「コンサル1年目が学ぶこと」を読んでミタ
著書:大石哲之
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
▪️本書の要点
「動かしようのない事実」を語れば、コンサルタント1年目でも経験豊富な相手と渡り合うことができる。この事実の最たるものが「数字」だ。事実を集めて数字にするべきである。
ビジネスの基本は、相手の期待を超え続けることである。まずは相手の期待の中身を把握して、次に相手の期待を超えることに全力投球しよう。
仕事を進めるうえで大切なのは、いきなり作業に入るのではなく、どのように進めれば求めている答えにたどり着けるかを考えることである。
▪️本書を要約してみた
コンサル流「話す技術」:結論から話す
「物事は順番に話せ」「起承転結で話せ」と、学校で習った方も多いだろう。しかしコンサルティング業界では、報告書、メール、メモ書き、上司への連絡に至るまで、「結論から話す」ように徹底される。なぜなら結論から話したほうが、物事がシンプルで明確になり、短い時間で相手に必要なことを伝えられるからである。
結論から話す技法として、「PREP法」というものがある。
PはPoint(結論)
RはReason(理由づけ)
EはExample(具体例)
2つ目のPはPointの繰り返しを意味する。
普段からPREPの型を思い浮かべて、頭の中で整理しよう。そして結論から話すのである。
著者は新人時代、「質問に対して取り繕うように答えなくていい。5分考えてからでいいので、頭を整理して答えなさい」と上司から指導を受けた。それ以来、言葉が詰まる質問を受けたときは、「1、2分考える時間をください」と言ってから、黙って考えている。「頭を整理し、結論から話す」ことを徹底しているのである。
トーク・ストレート(端的に話す)
コンサルティング会社には標語が多い。それが新人の行動指針になっていることもある。「トーク・ストレート」もその一つだ。
トーク・ストレートとは、「端的・簡潔・素直に話す」という意味である。
変な駆け引きをせず、言い訳をせず、言われたことにきちんと答える。
「あの資料はできた?」と上司に質問されたとき、資料が未完成だったら、どう答えるだろうか。そういう質問を受けるときは、往々にして作業が遅れているものだ。そのため、ついつい言い訳から入ってしまいがちである。
しかしいまの著者なら、素直に「まだできていません」と答える。叱られるかもしれないが、それも承知の上である。というのも、上司が知りたいのは「完成したのか、していないのか」という事実だからだ。未完成なら、その原因を知りたいはずである。
相手の質問に対してストレートに答えれば、自然にコミュニケーションが取れるし、問題の所在も明らかになる。そうすれば相手としても、その先の「なぜ?」や「どうして?」を聞きやすい。
質問に対しては、まずイエスなりノーなりで端的に答えて、それから追加の説明をしたり、相手の質問に答えたりしていくべきである。
数字という事実で語る
コンサルタントは1年目であっても、30代後半〜40代で経験豊富なクライアントと話すことが多い。しかし1年目の社員なのに、どうしてそんなことができるのか。
その秘訣は、「動かしようのない事実」を語っていることにある。この事実の最たるものが「数字」だ。
それも難しい数字ではなく、売上、出荷個数、コスト、利益率などの単純な数字である。
たとえば街角で、調査員がカウンターを持って数えている数字がある。このような、新聞にもネットにもないデータこそが有効だ。おかしいと思ったら、まず事実を集めて数字にする。数字こそが一年目の武器になるのだ。
相手の期待値を把握して、期待値を上回る
「どうしたら常に評価と信頼を得られて、次にも仕事がくるようになるのか?」、「ビジネスをするうえで一番大事なものとは何だろうか?」――こうした質問を、著者は多くのコンサルタントに投げかけた。その答えは全員一致で、「相手の期待を超え続けること」だった。
ビジネスというのは突き詰めると、まさに相手の期待を超え続けていくことに他ならない。顧客、消費者、上司の期待を超え続けていくこと。これこそがビジネスの秘訣だ。
期待を超えるうえで大切なのが、相手が何を期待しているかを正確に把握することである。そして相手の期待している中身がわかったら、相手の期待以上の成果を出せるように全力投球するのである。
上司の求める期待値を質問によって推し量る
特に若手の間は、上司の期待を超え続けていくことが重要だ。その第一歩となるのが、業務についての共通認識を持ち、その期待値を把握することである。上司から仕事を引き受けるときに大切なのは、次の4つのポイントを把握することである。
(1)その仕事の背景や目的
(2)具体的な仕事の成果イメージ
(3)クオリティ
(4)優先順位・緊急度
上司によっては、指示が曖昧なこともある。だがたとえば「A社の新サービスを、ざっくり調べておいて」といった指示があったときに、「はい、ざっくりやっておきます」と答えるのは最悪だ。
こうした場合は、「顧客層、特徴・差別化要因、価格体系、提供体制について、それぞれ資料1枚、表紙を入れて計5枚ぐらいでまとめればいいですか」と具体的に聞いてみるとよい。
もし上司が「それぞれで3、4枚ぐらいじゃないか」と答えたら、「ざっくり調べておいて」と言いながら、じつは細部までしっかり調べてくることを期待していることがわかる。
コンサル流「思考術」
「アプローチ」「考え方」「段取り」から考える
