ミュートイド・マン インタビュー
2018年1月、スリープに帯同する形で初来日を果たしたミュートイド・マン(※なお、この時は諸事情によりニック・ケイジャーオが日本まで来られず、サム・ブロッズキーがピンチヒッターを務めた)。ケイヴ・インのスティーヴン・ブロッズキーと、コンヴァージのベン・コラーという2人の天才ミュージシャンによって結成されたが、そこにセイント・ヴァイタスというクラブのスタッフだったニックが参加したことで、スティーヴンとベンのそれまでのキャリアでは目立ってこなかったエンターテイナー的な資質が開花、以前からの2人のファンにとっても意外な独自性を発揮し始めた。それは往年のヘヴィメタルがそなえていた、ある種のバカバカしさみたいな部分を、パロディとかではなく真面目に再現し、かつカッコよく聴かせてしまうというところに到達している。下記のインタビューでも語られている通り、マーティ・フリードマンも彼らのことを気に入っていて、この取材が行なわれた当日のヘッドライナー・ショウでは、シークレット・ゲストとして登場した。なおマーティは、海外音楽メディアの年間ベストなどで高い評価を得たアルバム『ウォー・モーンズ』(2017)にも参加している。
インタビューもライヴも楽しさ満点の内容だったこともあり、その数ヶ月後にケイヴ・インのケイラブ・スコフィールドに起きた痛ましい事故のことが未だに信じられないが、ミュートイド・マンは今後もいっそう活躍していくことになるはずだ。
通訳・翻訳:竹澤彩子
「《パーティ・メタル》と呼ばれることに異存なし!」
●まず最初に、今日までの初来日ツアー2公演の感想を聞かせてください。
ベン「最高だね! スケジュール的にはちょっとハードだけど、ライヴはマジで最高、スリープも最高だし。めちゃくちゃ気持ちのいい人たちなんだ。東京のライヴはソールド・アウトしたんだよね」
スティーヴン「そう。大阪のライヴもよかった」
●スリープがヘッドライナーとはいえ、みんなミュートイド・マンの演奏時にも盛り上がっていたと思いましたが、特にやりにくかったりとかはしなかったでしょうか?
スティーヴン「いや、それはないよ。ミュートイド・マンとして初の日本公演になるんだし、このバンドのエネルギーをまるごと体感してもらいたいから、普段通りに全力投球で臨んでる」
●では、今回の来日でベースを担当しているメンバーを紹介してくれますか?
スティーヴン「サムだよ」
サム「よろしくお願いします(笑)」
●今回のツアーでベースを任されることになったいきさつは?
サム「もともとサウンド担当だったんだんだけど、この日本ツアーの2日前になっていきなり『ベース弾ける?』って聞かれて、とりあえず10曲だけ速攻で覚えたんだ(笑)。マジでクレイジーだったな(笑)。ただ、このバンドが最初にデモとか作ってた頃から、スタッフとしてバンドに関わってたんで、決して楽だったとは言わないけど、とりあえず曲を弾けるくらいまでは何とかできた。『え、マジ? 俺エラくない!?』って、自分の才能に驚いてるよ(笑)」
スティーヴン「いや、これだけ短期間で、このバンドの曲をマスターできる人間は他にいないでしょ(笑)。ちなみにサムはミーク・イズ・マーダーっていうバンドでもプレイしてて、そっちではもっと小洒落た感じだから、ミュートイド・マン仕様に頭の構造を切り替えるために、今も脳味噌がフル回転してるんじゃないかな(笑)」
サム「いや、マジで頭のどっかおかしくなってるはず(笑)」
●参加はあくまで一時的なもの?
サム「まあ、とりあえずね」
スティーヴン「そう、今回は穴埋めみたいな形で協力してもらってる」
●さて、昨日のライヴはすごく楽しくて、コンヴァージやケイヴ・インとはまた違う、ハッピーなヴァイヴを感じたんですが、これはどういうふうにして生まれてきたものですか?
ベン「意識してハッピーな感じを出そうってわけじゃないんだけど、やってて楽しい曲が多いんで、ついライヴも笑顔になっちゃうんだよね。『よっしゃあ、パーティ・バンドとしてやったるで!!』とかじゃないし(笑)。ただ、ライヴでヴァン・ヘイレンの曲をやるからには、どうしたってパーティ・モードになるわけで(笑)」
●ライヴを観た日本のオーディエンスからは「パーティ・メタル」なんて形容されてたんですが、本人的にも納得できる感じ?
