短編/環様
私はコンビニのアルバイトを終え、一旦自宅でシャワーを浴びてから環様のアパートへ向かう。
私が住む古びた安賃貸とは真逆の、とても綺麗な新築アパートだ。
建物のエントランスと玄関ドアでそれぞれ暗証番号を入力して部屋に入る。
広い玄関には大きな靴棚がある。
そこを開くと高級そうな環様の靴が並ぶ中、一角に蓋のない木箱が置いてある。
そこにまず1000円札を入れる。
これは環様のお部屋に入れていただくための入室料だ。
私は日曜日の夜勤終わり、つまり月曜日の朝。それから木曜日から土曜日までの日勤終わりに環様のお部屋に来ることが許されている。
月曜日は、大学生である環様が彼氏様やご友人がたと週末に楽しく過ごされたお部屋の掃除、木曜日は洗濯や洗い物、金曜日、土曜日は環様に飲み会のご予定があればそれに向けた買い出しや部屋の準備などをする。
これは私1人でやるのではなく、環様の奴隷全員で分担している。
私が把握しているだけで環様の奴隷は十数名おり、シフト制となっている。
玄関で1000円を箱にお支払いしたら、まずはその場で正装の全身タイツに着替える。
全身タイツは顔以外がすべて隠れるタイプで、これは奴隷として家事代行を許可される際に環様から支給される。
全身タイツは、私たちの体毛などが落ちないようにするための環様の発案だ。
支給されると言っても勿論無償ではなく、1着1万円で奴隷が自ら購入する。
タイツは予め他の奴隷が環様から指示され、ドンキで買い置きしている1着2500円の物だ。
最初に最低3着買うように指示されるので、環様としては元手0円で3万円が手に入る。
さらにタイツは白、ベージュ、ピンクの3種類があり、奴隷のランク分けがされている。
白は半年以内の初級奴隷で、買い出しなどの雑用をメインで行い、部屋では床掃除のみが許されている。
半年経つと自動的にベージュの中級奴隷となり、床掃除だけでなく食器洗いや部屋の片付け、さらに靴磨きが許可される。
そしてベージュの中から、期間に関係なく環様に認められるとピンクの上級奴隷となり、料理や洗濯などが許可される。
食器の洗い残しや料理の味付けなど何か粗相があれば、いやたとえ粗相がなかったとしても環様のご気分次第でランクが下がることもしばしばある。
このため、経年劣化で買い替える以外にも定期
的にタイツを買い替える必要があり、その都度環様の臨時収入となるのである。
全身タイツによる奴隷の管理は、環様が考案した素晴らしい制度だ。
私は早速ピンクのタイツに着替え、寝室の掃除に取りかかる。
既にほか4名の奴隷が部屋で家事を行っていた。白が2名、ベージュとピンクが1名ずつだった。
大学生の環様は昨日お家で飲み会をされたようで、リビングにはお酒やおつまみのゴミ、寝室には使用後のコンドームやティッシュなどが散乱していたらしい。
4名ともせっせと働いていた。
部屋の掃除、洗濯、食器洗いはすべて私が到着してから1時間くらいで終了した。
私たちは定時である22時まで玄関で5人並んで正座した。
環様がもしもご帰宅されればそのまま土下座で感謝を申し上げることが可能だが、ご帰宅されなければ22時にその場で解散する。
この日は終了してから30分ほど経った19時半頃に玄関のドアが開いた。
私たちはすぐに土下座し、額を床につけた。
【ただいまー】
「「おかえりなさいませ!環様!」」
【ちゃんと掃除した?】
「「はい!ありがとうございました!」」
環様の足音に続いてもう1人の足音が聞こえた。
そして頭上から男性の声が聞こえた。
「うわ!昨日俺らあんな騒いだのにマジで綺麗になってんじゃん!」
【そだよ〜。家事奴隷マジ便利だから笑】
「環すげーわ笑。」
【ほら、箱も見てごらん】
「おー、そっか。うわヤバ!勝手に増えてんだけど笑。環天才すぎるわ笑。」
【でしょ笑】
「コイツらどうすんの?」
