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私論・お金を貯めるコツ

精神しょうがいの方たちは、お金に困っている人が多い。

外来に通院中の63歳の男性は障害年金を受けとりながら、
共同作業所で働いている。合わせて月12万円ほどだ。

将来に備えて貯金をしなければ、という話になったので、家計簿を一緒に開いてみた。

食費の4万円は多いということになり、そこから1万円は貯蓄にまわす計画を立てた。

精神科医がそこまで?と思われるふしもあるが、私はお金をどう扱うかは、心を扱うくらい大事だと思っている。

なので、患者さんと一緒にお金のやりくりや、貯め方など一緒に考えることはとても多い。

「お金がない」「お金がたまらない」が口癖の人がおられる。

そんな方たちの家をこっそり覗いてみよう。

例えば冷蔵庫。う~ん、貯まっていますねえ。
賞味期限切れがあったり、本人の入れ忘れたものがあったり。

キッチンやリビングも全体にごちゃごちゃしている。

そして収納スペースや押し入れはモノであふれている。

しかしよくよく、考えてみてほしい。
これらはすべて「お金を出して買ったもの」だ。

つまり、モノはお金がカタチを変えたもの」で、言いかえれば、人は金貨に埋まって暮らしているようなもの。

土地も家もモノも、元はと言えば金貨なんですよね。
意識したことありました?

お金を貯めるというと、家計簿を思い浮かべる人も多い。

確かに"見える化"することは必要だが、それはお金を貯めることと、あまり関係がない。
なぜなら、それは「お金を使った結果」にすぎないから。

根本的な解決法は「お金を使う前に」「これにお金を使うかどうかについてしっかり考えること」だと思う。

世の中には「欲しいもの」「一見、必要なもの」であふれている。

それらを手に入れていたらキリがない。
その結果が、先ほど述べた家の様子ではないだろうか。

発想をまったく切り変えてみよう。

自分にとって「欲しいもの」ではなく、これがなければ生きていけないくらいに必要なもの。
自分にとって、これだけは!と思える大切なものを考えておくこと、普段から。

何日かけてもいいから、よくよく考えてみよう。

ただ、やみくもに我慢しなさいって言うのではない。

そぎ落とすこと。

自分にとって、これだけは大事、大切ってものは何かについて考えるプロセスが大事なように思う。

そのプロセスを経たうえで、やわら財布の紐も緩めてみませんか。

そうすれば、3000円でも5000円でもお金は貯まるはず。

であるなら、最初から引いておくのが良い。
そのお金は「ないもの」として最初から引いておくこと、それが原則だ。
そうやって、あるお金の中で暮らしてみよう。

失敗してもいいと思う。
ゆるくゆるくやればいいと思う。

それを繰り返しながら、買う前に考える習慣を作っていくこと。

それがお金を貯めるコツ。

     ☆    ☆    ☆
余談である。
私には義妹がいる。
「私は貧乏」っていうのが口癖だ。
その口癖だけは言わないように強く注意していたある日のこと。

私は、その頃、自分の撮った猫の写真でポストカードを
作ろうかどうか迷っていた。
そんな、不要とも思える趣味のようなことに、お金を数万も使うことに迷いに迷っていた。

義妹はいつも私の背中を押してくれて。
「やりたいんならやりな」っていつもはげましてくれていた。
そしてポストカードがやっと出来上がった日のことだ。

ポストカードは一枚100円で売ることにしてて、売店に置いてもらったり、職場で買ってもらったりしていたので。
やってきた義妹にもお願いした。
「ね、一枚でも二枚でも買ってくれたらうれしいな」

義妹は「いいね」と言いながら見てくれて。
でも言った。
「私は貧乏だから、こんなものに100円も出せない」

私はえっ?と思って。
そして、義妹の手のそばにほおり投げてあった袋を見た。

それは、なつめ、という果物のようなものだった。
我が家に遊びに来る前に義妹が買ってきたものだった。
義妹は「これ、子供の頃食べたの。懐かしくて買ったけど
美味しくない」といってほおり投げていた。
500円ちょっとだったと思う。

私は「ねえ、あなた、さっき貧乏だと言ったよね。でもそのくだらないって捨てたもの、500円も出して買ってきたんだよね。それはもったいなくなくて捨てるのに、私が心を込めて作って、あなたも励ましてくれたこのポストカードは買ってくれないの? もったいないの? 遠くに住む娘さんと息子さんにはがき出してあげれば喜ぶんじゃない?」

そういうと義妹は「そうね。その通りだわ。買うわ」と言って二枚買ってくれた。
早速、子供たちにはがきを書いていた。

義妹を責めてはいない。

私もまた、同じようなことをしているな。
つくづくそう思っただけ。

責めてはいないので、気づきを言っただけなので、義妹も
気を悪くもせず、その場は終わった。

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