スティーヴン「いいジャンル名だね(笑)」
サム「てか、最高じゃん(笑)」
ベン「自分としては異存なしだね(笑)。あと、こないだの公演はオープニング・アクトだったから、いつもより余計に前のめりで観客へアピールしていかなきゃと思ったんだ。基本、自分達はエンターテイナーで、客を楽しませてナンボだと思ってるから。それは自分達の得意とするところでもあるしね。もちろん、演奏もしっかりやるけどさ(笑)」
スティーヴン「パーティ・モードでやったほうが、自分達もノリやすいってのもある。お客さんもライヴに参加して、みんなで一緒に場を盛り上げてるんだっていう空気を作っていきたいからね。誰か1人でもつまんなそうにしてたり、途中で居眠りしたりしないようにさ(笑)。うちのライヴは全員参加型が基本なんだ」
●地元では『Two Minutes to Late Night』というお笑い番組にも出演してますが、そういうのをやってるうちに面白いカラーが出てきたんですかね。それとも前からこういう表現をやってみたい気持ちがあったんですか?
ベン「確かにあの番組がきっかけで、もうちょっと気楽に楽しんでもらうのもアリなんじゃない?って思えるようになったってのはある。番組のプロデューサーは、グウォルサニオ・ホールって名前で出演もしてるジョーダン・オールズってやつなんだけど、天才的なコメディアンでありミュージシャンだから、彼の影響で、いい意味で肩の力が抜けてアホになれたんだろうね。あの番組のエネルギーやいい雰囲気のヴァイブレーションをライヴでも実践してる感じかな」
●昨日のライヴでは、キング・クリムゾンとアニマルズとレッド・ツェッペリンをカバーしていて、しかもわりとベタな選曲だったと思うんですが、そういうのも観客を盛り上げるためにあえてそうしてるのかって気がしました。
スティーヴン「アニマルズの曲("悲しき願い"。オリジナルはニーナ・シモン)は、もともと何年か前ベンといっしょに、ある結婚式の披露宴で演奏するために覚えたんだよね。その結婚式で使う曲のセットリストを全部決めさせてもらってさ。アニマルズもあの曲も好きだったし」
サム「結婚式のときにも昨日ぐらいヘヴィな演奏でやったのかい(笑)?」
スティーヴン「まあ、基本のエネルギーと濃さはそのままに、甘さをちょい足ししたくらいの感じで(笑)」
ベン「最初の作品にも入れたしね(※『Helium Head』のボーナス・トラック"The Manimals")。最初は完全にジョークのつもりだったから、あの曲をライヴでやるとか、ましてやアルバムに入れるとか思ってなかった。やり始めた時には、こうなること自体、全然想像してなかったし。ただ、たまたまあの曲をミュートイド・マン流の超ド級のヘヴィ・スタイルでやってみたら見事にハマったんで、それがそもそものきっかけだったんだ」
●ツェッペリンとクリムゾンに関しては?
ベン「ものすごい影響を受けてるバンドだから、敬意を表してさ。キング・クリムゾンを聴いたことのないキッズもいるだろうから……まあ、ツェッペリンに関しては、聴いたことない人がいるなんて俺には想像つかないけど(笑)、万が一聴いたことない人がいたら遡ってチェックできるようにってね。もともと60年代のプログレッシヴ・ロックとかクラシック・ロックとかサイケとか山ほど聴いてきた人間なんだ。もちろん、スレイヤーやメタリカみたいな王道メタルや、もっと最近の音楽からも影響を受けてるし、自分達が影響を受けた音楽を余すとこなく網羅しようって思ってる」
●なるほど。『Two Minutes to Late Night』の撮影場所にもなっている、ニューヨークのブルックリンにあるセイント・ヴァイタス・バーは、現在はミュートイド・マンのホームとも言えそうな場所ですが、このヴェニューの魅力はどんなところですか?
スティーヴン「うん、ここ何年かすごく世話になってるよ。ニックと出会ったのもこの場所で、もともと彼はサウンド・スタッフだったんだ。こうして正式なバンドになる前から、ベンと2人で今もミュートイド・マンでやってるような曲を2ピース形式でライヴでプレイしててねーーちなみに当時のプロジェクト名はnarcotic beagle(ラリったビーグル)だった(笑)」
●最初に2人きりで始めた時は、こんな風に日本まで来るようなツアーをすることになると思ってましたか?
