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ピューリッツァー賞受賞漫画家アン・テルナエス vs ワシントンポスト騒動まとめ
アメリカの政治風刺漫画について興味深いニュースを知ったので、ツイッター(X)でシェアしたら、想像してたよりも反応がありました(いちばん深くひれ伏すミッキーもいるからだろか😂)。
アメリカの興味深い動き。
— ハラユキ@コミックジャーナリズム研究はじめました。 (@yukky_kk) January 7, 2025
ワシントン・ポスト紙の社員漫画家でピューリッツァー賞作家でもあるアン・テルナエス(Ann Telnaes)が、トランプ像に跪くジェフ・ベゾス(Amazon創設者でワシントン・ポスト現オーナー)らの風刺画(画像はそのラフ)を描いたところ却下され、長年勤めた同社を辞職。→ pic.twitter.com/OXfdta7eN9
騒動の内容はツイートを読んでほしいのですが、この辞職にあたってのアン・テルナエス(Ann Telnaes)さんの声明文「なぜ私はワシントンポストをやめるのか〜民主主義は自由な報道なしに機能しない」(2025年1月4日)がすっごく力強くて、ジャーナリズム的にも興味深いので、以下に記録として翻訳を載せておきます(時間ないのでchromeの自動翻訳で🙇。下のリンクの翻訳で、太字は私がつけたもの)。
私がワシントンポストを辞める理由〜民主主義は報道の自由なしには機能しない
私は2008年からワシントンポスト紙で風刺漫画家として働いています。私が出版のために提出した漫画について、編集者からフィードバックや建設的な話し合い、そして意見の相違もありましたが、その間、私がペンを向けた対象や対象が誰だったかで漫画が却下されたことは一度もありません。今までは。
掲載中止となった漫画は、次期大統領トランプ氏の機嫌を取ろうと全力を尽くしている億万長者のテクノロジーおよびメディアの最高経営責任者を批判しています。最近、政府から高額の契約を結び、規制撤廃に関心を持つこれらの人物がマール・ア・ラーゴに移住しているという記事が複数ありました。漫画に登場するグループには、マーク・ザッカーバーグ(FacebookおよびMetaの創設者兼CEO)、サム・アルトマン(AIのCEO)、パトリック・スーン・シオン( LAタイムズの発行人)、ウォルト・ディズニー・カンパニー(ABCニュース)、ジェフ・ベゾス(ワシントン・ポストのオーナー)などが含まれていました。
編集ページの編集者が、漫画内の視覚的な比喩が不明瞭だとか、漫画家の意図するメッセージを正しく伝えていないと感じた場合、それに異議を唱えることは珍しくありませんが、この漫画に関してはそのような編集者の批判は当てはまりませんでした。誤解のないように言うと、スケッチが拒否されたり、修正が求められたりした例はありましたが、漫画の解説に固有の観点が原因ではありませんでした。これはゲームチェンジャーであり、自由な報道にとって危険です。
![](https://assets.st-note.com/img/1736320060-FDVulyQBcWnj3sCMEgZ6mY59.png?width=1200)
長年にわたり、私は海外の同僚たちが生活や時には命を危険にさらしながら不正を暴き、自国の指導者に責任を追及するのを見てきました。ジュネーブに拠点を置くフリーダム・カートゥーニスト財団の諮問委員会メンバーであり、カートゥーニスト・ライツの元理事である私は、風刺漫画家は市民の議論に不可欠であり、ジャーナリズムにおいて重要な役割を担っていると信じています。
「あなたは会社で働いているのだから、その会社には社員が会社にとって良いことに従うことを期待する権利がある」と言う人もいるでしょう。それは正しいのですが、私たちが話しているのは、公的義務を負い、民主主義の中で自由な報道を育成する義務を負っている報道機関についてです。そのような報道機関の所有者は、その自由な報道を保護する責任があり、次期独裁者の機嫌を取ろうとすることは、その自由な報道を損なう結果にしかなりません。
風刺漫画家としての私の仕事は、権力者や機関に責任を負わせることです。初めて、私の編集者が、この重要な仕事を私にさせませんでした。そこで、私はワシントン・ポスト紙を去ることにしました。私の決断が大きな騒動を引き起こしたり、私が単なる風刺漫画家だからと言って無視されたりすることはないでしょう。しかし、私は風刺漫画を通して権力に真実を訴え続けることをやめません。なぜなら、よく言われるように、「民主主義は暗闇の中で死ぬ」からです。
読んでいただきありがとうございます。
ーーー
この声明文、読んでどう思いましたか?
私が思ったのは、
アメリカの風刺漫画家、つよ!!!!!!
でした。
彼女の辞職はニューヨークタイムズなど他のメディアも取り上げ、
さらに彼女の同僚などが、彼女に連帯し、同じ構図の風刺画を描いてSNSにアップしています。
For friend and colleague @AnnTelnaes who took a courageous and principled stand against editorial hypocrisy. As requested by Steve Brodner 👍 pic.twitter.com/8DpSelm9Mv
— Rod Emmerson (@rodemmerson) January 7, 2025
やっぱアメリカの風刺漫画家、つよっっっっ!!!!
でも実は、日本でも大正〜昭和初期は新聞社に社員漫画家がいて、「漫画記者」と呼ばれ、ジャーナリスト的ポジションだった時代があるのです。投獄され拷問されても政治風刺を描き続ける漫画家もいました。
でもいまは日本の新聞社に社員漫画家はいないし、共同通信はビジュアル報道のデザイナー社員を「グラフィック記者」と呼んでいるけど、記事をわかりやすく伝えるサポートをするのが仕事だから、自社のオーナーを揶揄してさらに戦い続けるなんて絶対にしないと思う。なので、アメリカの風刺漫画家の強い姿勢にビックリした次第なのです。
アメリカの政治風刺漫画の世界は日本より強く、影響力もある。とはいえ、昔ほどは風刺漫画家の力はないし、社員漫画家の数も減っているらしいのですが…。
実は、去年のアメリカ大統領選の投票日までのSNSにアップされたイラスト・マンガを観察してみたら、そりゃもうたくさんの関連風刺画があがっていて、新聞記事からの引用もたくさんあって驚いたんです。それは、直前の日本の総裁選のSNSにおけるイラスト・マンガが「選挙にいこう」という投票を促すものが圧倒的に多かったのと全く違う光景でした。
ちなみに、なんでそんなあれやこれやを調べているかといえば、私がいま大学院でコミックジャーナリズムを研究しているからです。興味ある方はよかったらこちらもうどうぞ〜。
この研究の流れで、たまにコミックジャーナリズムについて情報発信もしてます。たとえばこんな。
さきほど少し触れた、「日本で漫画家がジャーナリストだった時代」もとても興味深いので、いつかまとめて書こうと思ってまーす。
ではでは、アメリカの風刺漫画家最新ニュースと、おまけ話でした!
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![ハラユキ(harayuki)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54219494/profile_d9cc2b4ba19e4b52a6b503ac8fe44194.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)