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アフリカ健康構想とは?”富士山”型!日本政府が推進する裾野の広い保険医療サービスに迫る

日本政府はアジア健康構想と共にアフリカ健康構想も掲げています。ここではアフリカ健康構想とはどのようなものなのか、その基本方針や具体的な事業内容を解説しながら、日本政府の意図なども考察していきます。


アフリカ健康構想とは

ここでは、アフリカ健康構想とはどのようなものなのか、その基本方針やアジア健康構想とのつながりをご紹介します。

アフリカ健康構想の基本方針

アフリカ健康構想とは、日本政府がアフリカ諸国との健康に関する協力や支援を行う取り組みについての基本方針です。アプローチ方法を日本を代表する“富士山”の形に見立て、裾野の広い保健医療サービスの充実に取り組んでいます。

アフリカ健康構想では、基礎的なインフラの整備や、公衆衛生への理解増進、栄養教育等、地域特性を踏まえ、公的セクターによる支援と自律的な民間の産業活動との多角的な開発システムの形成に貢献することを目標にしています。

そのため、生活習慣の改善や手洗い等による衛生環境の改善などの身近なところから、栄養バランスを考慮に入れた栄養価の高い食事の提供、巡回診療といった事業の展開を検討し、都市部から離れた地域の医療アクセスの向上や、ひいては健康な生活を可能とする包括的な地域環境作りに貢献しています。

アジア健康構想とのつながり

アジアとアフリカは地理や文化的にも異なる地域ですが、健康に対しては同じような問題に直面しています。そのため、両地域は病気の予防、対策、管理に関するベストプラクティスや経験を共有し、協力することにより、健康への取り組みを強化できるという考えがあります。

また、アジアとアフリカ諸国では、現在でも健康基盤の整備が必要な状況にあります。医療施設の拡充、医療従事者の育成、薬剤や医療技術の普及など、基盤整備の分野で医療技術や医療制度の整っている日本が両国に協力する必要があります。

それ以外にも、両地域では都市部と農村部、豊かな地域と貧困地域などで健康格差が存在しています。日本でも最近では医療の地域格差が叫ばれていますが、その比ではないレベルで格差が激しいため、日本ではあり得ないようなケガや病気により命を落としてしまう人も少なくありません。

そのため、アジアとアフリカは、格差の縮小を図るための政策やプログラムの共有、交流を通じて、より包括的な健康へのアクセスを実現できると日本政府は考えています。

※参照URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/torikumi/index.html
※参照URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/kansen_kaigi/dai6/siryou3.pdf

政府の取り組み

アフリカ健康構想では、日本政府がアフリカ諸国に働きかけて始まりました。ここでは、実際にどのようなことをしているのか見てみましょう。

二国間協力覚書(MOC)の作成

2022年末までに、アジア・アフリカ健康構想のもと、日本政府は12か国と二国間協力覚書(MOC)に署名しました。

MOCではアフリカ健康構想(AfHWIN)のもと、日本はアフリカ 6 カ国と「専門人材の育成」、「健康な生活を支えるサービスや製品の提供」、「社会や産業の基盤づく り」を柱に、栄養・衛生改善、人材育成等に資する具体的なプロジェクトに取り組んでいます。

また、MOCを具体化、監督するためのハイレベルな諮問機関「ヘルスケア合同委員会」を設置し、政府間の対話の深化を図るほか、日本企業の製品・サービスを紹介する官民ミッションの派遣や医療機器のデモの実施などを通じ、官民一体となって健康構想を推進しています。

※参照URL:グローバルヘルスにおける日本の国際協力 | January 2023 | Highlighting Japan

アフリカ諸国のUHCの推進

UHCとは健康保険制度(Universal Health Coverage、UHC)の略であり、アフリカ健康構想(African Health Vision)は、アフリカ諸国の健康状態を向上させるための総合的なアプローチを指し、UHC達成を目標に掲げています。

UHCの基本的な原則は、財政的な困難や社会的な要因に関わらず、すべての人々が適切な医療を受ける権利を持っているという考え方であり、UHCの実現に向けては、予防医療や診断、治療、薬物、および他の健康サービスへのアクセスが重要です。

そのため、アフリカ健康構想は、アフリカ諸国が健康基盤の強化、保健サービスの拡充、医療従事者の育成、健康システムの改善などを通じて、UHCの実現を目指すものです。これにより、アフリカの人々が適切な医療にアクセスできるようになり、健康な生活を送ることができる環境が整備されることを目指しています。

※参照URL:アフリカにおける保健課題の解決に向けて 結果報告書

日本政府の意図を考察

日本でも物価や光熱費などの上昇により、日常の生活を送るのに余裕がない人たちがたくさんいます。そのため、なぜ日本が大変な状況でアフリカなどの健康構想を掲げなくてはいけないのかと思う人たちも多いでしょう。ここではその主な理由について考察していきます。

資源や食糧の確保

資源や食糧などの多くを海外からの輸入に頼っている日本では、途上国の発展をお手伝いし、それを世界平和や安定へとつなげていくことは、国益にもつながるのです。

また、日本は現在、TICAD(※)プロセスを通じて、アフリカの開発課題に取り組んでおり、TICADVIにおいてもUHCの推進を含む保健の取り組みを打ち出しています。

アフリカは人口の母数が多く今後開発の余地のある魅力的な地域です。その魅力的な地域の開発拡大にはアフリカ諸国への健康に対する取り組みが必要不可欠になってくるのです。

※TICAD:Tokyo International Conference on African Developmentは、アフリカ諸国と国際社会が参加する国際会議のことを指します。この会議は、アフリカ諸国の発展や経済成長を支援し、国際的な協力を促進するために日本政府が主催しています。アフリカ諸国のリーダーや国際機関、民間セクター、非政府組織などが参加して、アフリカの発展に関する様々なテーマについて議論されます。

※参照URL:日本とアフリカが会議 TICADって何?