ベン「いや、まったく(笑)」
スティーヴン「そもそもバンドになるとすら思ってなかった。ベンのアイディアだったんじゃなかったっけ? 僕はもともと複数のレコーディング・プロジェクトを抱えてるんで、当初はそのうちのひとつのつもりだったんだけど、幸い立派なバンドの形にまで成長してね(笑)。ベースのニックが色々と奔走してくれて、それもあってセイント・ヴァイタス・バーとの縁が深くなったんだ。ミュートイド・マンとして初ライヴをした会場でもあるし。でまあ、何年かセイント・ヴァイタスでリハーサルを重ねてきて、『ウォー・モーンズ』の曲もほぼそこで書いてるんだけど、ライヴ会場をそのままリハーサル場所にできるって物凄い贅沢だよね。壁ひとつ挟んだ隣で別のバンドが練習してることもないし、サウンドも照明もPAも揃ってるし、まさにステージ上で曲を作ってるようなものでさ。それって確実に曲自体にも影響してるはずだよ。ステージで演奏する感覚のまま曲を作ってるわけだから」
「考えないでただやる、余計なことは考えない(笑)」
●それにしてもベンは、昨年(2017年)にはコンヴァージやオール・ピッグス・マスト・ダイの作品でも年間チャートに入ってたりして、本当に大丈夫かと思うほどの忙しさだと思うのですが、どうやってこなしているんですか?
ベン「考えないでただやる(笑)、余計なことは考えない(笑)。もともと好きでやってることだし。やるからには出来る限りのことをしたいし。それにしても、自分でもどうなってんだ?とは思うけどね(笑)」
スティーヴン「絶対もう1人クローンがいるんだよ(笑)。もう1人のクローンが影武者的に働いてるんだ(笑)」
●(笑)ライヴで特に表れているハッピーなヴァイヴに関しては、近年のメタル・シーンで見られる実験的でちょっと気取ったような、小難しいイメージのバンドに対する反発だったりもするんでしょうか?
ベン「意識的ではないかもしれないけど、そういう見方もできるのかも。バンドがステージ上で複雑なリフを弾くのに必死で、客に見向きもしないようだったら、何のためのライヴなのかわかんないしさ。レコーディングするにしたって、1パートにどれだけのリフを詰め込めるか考えるよりも、普通に曲作りに集中したいね。早弾きにしたって、確かに感心はするけど、行き過ぎると自己満足っていうか、あえて名前をつけるなら“ベッドルーム・メタル”みたいな感じ?(笑) それは俺たちが目指してる方向とはちょっと違うんだ。うちはどちらか言うと、メタリカやスレイヤーの直系というか、テクニックを競い合うより曲に重点を置いていて、良い曲を作り、それをライヴで演奏して、とことん楽しむっていうね。ステージでも自由に動き回ったり、腕を振り回したり、アドレナリン全開で盛り上がっていきたいな。客が笑顔になると、こっちも笑顔になるし、1分間に何音弾けるかよりも、ライヴではとりあえずハメを外して楽しみたい。超難解なリフを早弾きしながら、ハメ外そうったってできないから(笑)」
●たとえば、"Bandages"のような曲は、ミスター・ビッグやヴァン・ヘイレンを意識したパワー・バラードだそうですね。別に「大衆の人気を得たい」とか「お金を儲けたい」と思っているわけではないのに、こういう親しみやすい曲ができてくるというのが興味深いと思いました。
ベン「もともとメロディ・センスに長けてるうえに、これだけイケメン揃いのバンドなんでね(笑)、世間が放っておかないわけがない(笑)。スティーヴン目当ての美女軍団が(笑)。いや、今のは冗談(笑)。正直わかんないけど、でもモトリー・クルーの"Without You"とか大好きだし。あとウォレントの"Heaven"とか」
スティーヴン「オー、ゴッド!!(笑)」
ベン「もともと好きだから、常にそういう曲のイメージが頭の中にあるわけ。あと長年ケイヴ・インのファンである自分からしたら、"Bandages"なんか、まさにケイヴ・インって感じだよ。まあ、あのちょっとイかれたギター・ソロの印象とかで、ケイヴ・インよりメロディが目立ってる感があるのかもしれないけど、『ケイヴ・インの曲だ』って言われても普通に納得するだろ。だから、それまで自分達のやってきた音楽からそこまで飛躍したって感じもしてないんだ」
スティーヴン「まあ、パクるならまずは自分達のバンドから、みたいな(笑)。ある意味、エコでリサイクルなんだよ(笑)」
●(笑)マーティ・フリードマンも、ミュートイド・マンのそうした要素に惹かれてファンになったのだと想像します。そもそも彼が新作でゲスト参加することになった具体的な経緯を教えてもらえますか?
