HIGASHI TOKIO RIOT PART4
事実を事実のまま 完全に再現することは
いかにおもしろおかしい
架空の物語を生み出すよりも
はるかに困難である
(アーネスト・ヘミングウェイ)
これは事実談であり……この男(MUNE)は実在するッ!!
ダビングは負けた気がする
―まわりにオナッターズファンはいなかったですか?
MUNE いなかったですね。「グッドモーニング」は世界でいちばん早い朝の番組っていう設定で、夜中の12時半くらいからやってたんですよ。てん・ぱい・ぽん・ちん体操とかあって大好きでした。毎週録画してて。
―昔はビデオテープが高価でした…。
MUNE 生テープを買わなきゃいけなくて、そこに小遣いを費やす時期もありましたね。そういうのって自分の中では普通だったんですけど、いま考えると他のみんなとは違ってたのかもなと思います。
―LPとか「買いたいけど買えない、でも聞きたい」みたいながあるときは、友だちに借りてダビングしたりですか?
MUNE 手に入れなきゃイヤなんですよ。ダビングって負けた感じするじゃないですか。逆にダビングさせてあげるのが好きなんですよ。
―当時からのこだわりというか。
MUNE 昔、ビデオデッキを2台買ったときに、ダビングして、ラベルを本物そっくりに手書きして作ったことがあるんですけど、やっぱり本物が欲しいんですよ。でも当時は、ビデオソフトって15,000円ぐらいしたんで買えなかったんですよね。「アンタッチャブル」がビデオ化された時に、CICビクターがブロックバスターシリーズっていって、ちょっと安く売ったんですよ。「トップガン」とか。それが9,800円ぐらい。
―9,800円!
MUNE それでも衝撃の値段だったんですよ。「ああ、これは絶対買いたい」って。「アンタッチャブル」観に行って、すごい面白かったから「これは絶対手に入れたい」って買ったのがはじめてパッケージの映画を買った瞬間ですね。そこから、とにかくパッケージのビデオが欲しくなっちゃったんですよ。
―1本買ってしまうと。
MUNE そうなんですよ。隣町でどうやらレンタルアップ品が3,000円くらいで売ってるって聞いたら、すぐ買いに行って。欲しくもない「ビバリーヒルズコップ2」とか買いましたもん。
―アハハハハ!
MUNE あとはジョン・カーペンター(製作総指揮)の「ブラックライダー」とか、とんでもないB級とかでも安けりゃ買ってましたね。
―パッケージを集めるのが面白くて。
MUNE そうそうそう。その辺の価格の流れを変えたのが大陸書房で。よくわからないB級映画みたいなのを何本も買いましたね。「ビデオを買う時代、セルビデオの時代が来た!」 みたいな感じで。
―収集癖みたいなのがあるんですかね。
MUNE そうです、完全に。
―実際に映画を観るのも好きだけど、パッケージを並べてご覧になるのも好きなんですか?
MUNE そうなんです。雑誌とかもそうですね。コロコロとかも買ったらガーッと並べて眺めるのが好きなんですよ。これから出るあっちは無限に並べられるけど、自分が買い集めたこっちにないやつを探しに行ったりとか。
―レコードやカセットのレンタル屋はもう東京にはあったんですか。
MUNE 「友&愛」っていうグループがあって、そこで借りてダビングしてる友だちはいっぱいいましたよ。でも、俺はそこには乗れなかったんですよね。
―やっぱりダビングは違うんじゃないかと。
MUNE 会員証つくったりとか、傷つけちゃいけないとかそういういろんなものが、何かちょっとハードルがあって。あと、手に入れられない訳じゃないですか。
―結局は返しちゃうことになりますね。
MUNE それがイヤだったというか。やっぱりジャケット込みで欲しいんですよ。
―あんまりレンタルにはハマらずで。
MUNE そうですね。
―それよりはお金を貯めてでも欲しいものを買うというか。
MUNE そうなんですよ。そこは今でも変わってないですね。映画とかでも「今度DVD貸しますよ」とか言われると、「いや、買うから大丈夫ですよ」とかなりますね。
―それは作品に対するリスペクトもあるというか。
MUNE それはありますね。
テレビは9時からがおもしろい
―欽ちゃんの他にテレビはどんな番組をご覧になってたんですか?
