アフリカで日本人が起業する際に注意すべき点|事例とともにご紹介
近年、爆発的な人口の増加に伴い成長を続けているのがアフリカです。2050年には全世界人口のおよそ4分の1を占める割合になると予想され、アフリカ全土の経済規模は2025年までにおよそ4.5兆円になるといわれています。2020年時点で国内からアフリカ市場に参入している企業数が900拠点にまで昇るなど、日本企業も多く進出しています。しかし、世界的に見るとアフリカへの進出は同じアジアであっても中国の企業数が圧倒的に多く、国内企業が地理的、心理的にアフリカ市場を遠い存在と認知している感は否めません。 そこで本記事では、アフリカマーケットが世界で注目されている理由から現地で活躍する日本人起業家の事例、ビジネスを行う上での注意点を紹介していきます。
なぜ今アフリカのマーケットが注目されているのか
ここではアフリカマーケットが現在なぜ世界から注目されているのか、その理由について解説していきます。アフリカが市場として注目されている要因として、以下の3点が挙げられます。 ・人口の増加 ・経済規模の拡大 ・デジタル技術の普及 それぞれ確認していきましょう。
人口の増加
2017年時点でアフリカの総人口はおよそ12.6億人とされています。国連の発表によると2050年には約2倍のおよそ25.3億人に到達すると予想されています。これは世界人口の4人に1人がアフリカの人々という計算になり、世界的にみても今後の成長が期待できるマーケットです。 また、人口に対する生産年齢人口もアフリカ市場が注目される理由の一つです。現在アフリカの国々の平均年齢は10代後半〜20代中盤と人口に対しての若年層割合が大きく、生産年齢人口も6割を若年層が占めています。経済規模も2019年にはおよそ2.5兆円、経済成長率もIMFの過去10年の実質GDPでは5.4%とされており、2016年の2.0%、2017・2018年の3.5%と比べると着実に市場が拡大しているのです。
参照元:https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade/africa/4.undp.pdf
経済規模の拡大
2050年には世界の4分の1を占める人口増加が予想されているアフリカですが、消費者と市場規模が拡大したことで各国が高い割合で経済成長を遂げています。 2022年にはコートジボワールが6.0%、ケニアが5.7%、ガーナが5.2%と高い成長率が見込まれています。また「Global Economic Prospects」の発表によると、2014年から2017年の5年間において、世界で急激な経済成長がみられた12カ国中6カ国がアフリカの国だったとしています。今後アフリカ経済の規模は2025年までにおよそ4.5兆円に到達するとされていることから、アフリカ市場の成長の勢いを伺うことができます。 参照元:https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/05/6a43b219c04ad71d.html 参照元:https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade/africa/4.undp.pdf
デジタル技術の普及
近年アフリカでは急速に携帯電話の普及が広がり、人口普及率は2014年時点で84.7%まで上昇しています。これは2003年の8.6%と比較しておよそ10倍まで成長を遂げたことになります。 この急激に携帯電話が普及した背景には「リープフロッグ現象」となったSafaricom社が提供するモバイルバンキングがあります。このサービスは2007年にケニアの大手通信事業者が開始したモバイル送金サービスです。銀行口座を持たない人でも携帯電話上で金融取引を行えるようになりました。銀行口座よりも携帯電話が広く普及したことで、アフリカにおける長年の情報通信の脆弱性が改善されました。
アフリカで活躍する日本人の起業事例
それでは実際にアフリカで起業した日本人の事例を紹介していきます。将来的にアフリカでの起業を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ケニア・ナッツ・カンパニー:佐藤芳之
佐藤氏は1974年にマカダミアナッツの生産から輸出までを行うケニア・ナッツ・カンパニーを設立しました。同社ではマカダミアナッツをはじめ、紅茶・コーヒー・ワインなどの生産や販売を行っています。生産者が主体となった農業開発にこだわり、年商30億、従業員4000人規模までに成長しました。2008年には後身のため同社の経営から自ら退きますが、現在でもルワンダの公衆衛生環境を改善するため会社を設立し活動を続けています。
津梁貿易株式会社:金城拓真
金城氏は2007年にアフリカで中古車販売の事業を開始しました。現在ではアフリカ6カ国内で事業を展開しており、事業内容も不動産、タクシー、機械の製造工場、ボトリングなど多岐にわたります。学生時代にアフリカ人の友人に、現地の中古車事情を聞き販売を始めたことが起業するきっかけとなり、今ではグループ全体の年商が300億円になるほどの企業にまで成長しています。
Degas(デガス):牧原土雅
牧原氏は2018年にサハラ砂漠以南の小規模農家の所得向上を目指し、Degasを設立しました。同社では各農家の情報を基に農業資材を融資し、営農指導を行います。融資を受けた農家は収穫物で返済し、同社は国内でも屈指の高品質な収穫物をバイヤーへ売ることで利益を得ることが可能です。5年ぶりに訪れたルワンダの村に発展がみられなかったことが起業のきっかけとなり、そこからアフリカ諸国の貧困問題を改善すべく農村部の変革に取り組んでいます。