ベン「アメリカをツアーしてて、セントルイスの会場にいた時、ちょうど翌週だかにマーティが同じ場所でやることを知って、滅多にない機会だし、万が一奇跡が起こって彼に聴いてもらえるかもしれないと望みをかけて、ダメ元でマーティ宛のCDを会場に残しておいたら、本当に奇跡が起こって、実際に俺達の置いてったCDを彼が手にとって聴いてくれたんだ(笑)」
サム「普通に考えて、それってマジでラッキーじゃない?」
ベン「そう。で、しかも『ミュートイド・マン、マジでヤバい最高!!』ってツイートしてくれてさあ。もう1ヶ月ぐらい経ってたから、そのこと自体完全に忘れてて、マーティンのツイート見て『マジかーっ!?』てなったよ。そしたらセイント・ヴァイタスに彼のマネージャーから連絡があって、ちょうど最新作のレコーディングが終盤に入っていて、共演するバンドを探してるとかで、俺達に声がかかったってわけ。その縁で『ウォー・モーンズ』の方でも彼にソロを弾いてもらえることになってさ。かつてメタル・キッズだった自分にとってはまさに夢のような話だよ(笑)」
●いい話じゃないですか! ちなみに、今夜のライヴでは何かスペシャルが期待できるんですかね?
スティーヴン「ふふふ。まあ、見てのお楽しみってことで。できるだけのことはするけど(笑)」
ベン「そう、一応スペシャルなものにしたいとは思ってるよ(笑)。まあ、当然そうだよな(笑)」
●期待してます。で、そういう楽しい感じのライヴをやりつつ、アルバムのテーマは変態的と言いますか、スティーヴン自身も「Perverted」と形容してますけれども、戦争とか性欲といった題材を扱っていますよね。このコンセプトはどのように着想されたものなのでしょう。
スティーヴン「最近のヘヴィ・ミュージックに欠けてる要素な気がしてね。自分の中の変態性にあえてフォーカスし、ロックンロールやヘヴィ・ミュージックっていう形へ昇華させるというか……しかも、それを思いっきりベタな感じでやるっていうのがポイント。最新作は、歌詞の面でもかなり勝負してるんじゃないかな。今時こういうテーマを大っぴらに取り上げるバンドは滅多にいないからさ。今回のアルバムを作るにあたって、ミュートイド・マンにとって次のステップは何か、このバンドが新たに挑戦できることは何なのか?ってことを考えてたんだ。いや、なかなか面白い試みだったよ。歌詞についても前より3人いっしょに書くことが増えてきてるんだ。まあ想像つくだろうけど、野郎3人が集まったら当然のことながらエロ話が始まるわけで(笑)。10代のガキのバカバカしいエネルギーと発想が炸裂してて、それがまためちゃくちゃ楽しいんだよ(笑)」
ベン「俺なんて、ここ21年間16歳をやってるようなもんだ(笑)。まさに自然体っていう(笑)」
●そんな最新作『ウォー・モーンズ』は、様々なメディアの2017年ベスト・アルバム記事で軒並み高評価を得ましたが、そうしたリアクションについてはどう感じましたか?
ベン「最高の気分だね。めっちゃテンション上がる。これまで一歩一歩積み重ねてきたものが、ここに来て新たなレベルに突入したというか、作品を出すごとにファンを増やしてるし。できればこのままの勢いで、バンドとしてもクリエイティヴな面でも成長し続けたい」
●ちなみに、"Sweet Ivy"という曲が、テレビゲームの音楽をもとに作られたというのは本当ですか?
