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共同親権(1)家族法学者・小川富之先生とオーストラリア新聞のファクトチェックまとめ・メディア誤報問題・私に関するデマ問題
コミックエッセイスト・コミックジャーナリスト(勉強中&研究中)のハラユキです。今回は仕事関連のまとめ的なnoteを書いてみました。
最近、東洋経済オンライン連載で「共同親権」をテーマにしたシリーズをスタートしたのですが(ぜひ読んでね😊)、その第1回第2回でインタビューさせていただいてるのが、家族法学者の小川富之先生です。
小川先生を取材相手として選んだ理由は、家族法の国際会議などに出席してこられたベテラン有識者のひとりで、外務省や法務省から依頼を受けて海外の親権事情調査も担当されたこともあり、面会交流支援員として現場に長年関わってこられた方だからです。さらに、海外が共同養育推進に舵を切るきっかけになったアメリカの社会家族学者のウォーラースタイン博士との交流もあったのも大きなポイントでした(くわしくはマンガを)。
いちおう書いておくと、私は「元夫婦が子どものために協力できるなら共同親権もアリ(家裁や支援システムなど数々の問題は心配)」な立場で、小川先生は私よりも反対色の強い方です。ただ、この経歴の有識者の意見は、まず最初に載せるべきだと思ったんですよね。そこに関しては、こんなコメントもいただきました。
米国の離婚家庭の子ども25年間追跡したワラースタイン博士の本はこの分野の必読・古典文献で、子どもの意見を無視した裁判所命令による面会交流や共同養育で子どもが傷つく様子が描かれています。小川先生はワラースタイン先生と研究仲間だったです!そこに着目したハラユキさんもすごい https://t.co/uEjVTbzSYS
— 熊上崇研究室(和光大学) (@kumagamilab) December 2, 2024
このコメント読んでホッとしたなあ…😊
でも、実は、私の記事が出たあと、「小川富之はオーストラリアの歴史ある新聞に、オーストラリアの家族法の誤認を指摘されたこともある信頼できない学者。そんな学者の意見を記事にするなんておかしい!」的な批判も私のもとに複数寄せられたのです。
結論からいえば、そのオーストラリアの誤認報道自体が間違っていて(つまり、小川先生はデマを世間にばらまかれている)、そのあたりはXにも書いたのですが、一部しか読まず、まだ誤解している人がいるようなので、こちらにまとめておきますね。
実は、共同親権は国内外の大手メディアが誤報を出し続けてきたテーマでもあるので(純粋に間違えたものから、恣意的なものもあると思う)、今後の悪影響とデマ情報の流布を防ぐため、そのあたりにも少し触れたまとめは必要だなと思ったのです。それではいきまーす!
豪「シドニー・モーニング・ヘラルド」紙の記事を検証してみた
さて、まずは問題の原点である。オーストラリアの新聞「シドニー・モーニング・ヘラルド」の原文記事をチェックしました。ちなみに、この新聞はオーストラリア最古の新聞です。
原文全部読んだのですが、その中に、なんと「日本の法制度では、子供と最後に接触した親が単独で親権を持ち、もう一方の親の接触を阻止する権限が与えられている」という記述が😳
これもちろん間違いで、歴史ある大手新聞らしいのに、そもそも日本の親権制度を誤認して報じてるぞ!?とまずビックリ。さらに、関連箇所も読むと、確かに小川先生の主張を誤認と指摘してるんだけど、これも読み解いていくと、やはり怪しい。
なぜかというと、誤認の参考資料として挙げられているのが、こちらの「暴力・虐待・そして共同親責任の限界」という論文なんだけど、
https://aifs.gov.au/sites/default/files/fm92a_0.pdf
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これも全文読んで比較してみると、東京新聞から引用してる小川先生の元発言は共同養育の条項変更にフォーカスした発言なので、実際はこの参考論文の内容とずれてない。つまりは誤認記事。しかも、東京新聞からの引用ではなく、豪新聞が小川先生に直接確認していれば防げたものです。
ちなみにその後、この記事に駐オーストラリア日本大使が正式に反論もしている。そのことも同新聞で取り上げられています。
その後も関連記事は載るけど(そっちも原文読んだ)、それは国際結婚の連れ去り帰国問題や、日本の単独親権についてで、小川先生については最初の記事だけ。つまり、この豪新聞の件だけで、小川先生の信頼問題を問うのはおかしい、と私は判断しました。
つまり、小川先生は誤認記事によって、「信頼できない学者」という法的には名誉毀損にあたる情報を流布されている可能性が高いのです。
(これ、もしかして、小川先生が本気でやれば豪新聞やSNSでデマ拡散をしている人も訴えることができる話なんでは?デマ情報拡散している皆様は要注意です。SNSでの名誉毀損の法律は前より厳しくなっています)
ちなみに、オーストラリアは基本的には今も共同親権推奨ですが、そこから派生する問題に対応するために、何度か法改正を重ね、家庭の状況によっては半々養育は推奨しない方向に今年から舵を切りました(前述の論文のタイトル「暴力・虐待・そして共同親責任の限界」は、オーストラリアの悩ましさを表しているよね😢)。オーストラリアの最新法改正は興味深いので、興味ある方はこちらどうぞ。
さて、話を戻して、デマ検証問題。調べていて気になったのはもうひとつ。
「法曹倫理委員会」があやしすぎる
小川先生の豪報道を日本で広めたひとつが「法曹倫理委員会」というサイトなのですが、そんな立派な名前なのに匿名個人運営だったらしく、さらに現在は閉鎖しているのです。
調べて行くと、このサイトはかつては数々の情報を発信していて、ここの情報を引用・信頼していた人が多かったのです。でも、団体だったのかどうかも怪しいってどういうこと??謎すぎない??
