小さなリュック。
唯一の特徴は表に生えた二つの羽根。白くてやわらかな天使のそれではなく、真っ黒で、尖っていて、攻撃的な棘がいくつも連なっていた。
妙に既視感のある見た目だった。どこで見たのかと無意識に記憶を探る。
あの羽根は、確か——―。
『如月先生、如月マリア先生。学長室までおいでください。繰り返します……』
突然名前を連呼され、私はばっと音を追いかけ背後を振り仰いだ。
音の出所は教壇の上にあるスピーカー。何のことはない、ただの校内放送だ。しかし、そこから自分の名前が聞こえることに――そして、呼び出された場所に疑問を覚え首を傾げた。
学長室?なぜ、私が?
呼び出されるようなことをした覚えはない。ましてや学長は多忙で、式典以外でお目にかかれる機会はめったにないのだ。
重要な通達は副校長や教頭が担っていたはずだから、それなら職員室で事足りるはず。いったいどうして――。
そこで、はたと私は沈んでいた思考を現実に引き戻した。
ハッと顔を上げる。放送に気を取られ、すっかり生徒を放置してしまっていた。
「ごめんなさい、あの………」
私が視線を戻した先には——誰も、いなかった。
立ち去る気配はしなかった。目を離したとは言えすぐ側にいた人間が動けばさすがに気づく。
でも、彼女が立っていたはずの場所にはふわふわとカーテンがたなびくばかりで、人がいた痕跡はすっかり消え失せていた。
――まるで、煙のように、音もなく。
最初からその席には、誰もいなかったかのように。
「………………」
そんなはずはない。彼女は確かに存在し、この目で見て、会話だってした。
私は慌てて手元の出席簿をめくった。まだ席替えはしていないから、席順は出席簿と同じはず。
座席を数えながら名簿に指を滑らせる。ひい、ふう、みいと口先で数を紡ぎ、とある生徒の名前までたどり着いて、指をとめた。
「……黒木、ミサ……」
ざあっと、窓から吹き込んだ風が白いカーテンを帆のように膨らませる。彼女のいたはずの空間を白い布がさらう。
その向こうに、目を離す最後の一瞬、視界の端でとらえた不敵な笑みが、幻のように浮かんで、消えた。
1-4 学長命令
窓から差し込む午後の日差しが影との境をより強く浮かび上がらせる。
影から出れば日の光に焼かれてしまうかのように、私はじっと、入ってきた扉の側に佇んで、直立不動のまま部屋の主から声がかかるのを待っていた。
呼び出された学長室の中には二人だけ。私と、そして、椅子に腰かけたもう一人。
彼女は窓を背に大きな机に向かい、書面をめくっては押印する作業に没頭していた。
広げた紙の上から下まで視線を走らせ、大きな真四角の印を押して右側に積む。
彼女が紙をめくる度微かに鳴る音と窓越しに遠くから響く放課後の喧噪だけが、重く降り積もる沈黙を僅かに散らす。
やがて、ぴんと張りつめた糸がいい加減緩む気配を見せ始めた頃、ようやく彼女が最後の書類に印を押して顔を上げた。
「——待たせてすまない」
空になった机上に肘をつき、切れ長の瞳がこちらへ向く。
濡れ羽色の長い髪と同じ色の瞳。刃のような鋭い光に自然と背筋が伸びる。
世良アキ。
聖アスタロテ学園高等部のトップである学長だ。
“女帝”と陰で称されるにふさわしい威圧に、私は流されるまいと懸命に声を張った。
「いえ。……何か、私に御用とお伺いしましたが」
努めて平静を装い、私は学長に問い返す。
学長を見たのは三度目だ。
最初はここの試験に合格した時、二度目は入学式の時。
本来私のような新任教師が一対一で言葉を交わせる相手ではない。
その他の通達や指導はすべて副学長と教頭でまかなっていて、学長は主に学外とのやりとりで忙しくしていると聞いていた。だから、ここに呼び出され入室した時、彼女ひとりだけが着席していたことに心底驚いた。
いったい、何を言われるのか。
ヘマをしたつもりはないけれど、せめて初日で解雇などという汚名だけは免れたい。
いっそう姿勢を正す私を見て、学長が不意にふっと口許を緩めた。
