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【理念への共感】が重要なのかどうか考えてみた

先日noteで「働くことに意味をもとめすぎる違和感」という記事を書きました。

この違和感は会社員として働いているときから、ず~っと自分の中にありました。

当時、会社員の私は「ルールを守って結果だせばいいんでしょ」と思っていて「世界の●●を変えてやる!」みたいな志はありませんでした。

志っぽいものがあったとすれば、営業職のときは赤字事業を自分が立て直したいとか、人事職のときは人と組織の成長を採用の誘因ポイントにしたいとか、自分なりの達成したいことがありました。

その程度の想いしかない私に対して、「志を言え」とか「志を書け」と上司や外部の方は求めてきました。そのたびに辟易としていました。

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それに加え、会社は経営理念が重要と言います。経営理念は企業の使命や志などの要素で構成されます。

これが重要と言われる理由は複数あります。少々穿った見方ではありますが、経営理念の機能として従業員を一つの方向性に向かせることでパワーが効率よく発揮できますし、理念に沿わない言動をする従業員(勝手なことをする人)をはじき出す口実にもなると思います。

理論的にも、理念への共感がワークエンゲージメントにプラスの影響があると結果がでていたり
(HR BLOG「なぜ企業理念が必要なのか?企業理念を浸透させるメリットや効果」(2021.8.26)
※ここでいう企業理念は経営理念よりも噛み砕かれ実務に近いもの)


麗澤大学の高巌教授の2010年の研究では、パフォーマンスへのプラスの影響があるという結果も出ています。

「経営理念の浸透が、職務関与や革新指向性への働きかけを通じて、組織成員個々のパフォーマンスを高めていく。」


これらの調査では理念浸透(従業員が共感していること)がパフォーマンスを上げることに影響していることは分かっていますが、実際の業績まで踏み込むことまではしていません。押しなべて業績向上にプラスではあるのでしょうが「ハイパフォーマー」が理念にどのくらいリンクしているかは明らかでは分かりません。

私が10年以上前、会社員として一番幸福感高く働いていた就職情報会社(A社)には当時理念がありませんでした。
私はこの会社で営業職として毎日新規開拓営業で走り回り、楽しく働いていました。月曜日が楽しみという生活を数年間過ごしていました。

また、周囲にはどうやったらそれほど大きな売上が作れるんだろう、と想像ができないほどのハイパフォーマーが何人もいました。

彼ら彼女らはゲーム的に仕事を楽しんでいたり、表彰され目立つことが嬉しくてひたすら仕事に没頭していました。

A社は現在理念を持ち、盤石な体制で経営していますが、当時のハイパフォーマーたちの多くは結婚して退職したり、転職したり、独立して活躍しています。当時のスターたちはA社には多くは残っていないようです。

A社の例で言いたかったことは、ハイパフォーマーは経営理念が無くとも、少なくない人数が出現するということです。
そして理念があれば引き留められたか、というとそうとも言えないということです。


一方で、しっかりした経営理念を持った製造業(B社)の例です。

私はこの会社で人事の仕事に就きました。
老舗企業で理念の浸透にも時間と手間をかけており、私自身共感して働いていました。
ある日トップが変わり理念が変わりました。
その理念も新たに浸透させるために日々読み上げや、その理念に沿った行動について朝礼で部署の誰かが事例発表をするなど徹底していました。

経営方針や会社ルールの変更はパフォーマンスに影響を与えましたが、理念の変化自体がパフォーマンスに影響を与えたとは思えません。

A社B社というたった2社の例ではありますが「理念に共感したらパフォーマンスが高くなる」とは言えなかったのではと思っています。

特に、A社に存在した異常なまでに成果を出す人ほど、理念にとらわれず我の信じる道を突き進んでいたようにも感じます。

個人と経営理念へのリンクは、どこまで重要視するものなんでしょう。

新卒採用や経験者採用のときに、何度も志を尋ねたり、経営理念に共感できるかを確認する会社がありますが、その確認に時間と手間をかけることにそれほどの意味があるのかと考えてしまいます(数人のスタートアップ企業ではなく分業が進んだ大手企業の場合です)。

経営理念とパフォーマンスの相関よりもスキルマッチや職務適正などの方が明らかにパフォーマンスとの相関が高いはずです。
そして、入社してからの評価・報酬が魅力的なものであればパフォーマンスをきっちりと上げるでしょう。

「経営理念とパフォーマンスは関係がある」というところだけを切り取ってそれを選考基準にしてしまう企業があることに違和感を感じますし、それが進むとやりがい搾取にもつながるのではと考えてしまいます。

優れた企業の優れた理念と言いますが、優れた企業の理念だから優れていると認識している可能性が大きく、優れた理念でも経営が振るわない会社の方が多いのではないでしょうか。

調査研究において明らかに相関があることが分かっているので、志や理念を否定するつもりはありません。ただ、理念浸透や共感を得ることに過度な期待を持ったり偏重しないことが重要なのではないか、と思うのでした。


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