角川俳句賞 2021 落選作 プランB 50句
春春昼や糸の尾ながきティーバッグ ハードエッジ
成田フライトインフォメーション地虫出づ ハードエッジ
菜の花や明日ある如く咲き続く ハードエッジ
夏
初夏のガードレールの緑色 ハードエッジ
すでに子ら汗をいとはぬ五月かな ハードエッジ
公園に木の椅子乾く薄暑かな ハードエッジ
新妻の新緑の旅衣かな ハードエッジ
新緑や白と黒なるチェスの駒 ハードエッジ
新緑を虫が好めり鹿も食ふ ハードエッジ
青空も見えて若葉の雨宿り ハードエッジ
梅雨空のグラデーションの濃きところ ハードエッジ
横にして傘をバサバサ梅雨の日々 ハードエッジ
梅雨明けの小学校が乾くなり ハードエッジ
夜明けなり決死の蝉が穴を出づ ハードエッジ
早起にあれもこれもと夏休 ハードエッジ
日盛りの地下水を吸ふ木の根かな ハードエッジ
アスファルトもコンクリートも日の盛り ハードエッジ
炎天をのらりくらりと松が伸び ハードエッジ
腐りつつものの融けゆく暑さかな ハードエッジ
皺腹を掻つ捌きなば涼しかろ ハードエッジ
時もまた滴一滴と滴るよ ハードエッジ
抱きついて汗の笑顔をこすりつけ ハードエッジ
きゆつきゆつとシャワーはいつも全開に ハードエッジ
籐椅子の母に抱かれし古写真 ハードエッジ
うすぐらき蚊帳の昼寝を好みけり ハードエッジ
監獄を襲ひし日なり巴里祭 ハードエッジ
消毒や日焼の腕の脱脂綿 ハードエッジ
秋
弱虫も泣虫も来よ西瓜切る ハードエッジ
夏
お多福型スプーンで食ふアイスかな ハードエッジ
掬ひたるアイスクリーム毛羽立ちぬ ハードエッジ
ぽたぽたの氷菓の棒は急ぐべし ハードエッジ
焼そばの人と相席掻き氷 ハードエッジ
捕虫網幼き兄を先頭に ハードエッジ
土くれを穴から運び出す蟻も ハードエッジ
蚊を殺し尽せし煙明易し ハードエッジ
働いて働き蟻を全うす ハードエッジ
ほんまやなものの五分で蟻たかる ハードエッジ
蓮の花に自壊の兆なかりけり ハードエッジ
向日葵にこれはバールのやうなもの ハードエッジ
地球儀と西日の部屋の全てかな ハードエッジ
夕焼が地下へ沈んでゆくところ ハードエッジ
職業は寺山修司夜店の灯 ハードエッジ
交番に夜の向日葵を諭すなり ハードエッジ
螢火や庭に埋めし宝物 ハードエッジ
命終のぽたりと落る蚊遣の蚊 ハードエッジ
これもまた一夜の命蚊遣の火 ハードエッジ
秋
山奥の清き流れの紅葉かな ハードエッジ
冬
山々のはつきり見ゆる空つ風 ハードエッジ
汗かいてゐる鯛焼の哀れかな ハードエッジ
埋火のありし空間純白す ハードエッジ