国際協力と貢献

日本は長い間、国際社会での貢献を重視してきました。アジアやアフリカ諸国は、経済的に発展途上国や途上国が多く存在し、健康に関する課題が根深い地域でもあります。

日本は、これらの地域において医療や健康分野での支援を通じて国際的な貢献を行うことを重要視していることが考えられます。また、健康分野での協力は、国と国との友好関係を深める手段ともなります。

持続可能な発展

健康は持続可能な発展の基盤とされています。健康な人々がいることは、経済的な発展や社会的な進歩に不可欠です。アジアやアフリカ諸国においても、健康基盤の強化や感染症の対策などが持続可能な発展を促進することが今後の将来的な発展につながっていきます。

また、感染症の拡大や保健衛生の課題は、国境を越えて影響を及ぼすことがあります。アジアやアフリカ諸国の健康状況が改善されることで、国際的な感染症の拡大を防ぐなど、国際的な健康課題に対応する一環としても重要です。

※参照URL:外務省: よくある質問集 アフリカ

日本企業の事例

ここでは、アフリカ健康構想のもと、日本企業が現在取り組んでいる事例をご紹介していきます。これ以外にも、さまざまな日本企業がアフリカ諸国での事業を行っています。

GRAND FOREST JAPAN HOSPITAL(医療法人光心会)

日本医療のサービスを、ケニアの首都ナイロビに2013年から提供している病院です。ナクル・カジアド州の保健省と連携し、巡回診療や検診等を行っています。

2020年にはナイロビにて現地スタッフとともに、医療用CTなどの日本の医療機器の紹介やその使い方の研修や日本式リハビリテーションを紹介しています。

また、エコーやCPXなどのより複雑な検査にも対応できるように、現地スタッフへの技術研修なども行われています。

※参照URL:http://grandforest.jp/dx/
※参照URL:アフリカにおける保健課題の解決に向けて 結果報告書(20p目)

サラヤ株式会社(消毒剤メーカー)

ウガンダにて、ユニセフとの合同プロジェクト「100万人の手洗いプロジェクト」を2020年から現地で実施しています。

それと並行し、マラリア、結核、HIVの年間死亡者よりも院内感染による死者の数が多いことにも注目し「病院で手の消毒100%プロジェクト」もJICAと連携して取り組んでいます。

また、2014年にはアルコール手指消毒剤製造機をウガンダに設置し、現地で生産・販売できるようにしました。

※参照URL:https://tearai.jp/
※参照URL:https://www.saraya.com/
※参照URL:アフリカにおける保健課題の解決に向けて 結果報告書(20p目)

富士フイルム株式会社

ケニアのナイロビにある国立病院では、2020年からJICAと協力し富士フィルムが「Point of Care Ultrasound (POCUS)の普及に努めています。それ以外にも、エチオピアで医療機器である内視鏡の普及に尽力しています。

日本の医師からの遠隔トレーニング等による医療セミナーやトレーニングを通じ、2022年までに9名の医師がカリキュラムを終了し、現在でも続けられています。

それ以外にも、AA Health Dynamics社でも現地の医師のために、2021年からPOCUSのためのオンライン講座、ミニテスト、技術トレーニング、画像評価、最終試験を設け、それらをクリアすることにより、現地の医師は証明書を取得することができるようになっています。

※参照URL:https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/1000047806.pdf
※参照URL:https://www.nikkakyo.org/sites/default/files/medicalsystems.pdf
※参照URL:https://www.aa-healthdynamics.com/ja/blog/article_7
※参照URL:アフリカにおける保健課題の解決に向けて 結果報告書(21p目)

まとめ

アフリカ健康構想は、日本政府が主体となり、アフリカ諸国の健康状況の改善と持続可能な医療体系の構築を目指す取り組みを掲げた計画です。この構想は、日本の医療体系の「富士山」をモチーフとし、裾野の広い保健医療サービスの充実に取り組んでいます。

アフリカ健康構想の主な目標は、アフリカの人たちの健康格差の縮小、感染症対策の強化、基本的な医療サービスの普及、保健教育の強化、医療インフラの整備など統括的なアプローチを基本方針としています。

特に日本はUHCと呼ばれる健康保険制度(Universal Health Coverage)の推進のために尽力しています。日本の企業も今後拡大していくであろうアフリカ地域の市場獲得のために、日本の医療機器の普及から消毒などの一般的な衛生プロジェクトなども積極的に行っています。

ライター紹介

増田さなえ 
米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。

お問い合わせ

この記事に関するお問い合わせや、アフリカビジネスに関するご相談は下記までお気軽にどうぞ!
AA Health Dynamics株式会社
Email info@aa-healthdynamics.com

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