HIGASHI TOKIO RIOT PART3
事実を事実のまま 完全に再現することは
いかにおもしろおかしい
架空の物語を生み出すよりも
はるかに困難である
(アーネスト・ヘミングウェイ)
これは事実談であり……この男(MUNE)は実在するッ!!
誰かに教えてもらうのが嫌い
―小さい頃によく見てたテレビとかありますか?
MUNE こども番組でいちばん好きだったのは特撮なんですよ。特撮って今でこそ、ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊ってなっちゃったじゃないですか。当時はいろんな局がいろんなヒーローを誕生させてたんですよ。
―いろいろありましたね(笑)。
MUNE それがモロにハマって。敵が誰とかそういうのは知ってるんだけど、実際ぜんぶは見れてないんですよ。大人になって見返すんですけど。
―当時は時間が合わなければ見られないですよね。
MUNE そうなんですよ。だからがっつり見てたのは、それこそ(快傑)ズバットとか、忍者キャプターとかその辺なんですよね。スパイダーマンとか。
―東映版の。
MUNE そうです。小学校低学年の頃、仮面ライダーとウルトラマンが作られてない期間があって、ちょっとさびしい思いをしてて。仮面ライダー大全科か大百科みたいな本に、ストロンガーの最終回が描いてあるんですよ。フィルムみたいな感じでコマが描いてあって、それを何度も何度も見てましたね。スカイライダーで復活するまで、そんなんばっかりずっと見てました。
―ストロンガーからスカイライダーまで4年間空いてますね。
MUNE ウルトラマンも80が出てくるまで、それくらいあった気がしますね。アニメのザ・ウルトラマンがあったりとか。レオからちょっと期間があるんですよ。
―アニメはご覧になってました?
MUNE アニメとかは正直ぜんぜん乗れなかったですね。小さい時にマジンガーZとかコンバトラーVとかめちゃめちゃ見てたんですけど、だんだんとアニメの感じが苦手になってきて。それこそハウスの「世界名作劇場」とか「まんが日本昔ばなし」とかそういうのしか見てなかったです。アニメ見てないくせに「アニメディア」とか「アニメージュ」は読んでたんですよ。人より知識で劣りたくなかったんですね(笑)。
―聞かれて「知らない」とは言いたくないというか。
MUNE そうそうそう。で、なぜか、小学校高学年で学級新聞の委員になったんです。自分が編集長なもんだから、アニメとかの最新情報を載せてましたね。完全に「アニメージュ」から転載してるだけでしたけど(笑)。
―雑誌を読んでないアニメ好きの子からしたら、学級新聞に衝撃的な情報が載ってるという(笑)。
MUNE そうそう、最新ニュースが。あと4コマ漫画のサイクロプスくんっていうのを連載してました。妖怪とか怪物が好きだったんで。
―情報収集活動はひとりでやってたんですか?
MUNE ひとりです。誰かに教えてもらうのが嫌いなんですよ。自分が知識では1位になりたいんです。
―調べるにしても誰かに聞くのではなくて手さぐりで。
MUNE 本屋にめっちゃ通ってましたね。毎日行ってたかもしれない。家の近所にちょっとでかめの本屋があったんで。遊びの解散時刻って5時くらいじゃないですか。
―そうですね。街にサイレンみたいなのが鳴って。
MUNE うちのパーマ屋が6時までなんですよ。だから、その1時間の間に必ず本屋に行って帰ってくるみたいな。
―その1時間が貴重な情報収集の時間で。
MUNE そうそうそう。だからあらゆる本を読んでましたね。
レコードを集めはじめる
ーそういう感じの小学生でしたか。
MUNE 特撮、アニメは通って、普通にドリフとかも好きだったし。
―ドリフ禁止とかではなかったですか?
MUNE ぜんぜん。あ、欽ちゃんすごい好きでしたね。
―欽ちゃん! いちばん最初にご覧になったのは何でした?
MUNE オールスター家族対抗歌合戦ですね。うちの母ちゃんが好きでよく見てました。欽ドンの「良い子悪い子普通の子」がはじまって、そこでどハマりしてって感じですね。イモ欽トリオは小3とか小4だった気がするなあ。あと小学校2年くらいのときに、はじめてレコード買ったんですよ。
―何のレコードですか?
MUNE マッチの「スニーカーぶるーす」。姉ちゃんが1コ上なんですけど、姉ちゃんがマッチのファンになって明星とか平凡を買うんですよ。それをいっしょに見てたりとかして。そうするとレコードが欲しくなるんですよ。
―テレビの歌番組を見るだけでは物足りなくなって。
MUNE そうそう。レコードというものに興味をもって「シングルを買いたい」っていう欲が出てきて。みんなが「おもちゃを買いたい」っていうところをレコードになってましたね、小2の頃には。
―ソフビとかではなくて。
MUNE そうです、小2のときはレコードでした。マッチを買ったあとは、横浜銀蝿のシングルも買ったし、掛布の応援歌も買ったし。「GO!GO!掛布」って。最初、甲子園の応援が入るんですよ。「4番サード、掛布」って(笑)。シングルを集めるっていうか、買い足していくのが好きになって。もちろんイモ欽トリオも買いましたし、わらべも買ったし。風見慎吾も買いましたね。
―欽ちゃんファミリー(笑)。「スニーカーぶるーす」を買った後も、アイドルは続いたんですか?
