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【妄想小説】秋様は神様 2話

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〜3月10日 00:00


2-1. 土下座で挨拶

今でこそ秋様は学校内で神様のように崇められ、全ての生徒と教師が秋様へ隷属しているが、勿論これは最初からではなかった。
しかし自然とこのような形になっていった。

秋様自身、その美しさによって幼少期から特別扱いされることには当然慣れていたが、ここまで神格化されたのは高校に入ってからだった。
このため入学当初は少し不思議な気恥ずかしい感覚があったものの、次第に慣れていった。

何より驚いたのは、挨拶の仕方だった。
いつからか秋様への挨拶は土下座で額を床につけるのが主流となっていた。

【別にそんなことしなくていいよ】

最初秋様はそのように伝えたが、皆が懇願するため否定はしなかった。
しかし秋様は疑問に思い、ある時足元で土下座する国語担当の宮本先生に尋ねてみた。

【それ、何が良いの?】
「あ、秋様。秋様は我々の神様ですので、最大限の敬意を表すため、このような形で挨拶させていただいております!」
【ふーん、神様か。それはいいかも笑】

秋様の素朴な質問に先生は驚き、当然の如く答えた。
その答えに秋様は納得し、以降は周りの態度も当たり前に感じられた。

2-2. 秋様の座席

生徒と教師たちは、どんな猛暑でも極寒でも大雨でも嵐でも、毎朝列をなして秋様の登校を出迎える。
秋様の登校はこの学校で最も大切なイベントであり、全員がその瞬間を心待ちにしている。

秋様が登校すると、皆一斉に深く頭を下げ、声を揃えて挨拶する。

「「「秋様、おはようございます!」」」

秋様はわずかに微笑み、時折軽く頷くこともあるが、言葉を発することはほとんどない。
昇降口では日直が秋様に上履きを差し出す。
秋様は日直の両手の上で、優雅に上履きへ履き替える。

秋様が教室へ向かうと、そこには他の生徒たちの座席とは一線を画す空間が広がっている。
通常の机と椅子が並ぶ教室の中で、秋様の座席はまるで別世界のように特別だ。
広いソファと大きなテーブル、いずれも秋様にふさわしい高級ブランドのもので、イタリアからの輸入品だ。

秋様はソファに腰かけ、スマホをいじったりファッション誌を読んだりして寛ぐ。
その間も周囲は秋様に注目する。
パシリやマッサージを命じてもらえることがあるからだ。
秋様からの貴重なご命令を聞き逃すまいと、周囲は常に秋様の動向に注意を払っている。

秋様が何かを要求すれば、周囲の人々にとってはそれが最優先事項となり、他のことは後回しにされる。それが秋様にとっても皆にとっても当然だ。
秋様が望めばすべてが動き、すべてがその通りになる。

2-3. 聖典〜テーブル叩き〜

秋様に対する絶対的な尊敬と崇拝から、自然に生じたものが特別校則である。
一方、この学校には秋様が自ら制定したルールも存在する。これを皆は学校の「聖典」と呼び、厳守している。

聖典は言わば、秋様が学校内でより快適に過ごすためのルールおよびシステムである。
生徒と教師たちは聖典を遵守することで、秋様の快適な学校生活に貢献するとともに、自分たちも秋様への隷属感が得られる。

始まりはある日の午後だった。
秋様は授業中の教室でぼんやりと窓の外を眺めつつ、喉の渇きを感じた。
そこでふと思いついた。

【ちょっと良い?】
「いかが致しましたか、秋様?」

秋様の一声で教室はピタリと静まり、授業をしていた担任の遠藤先生はすぐさま秋様の足元に駆け寄った。
クラスメイトたちは皆秋様の声に耳を傾ける。
秋様は微笑み、ゆっくりと続けた。

【これからは私が手を叩いたらすぐ集合ね。私がテーブルを叩くから、その回数に応じて皆は動くの】

つまり秋様が考えたのは、一通りの要望であれば、わざわざクラスメイトや教師たちに口頭で伝える必要はないだろうということだ。
たかが水やお菓子を買ってこさせるのに、いちいち言葉で伝えなければならないことを秋様は煩わしく感じていた。

これが秋様の聖典の始まりだった。
クラスメイトと教師たちは秋様からの説明を真剣に聞いた。
そして秋様は一通りの説明を終わると、早速手を叩いた。

パンパン!

すぐにクラスメイト数名が立ち上がり、秋様の席の周りに駆け寄る。
足元で跪いていた遠藤先生もその場で立ち上がった。
秋様はにっこりと微笑み、人差し指で軽くテーブルを叩く。

トン。

駆け寄っていたクラスメイトのうち数名がその音に反応して、急いで教室の外へ走り出す。
そして各々水やお茶、ジュースなどを持って帰ってくる。

【お茶の気分】
「秋様、ありがとうございます!」

秋様が1人からお茶を受け取る。
お茶を買ってきたクラスメイトはお礼を言って、お茶を差し出した。

トントン。

今度は2回テーブルを叩く音。
同じくクラスメイト数名が教室から急いで出ていく。
今度は様々なお菓子を持って戻ってきた。

【ん】
「秋様、ありがとうございます!」

秋様は好きなグミを受け取り、買ってきたクラスメイトがお礼を述べる。

トントントン。

3回の時は軽食だ。
おにぎりやサンドイッチ、春雨スープなどを持ってクラスメイトたちが戻ってくる。

【うん、良い感じ笑。今日はいらないけど、そんな感じでこれからよろしくねー】
「「「畏まりました、秋様!!」」」

秋様は満足した様子でにっこりと笑った。
授業が再開され、秋様はそのまま買ってこさせたお茶とグミを頬張りつつ、残りの授業を過ごした。

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2月25日 23:30 〜 3月10日 00:00

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