著者はコンサルタント1年目に、ある大学のマーケティング・プロジェクトを担当した。そのプロジェクトでは、その大学に進学してもらえるように、ターゲットとなる100校以上の高校を訪問することがすでに決まっていた。その訪問スケジュールの作成を任されたのだ。
著者はすぐに「わかりました!」と安請け合いをして、とにかくスケジュールを作りはじめた。
だがそうすると上司から「大石さん、ダメですね。いきなり作業に入らないで、まず考え方を考えてください」と注意された。
つまり「どのように考えたら答えがでるのか、その道筋をまず考え、アプローチ方法を考案して、それから行動に移しなさい」ということだ。
まずは大きな設計図を書いて、そのあとに細部へ落とし込む。
これが仕事の進め方の鉄則である。
ロジックツリーを使いこなす
コンサルティング会社に入ると、ロジックツリー、構造化、問題解決手法といった、一連のロジカルシンキングや問題解決の手順を学ぶ。なぜコンサルタントは、これらを学ぶのだろうか。その質問をコンサルタントたちにぶつけると、4つの理由が見えてきた。
(1)一生使える:繰り返し役に立ち、応用することができる
(2)全体が俯瞰できるようになる:ロジックツリーが描けるようになると、問題の全体像が見えてくるようになる。その結果、全体像からいって何が重要かといった判断が可能になる
(3)捨てる能力が身に付く:重要度が判断できるようになると、いらない部分を捨てて、自信を持って重要な部分に集中できる
(4)意志決定のスピードが上がる:重要度の判断ができ、捨てることができれば、結果的に意志決定のスピードが飛躍的に上がる
実際、ロジックツリーを使った問題解決では、コンサルタントは次の4つのことを緻密に行なっている。
(1)論点を整理・分解する
(2)各論点について数値分析をする
(3)項目の重みづけをする
(4)アクションに落とし込む
コンサルタントの問題解決に、何かすごい裏技があるわけではない。基本的な方法論を応用しているだけなのである。
仮説思考――「はじめに仮説ありき」
コンサルタントの思考法のなかで、もっとも重要なものの一つが「仮説思考」だ。たとえ1年目でも、「仮説はできたのか?仮説は証明されたのか?」と、仮説思考で物事を考えることが求められる。
一般的に「結論を出す」うえでは、膨大な調査をこなして、さまざまな角度から検証しなければならない。だがこのやり方だと、非常に時間がかかってしまう。そこで、こうした状況を打開するのが「まずは仮説ありき」という考え方である。
仮説思考では最初に、いま予想できる範囲でストーリーラインを描く。これは間違っていてもいい。「もしかしたら、こうではないのか?」と大胆に仮説を立て、その仮説に沿ったストーリーを考えていく。あらかじめ仮説を立てると、調べるポイントが絞り込めるし、効率的なリサーチができる。
そして設定した仮説に沿って、それを検証すべくリサーチを行う。もし仮説が正しいならば、正確なデータを用いて、クライアントに示すグラフを作る。もし違っていたら、そのデータから読み取れる新しい仮説を立て直す。
このようにして、仮説→検証→フィードバックというサイクルを高速で回すことで、本質を効率よく見定められるようになる。
コンサル流「デスクワーク術」:検索式読書
コンサルタントは、ときに40~50センチもあるような大量の資料を「明日までに読んで要点をまとめる」ことが求められる。
そんなとき、資料を一から読んでいては間に合わない。そこで効率的な読書法が必要となる。ポイントは次の3つだ。
(1)読書の目的を絞る、明確にする
(2)ウェブ検索のように目次ベースで当該箇所を拾っていき、重要な部分だけを読む
(3)なるべく多くの文献を広く浅く当たる
ウェブ検索の場合、こういった拾い読み法は誰もが実践している。しかし本になると、目的意識が不明確になり、拾い読みができなくなることが多い。
目的に沿って、大量の本をウェブサーチ的に読んでいくべきだ。そうすれば全体の見取り図ができて、重要な部分を見極められるようになる。そして大事な部分は、専門書を使って知識をさらに増やしていく。そうすることで「広く浅く」だけではない、「広くかつ深い」知識を得ることができる。
コンサル流「ビジネスマインド」:師匠を見つけて徹底的に真似る
仕事のプロとして生き抜くためには、他人との差別化が必要だ。だがノウハウ化されていたり、座学で学べたりするようなスキルを身に着けても、自身を差別化することはできない。それ以外の言語化できない「暗黙知」の部分こそが、プロとして働くうえで重要になってくる。
茶の湯や武道の世界では、伝統的な師弟関係を捉えた「守破離」という言葉がある。
「守」とは、師匠の一挙一動を真似ることだ。息づかいから、何から何まで真似てみる。
これは仕事にも通じる。一年目は「守」、つまり師匠の一挙一動を徹底的に真似る。たとえば上司のしゃべり方、メールの書き方、使っているペンの種類、服装、言葉遣い、食事の食べ方、怒ったクライアントの対応にいたるまで、すべてを真似るのである。
そのように徹底して真似ることで、言語化できない暗黙知の部分を体得する。若い頃は「どのような仕事をするのか」よりも、「誰と仕事をするか」の方が大事なのだ。
▪️すゝめ
本要約では、本書で取り上げられている30のスキルのうち、10のスキルをご紹介した。
他にも書類作成の基本「議事録の書き方」や、1日50枚のスライドを作成する「資料作成術」など、絶対に身に付けておきたいスキルが本書では紹介されている。
またロジックツリーなどの大切なスキルを身につけるうえで、チェックするべき参考図書リストも掲載されている。ビジネスにおける必須スキルを身につけるうえで、一年目のコンサルタントだけでなく、より多くのビジネスパーソンに読まれるべき「基本書」だ。