私たちの家族のもとに来てくれた存在
生きているのが、不思議だなあと、思ったことはあったけど、
本当に感じたことはなかった
わたしのお家に、10年前に来てくれた新しい家族
真っ黒の豆柴
はじめは、少しやんちゃだったり、
頭を振ったりする癖があったので、
「てんかん」かも、と言われたりして、家族は心配していた
てんかんはなかった。
やんちゃは、赤ちゃん時代の幻だった。
いつからか、彼は、
家族のそばにそっと寄り添うようになった
しつけも皆で、
ペットボトルに小豆を入れて落としたり、
食べているご飯のお皿に手を添えたり
手からおやつを積極的にあげたり、
だからかな、
ほえない、噛まない
穏やかな犬になった
彼がそばで、静かに呼吸していることが、当たり前で
そばにいてくれることが、当たり前で
手を差し出すと、少し下がられて、抱っこできないのが当たり前で
そんな存在が、今目に見えないのが、不思議だ
彼が旅立つその朝
4時だったけど、夜が明けた
彼は静かに息を引き取り、わたしは窓を開けた
清々しい空気が、部屋の中を澄み渡り、
静かで 優しい 空間の中に、私たち家族がいた
今この瞬間にまでいた存在が、
この小さなからだの中からどこに抜けていったのだろうか
まだ、不思議でならない。