フィードバック文化を促進するための12の秘訣:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、医療教育におけるフィードバック文化に関する研究です。
フィードバック文化:
学習者と教育者の成長を促進し、フィードバックを単なる技術的なやり取りとしてではなく、社会的・文化的な関係性を通じて行われる複雑なプロセスと捉える考え方。この文化の構築には、信頼関係や組織文化、受け手の成長マインドセットなど、様々な社会文化的要素が影響を与えている
今日の論文
Twelve tips to promote a feedback culture with a growth mind-set: Swinging the feedback pendulum from recipes to relationships
成長マインドセットでフィードバック文化を促進するための12の秘訣:レシピから関係へフィードバックの振り子を振る
Medical Teacher, 2018年
Subha Ramani, Karen D. Könings, Shiphra Ginsburg, Cees P. M. van der Vleuten
サマリ
医療教育におけるフィードバックは、従来フィードバック提供者に焦点が置かれてきましたが、近年は受け手である学習者の成長と受容が重要視されるようになっている
本論文はフィードバック文化の概念を定義し、成長マインドセットを促進する戦略を4つの視点(フィードバック提供者、受け手、関係性、組織文化)から提案
これらの戦略は、フィードバックの社会文化的側面に焦点を当て、学習者と教育者の双方が成長マインドセットを持つための方法を具体化したもの
わかったこと①:
成長マインドセットを持つフィードバック文化の確立に向けた戦略
フィードバック提供者向け
ポジティブな学習環境作り: 敬意を持った対応で信頼関係を築く
直接観察と具体的なフィードバック: 実際の行動に基づき、信頼性あるフィードバックを提供
自己評価を促す: 学習者の自己認識と成長を支援
フィードバック受け手(学習者)向け
成長マインドセットを育む: 失敗を学びと捉え、継続的な改善に向けフィードバックを受け入れる
積極的なフィードバック追求: 自らの強みと課題を把握するために、フィードバックを求める姿勢を奨励
自己主導のアクションプラン: 自らの成長目標と行動計画を策定
フィードバック関係
教育同盟の構築: 信頼関係を基盤にした対話的なフィードバックを実施
共同学習機会の創出: 教師と学習者が協力し、新たな学びと改善の機会を設計
組織的コンテキスト
自己効力感の支援: 自己の能力に対する信頼を高め、建設的フィードバックの受容性を向上
監督と自律のバランス: 適切な監督のもと、学習者の自立を促進
継続改善の文化作り: 改善志向の言語でフィードバックを行い、学習と成長を組織全体で支援
わかったこと②:
フィードバックの参加型デザインプロセス
学習者と教師による目標設定
教師によるパフォーマンスの直接観察
促進された自己反省を含むフィードバック会話
フィードバックを取り入れた行動変容のための学習・業務機会の創出
新たなパフォーマンスの振り返りと再評価
学習者と教師による新たな目標の設定
わかったこと③:
フィードバック文化を形成するための12の実践的な戦略
積極的な学習環境を整え、模範的な行動を示す
パフォーマンスを直接観察し、信頼性のあるフィードバックを提供する
自己評価を促し、学習者の自己洞察を助ける
学習者に成長マインドセットを持たせる
学習者がフィードバックを求める行動を奨励する
行動変容のための自己主導のアクションプランを推進する
教育同盟を築き、関係を重視したフィードバックを行う
教師と学習者が協力して学習機会を創出する
学習者の自己効力感を適切に支援する
指導と自律のバランスを取る
継続的な実践改善の環境を整備する
専門的成長を促進するフィードバック文化を強調する
論文から得た学び
フィードバックは単なる一方向の情報提供ではなく、学習者との関係性を築きながら行われるべきとされています。特に教育同盟と学習ゴールの設定を重視し、成長マインドセットの醸成を目指すことでフィードバック文化の向上が期待されると主張されています。