【いつもはコレで終わりだよ笑。コイツらウチの声聞けたら幸せだもん。ね?】
「「はい!環様!!」」
「ヤバいな笑」
【今日は颯太いるから遊んであげよっか。ベージュは靴の消臭。他おいで】
「「畏まりました!!」」
「環様、ありがとうございます!」
あとは帰るだけだと思っていた私たちは、嬉々として返事をした。
さらにベージュの奴隷は続けてお礼を申し上げ、環様が先ほど玄関に脱ぎ捨てた白いローファーに向かって土下座し、履き口に顔を埋めて深呼吸を繰り返した。
私たちは環様たちについて、リビングに移動した。
環様はリビングの高級ソファに腰かけ、颯太と呼ばれる男性も環様の隣に座った。
ソファに附属するオットマンに環様は足を伸ばし、カーキ色のリブソックスの足裏がお目見えになった。
リブソックスは環様が気に入って頻用しているもので、カーキ色にも関わらず黒ずんだ汚れや油汚れが視認できた。
【颯太きて】
「環、可愛いよ。」
ンチュ。くちゃ。チュ...。
環様の方へ男性様が身を寄せ、神聖な営みが始まろうとしたため、私たちはすぐにその場でソファに向かって土下座した。
頭上からは環様と男性様のキスする音が聞こえた。
【ピンク足舐め】
「「ありがとうございます!」」
キスの音が続く中、息継ぎの間に環様からご命令をいただけた。
私ともう1名のピンク奴隷は急いで足元にかけ寄り、まず土下座して挨拶する。
「「環様、失礼致します!」」
【今日は特別、白に靴下見せてあげな】
「「畏まりました!」」
私たちはそれぞれ片足ずつカーキ色のリブソックスを脱がせ、土下座する白奴隷の頭の先に置いた。
靴下はとても蒸れており、しっかりと環様の足汗の匂いが漂っていた。
「「環様、ありがとうございます!」」
白奴隷たちはうわずった声でお礼を申し上げた。それはそうだろう。
白奴隷はいわば見習いの身分であり、環様の脱ぎたての靴下を近くで鑑賞したり、ましてや足汗の香りを嗅いだりするなんて夢のような出来事だ。
白奴隷たちは少し額を床から離し、一生懸命に環様の脱ぎたての靴下の姿を目に焼き付けた。
私ともう1名のピンク奴隷は再び足元に戻り、四つん這いになる。
私が右足、もう1名が左足の足裏に顔を近づける。
環様のおみ足の馨しい香りが漂う。そして足裏や足指の間にたくさん付着しているカーキ色の靴下の繊維を見て、自然と唾液が分泌される。
まるで梅干しを見た時のように、唾液が溢れて止まらなくなった。
【よし】
「「環様、ありがとうございます!」」
私たちは一心不乱に足裏を舐めた。
環様は男性様とキスを楽しまれた後、神聖な営みをされ、男性様と濃密な時間を過ごされた。
私たちは決してそれを邪魔しないよう、しかし少しでも心地よい刺激となるよう、これまで躾けられてきた通り丁寧におみ足を舐めた。
しばらくすると、頭上のお2人の神聖な音が止んだ。
私たちには特に指示がなかったので、そのまま必死に足裏を舐め続ける。
バチン!!
【お前らキモい。いつまでも舐めてんなよ】
「「申し訳ございません、環様!」」
私たちは不意に顔面を思い切り蹴飛ばされ、後方に倒れた。
すぐに土下座して謝罪し、アルコール綿とタオルで足裏をお拭きする。
【キモい、早く帰れ】
「「申し訳ございません、環様!」」
「整列!」
私が号令をかける。
奴隷5名並んでソファに向かって土下座する。
「環様、本日はありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
環様は男性様とスマホを見ながら談笑しており、勿論私たちに関心はない。
【あ、夜ここ良さそうだね!】
「ほんとだ!でも高そうじゃない?」
【あはは。何のためにこいつら飼ってんの笑】
「そっか笑!」
【お前ら今日の見学料2万ね。払えなきゃクビだから】
「「「畏まりました!」」」
私たちは2万円ずつ追加で環様にお支払いした後、お部屋を後にした。