MUNE ベストテン、トップテンは絶対見てました。明星、平凡が好きで、歌本が付いてるんですよね。あれを見ながら歌番組を見て。みんながよく言う「テレビの前にラジカセ置いて録音」もやってましたよ。アルフィーも好きで「スターシップ」とか聞いてましたね。あとはチェッカーズも好きでした。C-C-Bはノれなかったな。髪をへんな色にするのが好きになれなかった(笑)。
―C-C-Bといえば「毎度おさわがせします」の主題歌で。
MUNE 見てました見てました。エロは早熟でした(笑)。あと、金曜は8時のプロレスからの流れで、9時からハングマン、10時から仕事人なんですよ。プロレスがはじまる前は日テレで「カックラキン大放送」を見てましたね。
―カックラキンは最高でした。
MUNE ゴロンボとか車だん吉とかね。大好きでしたよ。
―金曜は忙しいですね(笑)。
MUNE ハングマンにまずハマった後、寝れなくて仕事人を見てたら、面白さに気づいて。うちの親父は時代劇大好きなんですけど、原理主義者だから「仕事人なんてあんなもん漫画だ」って、断固として見なかったんですよ。「暴れん坊将軍」とか「水戸黄門」は大好きなんだけど、仕事人だけ認めないんです。
―何か違うんでしょうかね。
MUNE 道具を使ってやっつけるみたいなのが、イヤなんでしょうね。「そんな訳ねえだろ」みたいな。骨をはずしたりとか。
―それが漫画だと(笑)。
MUNE 俺はそれがもうたまんなくて(笑)。ハングマンと仕事人にハマって、オープニングの口上を覚えて友だちと言い合ったりして。
―学校の教室で。
MUNE やってましたよ。俺が見てた時は、ハングマンは名高達郎時代かな。仕事人は「飾職人の秀」とか、みんな好きな「念仏の鉄」とかあの辺は見てなくて、京本政樹とか村上弘明とか出てきてからが好きなんですよ。
―仕事人は夜遅いから小学生は見てないですね。
MUNE 夜10時ですね。10時ってギリギリのラインで、そこでテレビを見てるか見てないかで、だいぶ差がつきましたね、学校で。
―アハハハハ!
MUNE ウィークエンダーを見てるか見てないかで、だいぶ差がつきました。
―ウィークエンダーご覧になってましたか。
MUNE 見てましたね。うちの母ちゃんが大好きで。
―そこからもう少し深い時間に行くと、11PMになるんですよね。
MUNE そうですそうです。中学くらいの時は11PMよく見てましたね。11PMってエロい番組って思われがちですけど、実はぜんぜん違くて、ちょっと前衛的なアートとか音楽とか映画を紹介する番組なんですよね。それでだいぶいろんなものが養われましたね。
―エロ目当てで見たら、うっかりかしこくなってしまうような。
MUNE 親からテレビをあんまり規制をされなかったのはよかったのかなって。小学5年くらいから自分の部屋にテレビがあったんですよ。だからこっそり見ることは可能だったんです。
―それは大きいですよ。
MUNE そういうのが今につながってんのかなって思いますね。他の友だちが「夜9時には寝ちゃうよ」って言うのを聞くと、びっくりしてましたよ。「マジで?」って。「何も見れないじゃん」みたいな。
―そこからが本番じゃないかと。
MUNE テレビは9時から面白くなるんだよって(笑)。夕方の6時台って東京でもいろんな再放送してたりして、みんなテレビを見るんだけど、その時に俺は本屋に行って情報を仕入れてたから、ちょっと違うんですよね。
―テレビを見る活動の時間帯が。
MUNE 本屋で同級生の誰とも会ったことないですね。あと、パーマ屋だから、週刊誌を待合室に用意しなきゃなくて、そのお使いを頼まれてて。今日は「週刊女性」が発売日だから、「女性セブン」が発売日だから行って来いって言われて。買ってくるとお釣りをもらえるんですよ。
―その女性週刊誌は読んだりしなかったんですか?
MUNE 読みましたね(笑)。
―それも大きいと思うんですよ。
MUNE かもしれないですね。ゴシップとか(笑)。
―テレビにも出ないような下世話な話が満載じゃないですか。
MUNE そうなんですよ。たまに売り切れてたりしてた時に、間違って「微笑」とか買っちゃって。同じところに置いてあるから、同じかなと思ったら、あれはすごいエロいんですよね(笑)。
―毎日忙しいですね。テレビ見て、雑誌読んで(笑)。
MUNE そうですね。こどもらしいこどもじゃなかったかもしれないな(笑)。
―合間に泥だらけになって野球もやるわけじゃないですか。
MUNE それもやりつつでしたね。みんな5時で終わらせて帰るじゃないですか。そこを帰らずに、泥だらけで本屋に行ってましたね(笑)。
<HIGASHI TOKYO RIOT PART5へつづく>