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新興国で今、注目されている医療診断技術とは 〜Point of Ultra Sound, POCUSに迫る‼︎〜

アフリカの医療現場において「的を絞った短時間の超音波画像診断」として「Point of Care Ultrasound(POCUS)」が現在注目を集めています。日本からもアフリカにおけるPOCUSの普及を促す動きもあるなど、ここではPOCUSとは何か、その用途やメリットなどをご紹介していきます。

アフリカの医療現場において「的を絞った短時間の超音波画像診断」として「Point of Care Ultrasound(POCUS)」が現在注目を集めています。日本からもアフリカにおけるPOCUSの普及を促す動きもあるなど、ここではPOCUSとは何か、その用途やメリットなどをご紹介していきます。



Point of Care Ultrasound, POCUSとは

ここではまず、POCUSがどのようなものなのかを説明していきます。

POCUSとは短時間で行えるエコー検査

日本の病院やクリニックなどで使用される場合には、心臓のエコーを行う場合、診察室とは別室で技師さんが検査を行い、その後普通の診察を医師から受けるのが一般的です。

POCUS(Point of Care Ultrasound)は、「診療の現場で行われる超音波検査」を指します。ポータブルな超音波装置を使用し、医師や医療専門家が臨床診断や処置計画を行う際に、患者さんの身体に超音波を照射して内部の画像をリアルタイムで表示します。

※参照URL:POCUSとは何ですか? (臨床検査 67巻9号) | 医書.jp

POCUSのメリット

POCUSは、臨床診療現場で直接患者さんの診断や治療に利用される超音波技術であり、そのメリットは多岐にわたります。

まず、非侵襲性であり、放射線を使用せずに患者の状態をリアルタイムで観察できるため、患者さんのベッドサイドや診察室で手軽に使用できることから、迅速かつ効果的な診断ができます。

また、POCUSは、Rapid Response Team(RRT)と言われる迅速な治療や処置が必要な際にも大変有効です。例えば、日本ではコロナウィルス(COVID-19)による感染症を管理するための主要なツールとして有名になりました(参照URL①)

処置としては、肺超音波検査、経胸壁心エコー法、重症例では胸水を管理するための中心静脈アクセスや胸腔穿刺などがあります(参照URL②の表1)。

そのほか、コスト面では、POCUSはCTやMRIに比べて安価であり、使用が容易であるため、ケアの継続性を確立することができます。放射線医学などの医療専門誌である「Imaging Technology News」に掲載された記事によると、超音波検査の費用はMRIの60%〜70%程度に抑えることが可能と言われています。

さらに、MRIとは異なり、金属製のインプラントを使用している患者にも使用することができます。(参照URL③)

※参照URL①:新型コロナウイルス(COVID-19)におけるPOCUS(Point of Care Ultrasound)を使用した感染予防 | ナノソニックス
※参照URL②:新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のPOCUS (Point of Care Ultrasound) における感染対策 表1参照
※参照URL③:Utility of Point-of-Care Ultrasound Across Clinical Applications Spurs Continued Growth


POCUSはどのような場面に使われているか

それでは、実際にどのようなシーンでPOCUSが使われているかを見ていきましょう。

POCUSは迅速な診察に役立つ

POCUSは診察室、救急車、手術室、ICUなど、医療のさまざまな状況で利用され、迅速な診断や治療計画の役立つツールとして活躍しています。

この技術は特に臨床現場でのリアルタイムな情報が必要な場面で重要であり、従来の超音波検査と比較すると時間短縮や緊急を要する際には大変役に立ちます。

例えば、動悸や息苦しさという主訴(主に苦しんでいる症状のこと)で来院した患者さんにPOCUSで心臓超音波検査(心エコー)を行った結果、検査結果が後日わかるのではなく、その場で長音音波画像の心臓内に血の塊(血栓)が見つかり、心臓に血液を運ぶ血管が詰まりかけている状態が見つかったため、すぐに治療設備の整っている大きな病院に移送し、早期治療を行うことができました。

