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人ではなくて、しくみの問題

4月6日に開催したセミナーは、平日の20時にもかかわらず、40名近くの方に
参加を頂きました。
会社から急いで帰ってアクセスしてくださった方がいたり、仕事の手を止めて観て頂いた方がいたり、興味を頂いたこと有難いです。

今回は【ハラスメントと企業の損失/Harassment & Loss】をテーマに
・パワーハラスメントとは何か
・企業が講ずべき措置
・パワーハラスメント対策によるメリット
・パワーハラスメントによる損失
についてお話ししました。

セミナーでは裏付けのある話しをしたかったので、事前準備として様々な調査結果を読みました。

パワハラが起こりがちな業種や職場環境など様々なデータが出てきました。

①行政調査
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果(H25)
https://www.jil.go.jp/press/documents/20130624.pdf
金融・保険業や建設業などでメンタルヘルスでの退職率が多い(これはパワハラに限らず)ことが見えてきます。

②行政調査
厚生労働省 あかるい職場応援団「データで見るハラスメント」パワーハラスメントが発生している職場の特徴(H28)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/statistics/
「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が45.8%と最も多く、「失敗が許されない/失敗への許容範囲が低い職場」(22.0%)、「残業が多い/休みが取り難い職場」(21.0%)と続きます。

③事例
過去のニュース(noteで社名明記いたしません)
有休をとらせない会社が炎上、その他残業代未払いなど様々な違反が明るみに ストライキ、脱税などでも世間を騒がせた会社の例
http://netgeek.biz/archives/124810
2018年に炎上、2021年には地方販社を統合し管理部門を整理。

④論文
パワハラに限らず、炎上した場合の株価の変動
田中辰雄「炎上の株価への影響:日本のケース」 IES Keio DP 2017-003(2017)
https://ies.keio.ac.jp/publications/7403

上記は一部ですが、ネットで少し調べただけで、すごい量のパワハラに関するデータや事件が出てきます。
現在、労働局へのパワハラ相談は右肩上がりで、令和元年には年間9万件に迫っています。
これは労働局への相談だけの数字なので人事への相談や相談に至らず我慢している場合を含めると相当多い数字になります。

これだけ蔓延してしまったパワハラを個別に解消していくのは現実的でなく
人によって、考え方や程度の捉え方が全然違うので、いくらパワハラの定義に当てはめて考えようといっても、難しいと思うのです。
だからこそ「人のせい」にしているうちは問題の解決には至らない。
しくみを変えていく必要
があるんだなと思います。

今回、法律が制定されて多くの人の意識が変わったのは間違いありませんが意識だけでなく個別に業界や企業が仕組みを変えていかないといけないのだと思います。

例えば、上記①のデータから金融・保険業での退職率が多いと分かりました。業界の仕組みの何がそうさせているのか、どの職種で多いのか、どのような言動が見られるのか詳細に調査する。
仮に営業職においてノルマ達成の圧力が強い、精神的な攻撃や過大な要求が多いのであれば、業界として管理職向けの指導マニュアルを作ることができると思います。
会社の対応としては評価基準(減点でなく加点、入社2年目までは利益でなく件数で評価など)を変える、薄利の商品構成を減らす、売りにくい商品の見直しをして成果が出やすくする工夫はできるのではないでしょうか。

また、②のデータで「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」においてパワハラが起きやすいとあります。
ここだけ切り取って、ランチ会をしよう、とか面談の機会をつくろうというのではあまり効果はないでしょう。そもそも信頼関係が出来ていない可能性が高い。信頼関係が出来ていない、苦手な上司とのランチ会や面談は苦痛です。
もう少しデータを読み込めば、2番目に多いのは「失敗が許されない/失敗への許容範囲が低い職場」(22.0%)、3番目に多いのは「残業が多い/休みが取り難い職場」(21.0%)とあります。
これを複合的に捉えると
【失敗への許容範囲が低い】→【失敗しないように残業して確認などする】【上司に相談しても指摘(ダメ出し)が中心となる】→【コミュニケーションが減る】
と因果関係が見えてくるはず。
「失敗が許されない」のはどんな仕事でもそうですが、「失敗への許容範囲を広げる」ことであれば、できるのではないでしょうか。
仕事の成果としての失敗ではなく、経験の少ない若手の失敗には寛容になってもよいのではないでしょうか。
例えば、後工程に先輩社員が配置され、責任は先輩社員が持つなど。先輩社員はベテランで、社内である程度発言権がある人が良いと思います。

③の事例では、これは私個人の見解、イメージも含めてですが
薄利多売のビジネスで、人海戦術の場合、動いた分に比例して利益が出るので労働時間が増えがち。支社の売上が上がれば支社長は評価されるので部下に無理をさせる。
私はこの会社がどのような仕組みで人材や業務のマネジメントをしていたかは分かりませんが、正社員の労働力を極力減らし、学生アルバイトを活用する、同業他社のマネジメントを学ぶ機会を作る(管理部門同士ならハードルが低い)、現金購入の自販機を減らし作業を減らすなど工夫はできたと思います。既に実施していた内容かもしれませんが、「真因」を潰せば問題の8割は解消します(大手メーカー勤務時に先輩にそう教わりました)。

④に関しては、パワハラに絞っているわけではありませんが炎上が企業の株価に大きな影響を与えるのは間違いない(③では実質9社が統合、8社がなくなるわけですから、影響は多大)。
最終的には経営の根幹に関わるという認識を経営陣で共有することですね。

しくみの中に、意識を変える研修や勉強会を置く必要はありますが、
一回教えただけで全員の行動が変わるわけではない。
なぜそれが起こっているのか、社員の問題ではなく自分達(会社側)の問題として起きていることを踏まえた対応が必要であると考えます。

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■公式HP
https://harassment-rma.jp/
■認定制度:ハラスメント対策企業認定(WHITE
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■研修:パワーハラスメントリスク管理講座
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■就業規則改訂
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