MUNE シブがき隊は買いましたね。「Gジャンブルース」かな。
―女性アイドルは買わなかったんですか?
MUNE 小泉今日子はLP買いましたね。「Betty」っていう。
―あの頃、LPって3000円くらいじゃないですか。こどもからしたら大金ですよね。
MUNE そうなんですよ。お年玉とか貯めて。あと、菊池桃子が出てきた時は、そのかわいさに衝撃を受けてすぐアルバム買いましたよ。「OCEAN SIDE」っていう。背泳ぎしてるようなジャケットがあるんですけど(笑)。
―衝撃でしたか(笑)。
MUNE 衝撃でしたね。「パンツの穴」も観に行きました。
深夜番組にハマる
MUNE で、小学校5年か6年ぐらいでビデオ買ってもらったんですよ。
―すごい!
MUNE 友だちん家にマックロードっていうビデオがあって、録画してるジャッキー・チェンをよく見せてくれたんですよ。「ビデオいいなあ、いつでも見れるんだ」ってなって。それで親父に「ビデオ欲しいビデオ欲しい」って言い続けてたら、ある日買って来てくれたんですけど、なんとベータだったんですよ。
―おお!
MUNE すごい性能がいいやつなんですよ。25万くらいするやつで、しゃべるんです。「カセットのツメが折れてます」とか「タイマーセットされていません」とか。
―しゃべるビデオ!
MUNE すごい画質はよかったんだけど、友だちが誰もベータを持ってなかったんですよ(笑)。
―貸し借りができない(笑)。
MUNE テープの時間も短くて、録画もあんまりできないし。ベータは2時間くらいの録画しかできないんだけど、VHSなら3倍で6時間いけて。
―当時はテープも高価だったんですよね。
MUNE そうなんですよ。ビデオを買ってから、深夜にやってる番組に興味が出てきて、エロ番組を見るようになるんですよ。小さい車搭載テレビがある友だちの家にしょっちゅう泊まりにいって「海賊チャンネル」とか見てたんです。そういう番組にあこがれて深夜番組を録画しはじめたんですよ。「オールナイトフジ」とか「ミッドナイトin六本木」っていうのがあって。
―夢のような深夜番組です(笑)。
MUNE 土曜の夜の同じ時間帯に3つエロ番組があったんですよ。あとは、オナッターズが出てた「グッドモーニング」、怪物ランドが出てた「ウソップランド」、とんねるずが出てた「トライアングルブルー」、そういうのを録画して見てましたね。12チャンでやってた「ビックアクションカメラ」ってやつとか。
―聞けば聞くほど最高です!
MUNE 「ビックアクションカメラ」は夢之助が司会で(笑)。それでいろいろ録画してるうちに、オナッターズが超好きになっちゃって、小6で(笑)。
―アハハハハハ!
MUNE オナッターズの「恋のバッキン!」っていうシングルが出て「欲しいな」って思ったんだけど、はずかしさが勝って買えなくて。そしたら、しばらくして出たアルバムのジャケットがものすごくエロいジャケットだったんですよ。ついに誘惑に負けてしまって(笑)。「これはどうにかして手に入れないと」って。
―(画像を見せながら)このアルバムですかね。
MUNE これこれこれ(笑)。「オナッターズのいい気持ち」。これがすごい欲しくてたまんなくて。うちはパーマ屋だから、母親が土日に俺を遊びに連れていくのが無理なんですよ。パーマ屋の大家さんのおばあちゃんがいるんですけど、デパート行くのが大好きで。「デパート行くけど、行く?」って言われて、「あ、行く行く!」ってよくついて行ってたんです。そのときに母ちゃんが「これで雅也に何か買ってあげて」ってお小遣いを持たすんですよ。このアルバムを買うために、それをこつこつと貯めて。
―オナッターズ貯金を(笑)。
MUNE で、浅草の松屋のレコード売り場で発見したんですよ。
―このジャケットは小学生男子には買いづらいですね…。
MUNE だけど、なんとか買って。たぶん顔真っ赤だったろうなあ(笑)。これを買えばシングルもぜんぶ入ってるし、中に写真集みたいなブックレットも入ってるんでネタにもなるっていう(笑)。
―一石二鳥(笑)。
MUNE そうそうそう。
―誰のファンとかあったんですか?
MUNE 小川菜摘が好きでしたね(笑)。三者三様でみんな好きだったんですけど、小川菜摘がいちばんよかったですね。
―無事に買えてよかったです!
MUNE 誰にも見つからないところに隠してましたね。エロ本隠すように(笑)。友だちにもしばらく言ってなかったですね、オナッターズ持ってるっていうことは(笑)。
<HIGASHI TOKYO RIOT PART4へつづく>