多くの共同親権情報を発信してきたサイトなので、正体や閉鎖の理由知ってる方ぜひ教えてください。
小川先生代表団体によるデマ検証記事
ちなみに、小川先生が代表を務める「kids voice japan」でもデマ検証記事を出しているので、参考までにリンクを貼っておきます。また私と違う観点から検証したうえで、はっきりデマだと断言しています。
でさ、Xでこのリンクも紹介したんだけど、「当事者団体が釈明している記事なんて理由にならない。そんなリンクでデマを否定するハラユキも信頼ならないどーのこーの!」みたいな文句がまたくるわけです。だから、私が個別で検証する羽目になったわけです。でも、そういう人たちは私の検証を説明してもまだ理解しない。ちゃんと読めっつーの😂(これに関しては、あまりの誤読っぷりと話の通じなさに一周回ってウケている。まあでも、小川先生の発言の価値を下げたくて必死なんだろうなあ。必死になるべきは違うところでは…?それはあなたの幸せにはつながらないと思うよ😭)
もちろん、私の検証能力が信じられないという方もいると思うので、どうぞそれぞれで関連原文をすべて読んで検証してみてください。みんなで調べて事実に辿り着き、さらに「大手新聞が、なぜ裏どりをしなかったのか?なぜ直接取材もせずに数々の誤報を載せてしまったのか?」まで検証するのが大事だと思うからです。
そもそも、あのニューヨーク・タイムズだって過去に何度も誤報を出してるし、権威だって間違えることもある。メディアを盲信しすぎるのは危険。そもそも、法の解釈というものすごい難しい問題も関係したら、そりゃ間違えることもあるよ、と、今回の記事を書くのにむちゃくちゃ苦労した私は思ってしまうわけです。
オーストラリアのテレビ番組捏造事件&フランスメディアの誤認指摘
さて、メディアだからって盲信しすぎないほうがいいよ、ということで言えば、興味深い情報がひとつ。
オーストラリアのTVは親権がらみで捏造番組を放送した疑惑があるらしいのです。なんじゃそりゃ…!!!
なんかもう、共同親権問題、闇や謎が多すぎるなーと遠い目になったりしますが🫠、誤報がらみでもうひとつ思い出したものが。
ジャーナリストの西村カリン(共同親権の国、フランス出身)さんによる共同親権記事。この中にこんな一文があったんです。
不勉強な海外マスコミのせい
実際は、親権と子供に会う権利(面会交流権)は別のものだ。家庭裁判所で手続きをすれば面会交流ができると知らないか、知っていても手続きをしなかった外国人の別居親がいる。そうした点が、欧米の人々に対してきちんと説明されなかったことが誤解につながった。
それは完全に海外マスコミのせいだと、私は思うようになった。私も含めて日本の民法について不勉強だったり、文化の違いを理解していない記者が、「日本には共同親権がないから離婚後、別居親と子供の関係が崩れる」と説明してしまった。
これね、すんごい重要な指摘なんではないかと思うのです。
もちろん、日本のいまの単独親権制度で現状にだって問題はたくさんあるけど、だからって誤報を広めていいわけがない。誤報やデマがどんどん膨らみ、賛成派反対派の分断はさらに増していってる側面もあるのではないかと思ったのです。
オールドメディア批判問題ではない
ちなみに、念のため言っておきたいのは、この一連の話は、今はやりの「オールドメディア」批判ではないということ。
それくらい法制度についての記事は難しいからだし、活動家によるデマの流布もその影響下にあると思うし、さまざまな理由が絡み合っているのではないかと思うからです。
そもそも、オールドメディアってくくりでひとまとめで批判する理論は雑すぎて私は好きじゃないのです。新聞だってテレビだって、真摯に地道な調査報道を重ねて報道しているものと、そうでない適当でクソみたいなものの混合体なのが現実。それを見分けることこそ大事だと思うからです。
なんでそんなふうに言うかといえば、ジャーナリズム大学院で学んで、「ちゃんとしたジャーナリスト(大手メディア所属含む)って、こんなに地道で綿密ですごい調査してんのかーーーーーーーーーーー!!!!!」ってビックリしたからです。わし、ちょっとメディアなめてた。ごめんなさい。
そうそう、調査といえば。
正直言えば、この小川先生のデマ調査、途中まで「すんごい面倒くさーーーーーー!!!!なんで私が他人のデマを検証しないといけんのだ!!!」と思ってたのだけど、腹を括ってやってみたら、結果的にはとっても勉強になってしまった。批判してくれたみなさま、5周くらいまわってありがとう☺️
あ、そうだ、デマといえば「当事者でもないハラユキが共同親権について描くのは誰かに依頼されたからだ!」というのも出回っていてウケた😂。私のバックに組織ついてる説を唱えている人までいたらしい。それについてはこちらで説明してるので、興味ある方はどうぞ。
この共同親権シリーズの反応。
— ハラユキ@コミックジャーナリズム研究はじめました。 (@yukky_kk) December 4, 2024
批判してくる場合、1人で大量&連続で送ってくるパターン多いので全然読みきれないけど🫠、その中に「ハラユキはどこかから頼まれて案件仕事として描いてるに違いない!」的なのあってズッコけたよ😂
私が描いた理由を知りたければ→ https://t.co/DMeG2uuVA0
というわけで、最後には余談も挟みましたが、共同親権をめぐる誤報・デマ問題についてでした。ではでは!
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