このように、早期発見、早期治療へと繋げられるケースが飛躍的に多くなりました。

POCUSが使用されるケース

POCUSは、心臓、肺、腹部、血管、筋肉骨格系など、さまざまな領域で使用され、臨床医療の多くの症例で役に立つツールになっています。

例えば、筋骨格系の疾患では、筋肉や関節などの軟部組織の断裂を画像化し、腫瘍や石灰化、滑膜炎や骨浸食などもモニターにより確認できます。

循環器系では、心停止、外傷、胸痛、呼吸困難、ショックなどの際の診断に使用されるほか、腰椎穿刺(脊柱管に針を挿入して脳脊髄液を採取する医療処置であり、中枢神経系の病気の診断の際に行われることが多い)の際の針の誘導にも頻繁に使われるようになりました。

また、静脈アクセスを決定し、神経ブロックのために神経叢をトレースする際や、硬膜外麻酔の際にも使用する病院が多くなっています。

※参照URL:https://www.m3.com/clinical/open/news/989198

なぜアフリカの医療現場にPOCUSが適しているのか

日本でも多岐に渡り使われているPOCUSですが、日本だけでなくアフリカでもその必要性が盛んに主張されるようになりました。ここでは、その理由やアフリカの医療問題について解説していきます。

妊婦や乳幼児の死亡率の高さが約70倍(日本と比較した場合)

アフリカにおいてPOCUSが重要な理由は、ケニアを例に取ると、妊産婦死亡率が日本の約70倍も高い状況であることなどを例に挙げられます。

POCUSは即座に診断を行うための医療用診断ツールとして活躍しています。体外式のPOCUSは患者さんの体に傷をつけないほか(X線を使用しないため被爆もない)、特別な準備を必要とせず操作が簡単に行えるなどたくさんのメリットがあります。

上記のようなメリットは妊娠している患者さんの診断においても、お腹の赤ちゃんへも負荷をかけることなく行えるため、その必要性は年々アフリカ諸国で高まっています。

ケニアでは、地方に行くほど医療体制が整っていないことが多く、POCUSは簡便で効果的な診断手段として、母子の健康改善にも貢献しており、アフリカではPOCUSが必要不可欠とされています。

※参照URL:日本の約70倍!ケニアの妊産婦死亡率を下げるために超音波トレーニングを提供したい - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
※参照URL:アフリカの妊娠と出産〜ガーナでの若年妊娠の課題を解決するために | 国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)

遠隔診療を発展させる必要性があるアフリカの医療体制とPOCUS

遠隔医療がアフリカで重要視される理由は多岐にわたります。まず、広大な土地を持つうえ、医師不足・医療資源不足が課題となるアフリカでは、地理的環境による医療格差が顕著であり、医療の地域格差が問題となっています。

遠隔医療は、アクセス困難な地域における医療へのアクセス改善を可能にし、医療サービスの普及を支援します。その際に、コンパクトで操作が簡単、検査結果も即時にわかるPOCUSを使用できるようになれば、遠隔医療でできる診療や治療の幅が広がっていくでしょう。

現在ケニアでは、スマートフォンを利用した遠隔医療が医療をスムーズかつ迅速に提供する手段として注目されており、アフリカの医療問題を改善する一環として導入が進められています。POCUSがこのような動向と相まって普及が進めば、ケニアだけでなくアフリカ諸国全体の医療改革において、アフターコロナ時代を担う重要な役割を果たすと期待されています。

※参照URL:医療×スマホ!スマートフォンで遠隔医療を可能にするソーシャルプロダクト
※参照URL:遠隔医療の革新は新興国から、失明を防ぎ安全な分娩を支援

POCUSの日本での使用例を参考に普及させる

ケニアでは、日本の政府や企業がPOCUSの知識や技術を普及させるべく尽力しています。現在では妊婦さんへの適用が主になっていますが、将来的にはさまざまな診断や治療に役立てるようになる検査だと考えられています。

例えば、日本では急性疾患の診断において、POCUSは、肺炎、心不全、腹部の異常などの急性疾患の診断に役立っています。特に、ICU(集中治療室)では、POCUSが「迅速性」、「低侵襲性」、「継続性」の3つの利点をもたらし、患者さんの状態をリアルタイムでモニタリングし、治療を最適化することを可能にしています。