「そうかたくならなずともいい。どうぞ、楽にしてくれ」
学長は椅子に背を預けて手のひらをこちらへ向けた。
机の前を指し示され、恐る恐る、扉の前を離れて歩み寄る。
眼前に来た私を見上げ、学長はきぃ、と椅子を鳴らして首を傾けた。
「今年の新任は君だけだったようだね。研修の成績もとても優秀だったと聞いている」
「いえ……恐れ入ります」
謙遜しかけて、言葉を濁す。
手の届かない人に褒められるというのはなんだか妙にくすぐったくて、嬉しいを通り越して居心地が悪かった。
学長として生徒のみならず教師にも気を配っているというだけなのだろうけど、見られているなんて思っていなかったから、余計に。
学長が薄く眦を細める。値踏みされているような視線に耐えかねて、私はさらに半歩踏み出して言葉を重ねた。
「それで、あの、私はどうしてここへ……」
「ああ、そうだった。別に悪い知らせではないから安心してほしい」
学長が書類の山の隙間から、一枚の書面を摘まみだす。
「君に、是非とも頼みたいことがある」
学長の手からこちらへ向けて机上へ置かれたそれを覗き込み、私は最初に書かれているそのタイトルをゆっくりと読み上げた。
「……放課後の、見回り?」
「そうだ。新任教師のお役目みたいなものでね。早速今日から校内の見回りをしてほしい。詳細はこの紙と、去年の担当教員を指導係に任命してあるから彼女に聞いてくれ」
それっきり、言葉が途切れる。私は思わず、涼しい顔をした学長をまじまじと見つめた。
こんなことを頼むために、わざわざ?
学長は多忙の身と聞いている。実際、彼女と一対一で話すのはこれが初めてだ。
……だというのに、その内容がただの見回りの用命?
違和感を問いただそうと意図せず唇が開く。
しかし私は疑念を気取られぬよう小さく息を吸って、無表情を貫き通したまま頷いた。
「わかりました。謹んで拝命いたします」
「ああ、よろしく」
たかが見回りだろうと学長直々の命だ。何か特別な意味があるのかもしれない。
書類を手に取りしっかりと目を通す私に、学長が思い出した顔で椅子から背を離した。
「ああそれと、」
学長が出し抜けに、机の引き出しに手を伸ばす。
重厚な音が響く。学長は袖机から取り出した何かを机上に置き、元の通りに引き出しを閉めながら告げた。
「これを持っていくといい」
ごとりと、やけに重たい音を立て机上に置かれたのは——黒い、鉄の塊。
傾きかけた陽の光を反射し、鈍い光を放つ無骨な砲身。
グリップだけが木製で、その色の染み方から、ずいぶん古いもののように見受けられた。
そこだけ、切り取られたかのように現実感がなかった。
映画や本でしかお目にかかったことのないそれは、見紛うことなく――拳銃、だった。
「……こ、れは」
学長の手元から私の手の届くところへ滑るように置かれた暴力の象徴を前にして、私はそれを凝視したまま、ただ硬直するしかなかった。
学長はこれも受け取るようにと顎で示して、何事もなく続けた。
「これは“悪魔”に対応するためのものだ。護身用だが、対処はこれで十分だろう」
「…………“悪魔”?」
突然学長の口から飛び出した突拍子もない単語に、数々の質問を堰き止めていた私もとうとう堪えきれず、ぽかんと問い返していた。
“悪魔”とは、あの悪魔だろうか。歴史書や伝承にたびたび登場する、“天使”に相対する種族。
“悪魔”はとうに絶滅したと伝えられている。それとも、何らかの比喩……?
「……あの、“悪魔”、とは……?」
「“悪魔”は“悪魔”だよ。君もそのうち理解る。他に質問は?」
「…………、いえ、ありません」
「よろしい。では、よろしく頼む」
学長はどこからともなく書類の束を取り出して、再び印を押す作業に没頭し始めた。
退出しろという無言の圧に負けた私は、しぶしぶ拳銃を取り腰を折って一礼し、学長室を後にするより他なかった。
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