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珠玉のツイートから見えてくるもの

小田嶋隆『災間の唄』(サイゾー、2020年)

 「災間」とは、東日本大震災からコロナ禍までの間を指している。2011年から2020年までの10年間にコラムニストである著者がツイッターで流したツイートから、武田砂鉄が厳選したものを収録している。
 著者が、その時その時に起こったことに対してや、普段から考えていることについて、鋭いツイートをするのだが、そのほとんどが私には共感できるもので、面白かった。

 有能(勤勉)な者が富を得て、無能(怠惰)な者が貧窮に陥る社会を理想とする考え方が蔓延しているみたいですが、社会というのは、そもそも有能な人間が無能な人間を養うために発案されたシステムです。才能を持って生まれた人はその幸運を他人に分かつべきです。分けてください。待ってます。(86-87頁)
 「学問なんてものは学者がやってれば良いわけでさ。オレらには関係ないだろ?」って、たとえば場外馬券売り場に並んでるオヤジに話しかけられたんなら適当に相槌打つけど、同じセリフを文科省経由で伝えられたら、ちょっと考えこむわな。(127頁)
 尊い生命が失われることは「尊い」ということとはまったく相容れない。悲惨で不当で醜い出来事だ。にもかかわらず、「尊い犠牲」という言い方を繰り返す人々は、いつしか「生命が失われること」そのものが尊い行為であるとする考え方にたどり着く。(149-150頁)

 ツイートの内容は、重複しているものも散見される。なぜなら、政治にしろ、メディアにしろ、突っ込まれるほうが同じようなことばかりしているからだ。それにもかかわらず、小田嶋の批判に対して、「本気で怒ってんじゃないよ」とか「そんな事、真面目に考えてんじゃないよ」といった牽制も続き、その勢いは増しつつある。事態を重く見ず、反省もしない社会に対して、批判的な視線を持ち続ける重要性を本書は教えてくれる。

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