そのほか、ベッドサイドでのPOCUSは、患者さんへの臨床評価に貢献し、診断や治療計画の迅速化を図っています。これらの日本での活用方法はアフリカなどの医療体制が整っていない国々でも有効であり、POCUSがさらに拡大すれば、妊婦さんだけでなくより多くの患者さんが救われると考えられます。

※参照URL:ポケットサイズエコーを用いたPoint-of-care超音波(POCUS)
※参照URL:ICUでPOCUSを使用する3つの利点 ポータブルエコーはこう使った | 富士フイルム [日本]

AAHD社におけるPOCUSへの取り組み

ここでは、POCUSがその普及に取り組んでいるAA Health Dynamics社(AAHD社)の取り組みについてご紹介します。

「MedicScan」プロジェクト

AA Health Dynamics社は、同社が運営する医療情報プラットフォーム「MedicScan」を通じて、アフリカの医療従事者を対象に超音波診断(POCUS)を活用した医療トレーニングサービスを展開しています。

このプロジェクトはメディカルウェビナーと医療トレーニングの2つのサービスに分かれており、ウェビナーでは、ガン、糖尿病、COVID-19、メンタル、不妊治療などの幅広い医療分野の講義を行い医療従事者に対して医療情報を提供しています。

ウェビナー受講後には、ケニアの医療認証機関から医師免許の更新に必要なConutines Professional Point (CPDポイント)を付与できる組織として公的に認められています。

また、POCUSトレーニングにおいては、3ヶ月間にわたって行うカリキュラムを実施し、オンライン講座、ミニテスト、技術トレーニング、画像評価、最終試験をクリアすることによってケニアの医師は証明書を取得することができるようになっています。

※参照URL:アフリカで展開する医療トレーニングサービス「MedicScan」 はどんなサービスを提供しているのか?

アフリカでの富裕者層へのマーケットチャンネルとしての取り組み

AA Health Dynamics社では、効果的にアフリカの医療従事者にアプローチをすることができます。実際にPOCUSに使用される製品を販売したい場合には、現地にマーケットインする最初の顧客ターゲットとして医療従事者へのカスタマージャーニーやエンパシーマップなどを用いて分析することも有効であると思います。

この顧客層のニーズを明らかにすることができれば、皆さんの製品やサービスが一気にアフリカに広がることも可能になると思います。

※参照URL:【ソーシャル・グッド】ケニアの妊産婦死亡率を下げるため、超音波診断トレーニング資金750万円調達のクラウドファンディングを2023年2月18日よりGood Morningにて実施
※参照URL:日本の約70倍!ケニアの妊産婦死亡率を下げるために超音波トレーニングを提供したい - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
※参照URL:【ソーシャル・グッド】ケニアの妊産婦死亡率を下げるため、超音波診断トレーニング資金750万円調達のクラウドファンディングを2023年2月18日よりGood Morningにて実施
※参照URL:アフリカ発の医療教育プラットフォーム『MedicScan』がサービス開始/協力企業を募集! - CNET Japan
※参照URL:ケニアの妊産婦死亡率が低下することを目指して。超音波診断トレーニングを現地の医師へ届ける挑戦と、その想い。|PR TIMES STORY|京都新聞 ON BUSINESS

まとめ

POCUSは、アフリカの医療において特に重要になる検査だと思います。アフリカ諸国では、一般的な超音波検査の設備や専門家が不足しているため、POCUSは急性期ケアや診断において重要な役割を果たすと考えられています。

POCUSにおいては、携帯可能なポータブル超音波装置を使用することで、遠隔地やリモートエリアでも診断が可能になるため、アフリカ諸国の多くの地域で、感染症や妊娠関連の合併症、外傷などの診断やモニタリングにも役立つとされています。

また、POCUSはコスト効率が高く、患者さんがクリニックへ出向くアクセス向上にも効果があると考えられる理由から、日本企業が参入することにより、より多くの市場拡大が見込まれると考えられます。

ライター紹介

増田さなえ |AA Health Dynamics株式会社 グローバルサウスにおける事業開発支援集団 (aa-healthdynamics.com)
米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

お問い合わせ

この記事へのお問い合わせは AA Health Dynamics株式会社 まで
Email:info@aa-healthdynamics.com

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