アフリカで事業を行う注意点
今後の成長が見込まれているアフリカで起業することは、将来的に事業が大きくなる可能性もある一方で、注意すべき点もあります。現地で起業した際のリスクヘッジのためにも、確認しておきましょう。
個人消費率が低い
まず一つ目は、個人消費率が低いことです。2017年におけるアフリカの平均GDPは一人当たり1,809米ドルでした。同年の世界平均が10,830米ドルと比較すると、およそ16.7%とかなり低水準であることがわかります。近年のアフリカ諸国では、GDPの数値からも経済成長に伴い以前と比較して貧困が解消されてきているといった見方も可能です。ただ一方で、世界全体で見ると一人当たりの所得は低く、WHOが2019年に公表した「世界保健統計」では日本やアメリカ、ヨーロッパなどの平均寿命が80.8歳に対し、アフリカ諸国などの低所得国は62.7歳にとどまるといった結果も出ています。 そうした経済的な背景から日本とアフリカでは消費者の動向の目線が異なります。日本からアフリカで新たに起業する場合は、事前に現地の人々やアフリカ事情に精通している専門家の意見を聞いておくことをおすすめします。
参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43367210V00C19A4CR0000/#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%84%E6%AC%A7%E7%B1%B3%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AE,%E8%A1%A8%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%8D%E3%81%A8%E6%8C%87%E6%91%98%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
データ通信インフラの脆弱さ
二つ目は、データ通信インフラの脆弱さです。アフリカでは海底ケーブルを通すことで、インターネットに接続しています。そのため内陸国は接続が不安定になりやすく、海岸に面している国であっても、国内に海底ケーブルが敷かれている港が限られているのが現状です。海底ケーブルが傷ついたり不具合が発生するたびに、インターネットの速度の低下や停止が起こります。 また、インターネットを利用するための電力事情も認識しておかなければなりません。南アフリカ以外のサハラ以南のアフリカ諸国の同時発電力は68ギガワットです。この数値はスペイン一国のものよりも低く、停電や電力不足の可能性が高いことがわかります。加えて、インターネット接続による通信費も問題です。例えば日本の平均月額通信費は平均47米ドルなのに対し、サハラ以南のアフリカ諸国は30〜99米ドルと同水準かそれ以上の価格になっています。貧困に苦しむ人々にとっては、インターネットの利用はかなり高いハードルになっているのです。
政治的な紛争による混乱
三つ目は、政治的な紛争による混乱です。ACLEDが発表したデータによると、2021年のサブサハラアフリカ内の7カ国で紛争や暴力によって100人以上の死者が出ています。西アフリカで起こったクーデターに関する事件だけでも、直近の一年半のみで8件起こっています。こういった紛争や政治的なクーデターが起こるたびに、企業はビジネスを中断しなければならない状況に陥ってしまうのです。また、起業家にとっては紛争はいつ終結するかわからない場合が多いため、投資家による支援を受けづらくなるリスクも高くなります。 これからアフリカでの事業を検討している方は、政治的な状況も把握した上で拠点を決定しましょう。
参照元:https://globalnewsview.org/archives/19110 参照元:https://acleddata-com.translate.goog/dashboard/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=op#/dashboard
アフリカでの起業には正確な現地情報が必要
今回は、アフリカマーケットが世界で注目されている理由から現地で活躍する日本人起業家の事例、ビジネスを行う上での注意点を紹介しました。今後の成長が見込まれるアフリカでの起業を画策しているのであれば、正確なアフリカ現地のビジネスや社会情勢などの情報を仕入れる必要があります。 アフリカへの理解を深める手段として、専門家のサポートを受けるというのも一つの手段です。新規事業で参入する際はアフリカ専門家からのサポートを検討することをおすすめします。 AA Health Dynamics株式会社では、アフリカやアジアの国々に向けた伴走型新規事業開発コンサルティングや現地でのヘルスケア・ビジネスを展開しております。「新興国への事業進出は興味あるけど、マーケット知識に不安がある」「自社のサービスをグローバルなものにしたい」という方は、ぜひお気軽にお問合せください。
ライター:西能克
Webメディアや企業サイトの記事を制作するフリーランスのライター。 不動産会社での営業経験を活かし、ビジネス系の事例や製品サービスの紹介、企業サイトのコンテンツやインタビュー記事などの執筆を行っている。 徹底した下調べでSEO対策とともに対象の魅力を引き出すコンテンツを制作する。 趣味はプロレス観戦。起床後に過去の試合をモバイル視聴することがモーニングルーティーンになっている。
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