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光の指す方へ、歩みを止めず。

7月、父が亡くなった。
夜、倒れたという連絡があって、次の日の明け方だった。あっという間だった。
その途端、運転免許を持たない母は「買い物難民」になった。父がいなければ(というか、車がなければ)、食料品を買いに行くこともできないし、近くの公共交通機関(バス・鉄道)まで出ることもできない。
父の収入もなくなるし、これからどうやって生活していこうか?深刻な問題が持ち上がった。

葬儀、墓の問題、母の生活など。考えないといけないことが多く、プライベートな時間はそちら優先になるが、容赦なく仕事も山のようにやってくる。
気付いたら、他の事には手と頭が回らなくなっていた。


8月1日、1本の電話がかかってきた。
「ハラマルさん、元気ですか?Xの投稿が止まっていますけど・・・?」
レノファ仲間からだった。

事情を説明したところ、
「ハラマルさん、大変なところアレですが、今週末の試合だけには絶対に来た方が良いですよ。来ないと後悔しますよ。」
「あ、もう8月かぁ。中断期間が終わるんやね…。そうか、今週末はいよいよ1万人プロジェクトやったね。」
「Xは全然見てもないんですか?」
「うん、どっかで見るの止まってるね。最新まで情報を追いつくのが大変やから、そのままになっとるわ。最近、開いてもないかも。」
「そうなんですか、ハラマルさんの反応がないからおかしいと思ったんですよね。実は、次の試合、1万人達成するかもですよ。」
「えっ!!!マジっ!?…そうか、そりゃ、行かないと後悔するね。」
「あ、今のところ、いくかもってことなんですけれど…。思い切って連絡してみて良かったです。じゃあ、ゴール裏で待ってますよ。」
「うん…。連絡してくれてありがとう。」

この日は亡くなった父の誕生日だった。
気持ちを切り替えるにはちょうどいいのかもしれない。


さて、レノファ観戦に行くとなっても、物理的に時間の余裕が生まれたわけではない。試合当日の朝になって、ようやく頭を切り替えて準備を始めた。
「あれ、いつも何を持って行ってたっけ?」
そこでようやく、夏ユニが届いていたことを思い出した。家族が受け取ってそのままになっていた。

夏ユニに袖を通した。
そこでやっとスイッチが入る。
そうそう。私が夏ユニを買うと、その選手がいなくなってしまうというジンクスがあるので、今年は12番にしたんだったっけ。
公式情報を追っかけてはいないけど、あの選手は、まだレノファに残ってくれているよね?

いざ、決戦の地へ。
決選というのは、大袈裟ではない。1万人が達成できるかどうかは、レノファにとっては大きな問題だ。
そして、レノファが中断明けもプレーオフ圏内で戦い続けられるのか、見届けなければならない。

新山口駅からのシャトルバスでは、大分サポにジャックされるくらいの圧を感じた。当然、相手チームも気合が入っている。難しい試合になるだろうな、と改めて思う。

スタジアムに到着すると、知り合いに声を掛けてもらえた。ようやく、私の日常が戻ってきたことを感じる。

いつもと違ったのは、この日は、結果的には「生ビール」には1杯しかありつけなかったことだ。
この暑さの中、1万人も集まると、あっという間に売り切れてしまう。
まぁ、そうだよね。仕方ないか。
それでも今日は、日常を取り戻せたことに満足だ。


試合が始まる。
「あれ?何か、前と違うね?中断期間中にいろいろ仕込んだんかね?情報追っかけてないから、全然知らんのやけど。」
「いや、そんな情報は特に出てなかったですけど、そりゃ、同じやり方はしないでしょ。うまくいかなくなってたんで。進化ですよ、進化。立ち止まってたらダメですよ。」
「それ、私に言ってる・・・?笑」

前半、早めに入れられたクロスや、ロングスローからピンチになるが、無失点で過ごすと、待ち望んだ得点シーンが訪れた。
その後は、レノファがペースを掴み、安心して観戦できるようになる。

後半の給水タイム、いよいよ来場者数の発表が。
「10,893人」
「おっしゃー!」自分は特に何もしていないのに、自然と大きな声が出た。写真を撮るような落ち着きはなかった。なんであの場面、撮り逃したんか、自分が情けない。
ようやく達成した1万人。でも、レノファサポーターは、それでは満足しない。「こういう日に勝たないとダメだ」。思いは一緒だろう。
自然と応援のボルテージも上がり、遂に追加点。
そして、試合終了…。


実を言うと、中断前の秋田戦での敗戦、このままで大丈夫だろうかと、不安が残った。
それからしばらく、レノファ情報を追いかけることができなかった。天皇杯の勝利も見逃していた。
私の中では、秋田戦の敗戦で時間が止まったままだった。

一方、クラブは、中断期間中、この状況を打開しようと取り組んでいたに違いない。
歩みを止めず。
そしてその結果、試合内容も素晴らしかったし、結果もついてきたし、観客も1万人が達成できた。
また、光が見えてきた。まぶしい光が。

レノファサポーターも、1万人プロジェクトが達成された今、やはり思いは同じのような気がする。
これがゴールではない。ここで歩みを止めてはいけない。

1万人入った試合で勝ったんだ、きっと、今後、観客は増えるに違いないという思いもある。が、そんな簡単な話でもないだろう。
これからの試合で、どれくらい人数が集まり続けるのかという不安もある。
もっともっと、観客が継続的に増えるように頑張っていかないといけない。

1万人も来場することで発生した課題もある。まだXを見ていないので分からないが、○○に困ったという投稿があるだろう。
私自身も、帰りのシャトルバスが、終電に間に合うか心配で待ち続けることになってしまった。公園内の禁止エリアに車を停めている人が多く、シャトルバスがダイヤどおりに運行できなかったからだ。
次の1万人プロジェクトまでに是非、解決しておきたい。

引き続き、プレーオフ圏内で戦い続けられるだろうか?
そういう不安であれば安心してほしい。きっと、チームは進化を続ける。


立ち止まっていた私を、再び歩き出させてくれた友人に感謝。
今度は、もっとスタジアムでビールを飲もう。

そして、「やっぱりこの道を進んで行こう」と思わせてくれたレノファにも感謝。
ムチャクチャ面白い試合だった。

大変な時期に支えてくれた大事な人にも感謝。
なんか、私、暗いことばかり言ってなかった?甘えていたのかも。

私の日常生活も、試合と一緒でしばらく中断していたけれど、ここからまた新しい生活に向けて、一歩ずつ進んでいこう。
光の差す方へ、歩みを止めず。


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