スティーヴン「確か『魂斗羅』っていうゲームのBGMにインスパイアされて作り始めた曲じゃなかったっけ……そんな気がする。そこからちょっと拝借して」
ベン「近視眼的に見れば、メロディが若干似てるという見方もありっちゃありなのかもしれないけど、そこはコナミに訴えられないように(笑)きちんと作り替えてるんで、今では堂々とあれは俺達のもんだと主張できるよ(笑)」
●それから、Boris、FRIENDSHIP、Nepenthesなど、対バンした日本のバンドについても感想を聞かせてください。
ベン「今まで共演した日本のバンドは全部好きだ。過去に共演したenvyとかBREAKfASTとかも最高だったし、Borisにしろ、Nepenthesにしろ、FRIENDSHIPにしろ。みんなマジで最高だと思う」
サム「スティーヴンは今回、Borisのステージにゲストで参加してたよね」
スティーヴン「あれはマジ最高だった!!」
●ありがとうございます。そういえば、来週クイックサンドのウォルターがちょうどこの新代田フィーバーで別バンド(デッド・ヘヴンズ)でプレイする予定なんです。スティーヴンは、クイックサンドとフェイリュアーがフェイバリット・バンドですけど、彼らの復活作について感想を聞かせてくれますか。
スティーヴン「すごくいいね。『Interiors』の1曲目、"Illuminant"って曲とか、クイックサンド史上最高傑作だと思う。実は、クイックサンドのジャムにも参加させてもらってるんだ。彼らがセカンド・ギターを入れるか入れないか迷っていて、一度ジャムに呼ばれたんだよ。『まあ、とりあえず3〜4曲適当に練習してきて』って言われたんだけど、気づいたら10曲だか12曲だか弾けるようになっててさ(笑)。あと、さっき言った"Illuminant"もアルバムが出る前から聴かせてもらって、あの曲のジャムにも参加させてもらったから、発売前からアルバムの試聴盤を聴けたような感じで、あれは自分にとっての特別な経験だった。クイックサンドは長年自分にとって相当思い入れのあるバンドだし、まさか一緒にジャムさせてもらえるなんてね」
●じゃあ、フェイリュアーについては?
スティーヴン「『The Heart Is a Monster』で自分が気に入ってる曲は、フェイリュアーがバンド結成時に作ったっていう大昔の曲で、それを今のモダンな設定にアレンジし直してるやつ。曲のタイトルは忘れちゃったけど(※おそらく"Petting The Carpet")、それが今回のアルバムでいちばん好きな曲だ。ファースト『Comfort』のエネルギーが蘇ってくるようでね。あと『Fantastic Planet』 をフルセットで演奏してるライヴも観たけど、大好きなアルバムだったから感無量だったなあ……いまだに現役で活動してるのが嬉しいし、励みになるよ」
●わかりました。ところで、ライヴでのセッティングを、特にミュートイド・マン用に、コンヴァージやケイヴ・インとは変えたりしていますか?
ベン「いや、俺は基本的に同じ」
スティーヴ「僕は、ケイヴ・インじゃ使わないペダルを入れたりはしてる。スーパーシフターっていう、ワーミー・ペダルっぽいっていうか、ワーミー・バーみたいな効果を出すためのやつをね。逆にケイヴ・インではサンプラー・ペダルを使ったけど、ミュートイドマンでは一切使ってないし。ただ、サンプラー以外はほとんど同じかな。あ、ギターも変えてるね。ケイヴ・インではギブソンとかギルドを使ってるけど、ミュートイド・マンはフライングVとか、派手めの感じにしてる。ケイヴ・インではゴツい質感を出すためにギブソンあたりがいいんだ。ただ、それ以外ほとんど変わらないよ」
●ベンは、同じドラムセットでも、前に座ったら自然に頭の中でスイッチが切り替わるって感じなんですか。
ベン「そうだね、同じステージで、違うバンドの曲を交互に演奏するとかだったら、さすがに混乱するだろうけど(笑)、そうでなければ普通に切り替わるし、自分でもライヴ前に気持ちを集中するから。2日後に今回のツアーが一段落したら、即コンヴァージのモードに切り替えないと(笑)」
サム「自分も見習わないとなあ、てか、良い脳トレになりそう(笑)」
●ベンは、この後しばらくコンヴァージのツアーですが、ミュートイド・マンとしての今後の予定は?
ベン「しばらく『Two Minutes to Late Night』の新作エピソードの撮影が何本か控えてて、それに何ヶ月かかかるのと、あとロードバーン・フェスを皮切りにアメリカのフェスに参戦しつつ、ついでに他の国のフェスやツアーにも参加したいし、そのまま年末ぐらいまでいったら、その後どうなってるのかはその時になってからのお楽しみって感じ。とりあえず今のままツアーを続けて曲を書き続けていくとは思うけど」
●スティーヴンは、ケイヴ・インで何か動きがあったりしないのですか?
スティーヴン「うん、ケイヴ・インでも何度か集まってリハーサルはしてるんで、今年1年かけてそういう作業を繰り返していくことになるんじゃないかな。メンバー全員のスケジュールが許す限りはそうしたいと思ってる。とりあえず今のところ出来上がってる曲はかなり好感触なんで、すごく楽しみだよ」