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生きづらさを感じていた私が、ちょっとだけ生きるのが上手になった理由はこれ。
生きるのにも上手い、下手がある。
そう気づいたのは、大人になってから。
それで言うと、私は生きるのが下手な方だったと思う。いや、今も決して上手くはない。でも、なんでそうなのか? を自覚している分、昔よりはうんと生きやすくなったと思う。生き方っていうのは、要領の話ではなくて思考、考え方の癖みたいなものです。
生き方下手は、思考の癖に凝り固まっている。しかも自分自身の考え方が凝り固まっていることにすら気づいていないんです。私がそうだったから。
じゃあ私は、いつ自分の思考の癖を自覚したのか? それは、コミュニティでたくさんの人と触れ合うようになってからですね。コミュニティでの経験って偉大ですよ。
もちろん小・中・高・大学、そして社会人になっても人と触れ合ってきたので、これらもコミュニティ経験です。でも、大人になればなるほど、私たちって自分で居場所を選んでいるし、付き合う人の傾向も偏る。しかも、大人になればなるほど、これまで生きてきた経験則に縛られるので考え方が凝り固まるんですよね。
そんな私が、最初にオンラインコミュニティに入ったきっかけは、ブログ運営が上手くなりたかったから。この時驚いたのは、個人事業主が多かったこと。私の周りは、私が知らないだけかもしれないけど、サラリーマンが圧倒的に多かった。私自身も基本的にはサラリーマン家庭で育ったし。だから、会社を辞めて個人事業主で生きていくという選択肢がそもそもなかった。「この人どうやって生きてるの?」 お節介だけどそう感じる人が多かった、でもなんか楽しそう。「そっか、生き方っていろいろあるんだな」って感じた。
次に入ったのは「箕輪編集室」です。みの編に入って思ったのは、箕輪さんをはじめ、突き抜ける人たちのコツというか、生き様を見た。ただ頑張るだけじゃだめだし、ただ空気を読むだけでもだめ。どっちも備わった上で、考えながらどんどん行動すること。何かを成したいなら、一生のうちでどこかでギアを入れる時間と覚悟が必要だということ。そういう生き様に触れた。
そして、クリエイターコミュニティの「マエデ(前田デザイン室)」ですね。マエデにいて感じたのは、私たちは本来もっと自由で、誰にも縛られてない。なのに縛っているのは、自分自身だったりするということ。急に哲学的になってる感じがするけど、要はもっと自由に、柔軟に「こんなことしたっていいんだぜ」な経験をたくさんできた。それによって、私自身ももっと自由でいい、自分を縛っているのは私自身の考え方だと気づけた。
マエデでやっていることは、商業ベースでは基本ありえません。私が編集長をやらせてもらった『マエボン1』では、「スカートめくりたい手袋」なる企画も。コンプライアンス云々な世の中ではそもそも成立しませんね。
マエボン2では、おならをしてもOKな「おなら大丈夫椅子」の開発の軌跡を綴る「プロジェクトHE」など、謎企画万歳でした。
マエボン3は、雑誌としての物体が存在するのに0円で販売しているところが、そもそもぶっとんでいる。ここでもおなら企画は、存在しており、架空の話ですが私はおなら裁判という企画の中で、勝訴しております。ふふん。
それから、田中泰延さんに取材させてもらっているのに、こんな泰延さん見たことない! ってショット満載なんですよ。
もちろん、コンセプトはあるしなんでもやりたい放題ではありません。でも、コンセプトの元「こんなことやってもいいんだよ」って自分に、世の中に問い続けるのが「マエボン」イズムだと私は思う。
そういう意味では、4作目のマエボンもそう。ただかっこいいだけの雑誌って、商業ベースではそもそも成立しません。しかも、裏テーマはおなら。なんかかっこいいページがたくさんありますが、全部おならがモチーフなんです。おい!って感じですね。
『極悪女王』で、話題沸騰中だった最中にゆりやんレトリィバァさんへの取材もさせていただきました。なのに極悪女王の話は一切聞かず、聞いているのはただただおならの話。なんでやねん! なにやってるの! がマエデです。
さて、マエデの話に熱くなってしまいましたが、生きづらさの正体は、自分の思考の癖であり、固定観念だと思う。こうしないといけない、こうあるべきが積み重なると人は苦しくなる。自分を縛るこういう癖は人のことも縛ってしまう。そうして苦しくなる。
もちろん仕事する上ではある程度大事なんですよ。こうするべき、こうあるべきを追求することって。でもマエデでの活動は、無駄で一見意味がないこと、非合理なことでも面白かったらOK。そういうものに情熱を燃やす経験が、固定観念から解放するきっかけになる。「ああ私の考え方って凝り固まっていたのだな」ということに気付ける。
そのイズムが一番色濃く出ているのが、マエボンシリーズだと思います。これ買ってどうなるの? って思っている人がいるとしたら、そういう人にこそ買ってほしい。何やってるの? バカだなぁ〜。と感じてもらえたら嬉しい。そういう時間が、思考のロックを外す第一歩になるのだから。
というわけで、マエデとマエボンについて長々と書きました。マエボンシリーズ4作目に当たる『Grapheck』(グラヘック)は、この世に500冊しか存在しません。多少の予備はもちろん残りますが、大々的に販売するのは今回が最後です。