刑務所にヘアドネーションしてみた!

※別にPRとかじゃなくてガチでただの個人の感想だよ!

 流産した日の夜、入院先で強烈に思ったことがある。
 髪の毛が、邪魔だ。

 もともと、当時の部署での担当案件を無事終えたら切ろうと、いわば願掛けで伸ばしていたものである。既に2年近く伸ばし、腰まで到達する髪は、大出血をやり過ごして未だ痛みが強く動きの悪い体には、非常に邪魔くさかった。
 大学生のころからヘアドネーションをいろんな団体へなんとなく行ってきたこともあり、どうせならヘアドネーションをもう一度、という考えもあって、伸ばし続けていた。
 だがもう限界だ。子も失った。切るなら今だ。

 退院してしばらくし、無事外出許可が下りたころ、初めて入る美容室で、40cmは髪を切った。もうちょいいけたか、という若干の後悔に目をつぶり、髪を受け取った。
 ま、前回髪の毛送ったところに寄付すればいいかな…と思って、ヘアドネーション団体のウェブサイトを開き、送り先を確認しようとしたところ、目を引く文字があった。

 「和歌山刑務所」

 そう、髪の毛を送れるのである、刑務所に。
 職業訓練として、所内に美容室を設置している刑務所がいくつかある。一般の人も利用が可能であるが、和歌山刑務所も美容室を設置している一つである。
 ヘアドネーションの団体と社協とコラボし、ボランティア作業に使用することで更生に役立てているらしい。へえ。じゃあこの髪の毛、刑務所で使ってもらうこともできるのか…。

おもしれ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!

 当然飛びついた。だって刑務所よ。普通に生活してきて刑務所とか、触れることあるかって話。ボランティアでもしていなければ、矯正展に興味を持つニッチな人くらいでしょ。
 何のためにヘアドネーションしてるのって、そりゃちょっとでも誰かのためになればと思ってのこと。多感な時期の子らに自分の髪の毛が少しでも役に立って、いろんな髪型を楽しんでもらえるならとか、まあ自己満足ではあるけれど。
 この髪の毛も、受刑中の作業に使われて、その作業がなした結果を作業者が知って、自己有用感によりつながるなら、もっと多くの誰かのためになる、いいじゃないか。
 かくして、子を失った悲嘆とともに切った髪は、和歌山刑務所へ送られていった。

 あれから数年、再び寄付最低ラインの31cmを目指す日々が続いている。えげつないダメージ、加齢による髪のうねり、急に1本から4本に増えた白髪…と、まあ問題は山積みなので、次で最後のヘアドネーションのつもりである。
 自分の子の分、誰かに笑顔になってほしいというエゴと、誰かの笑顔を想いながら仕事ができる人たちが増えてほしいというエゴを全力で込めて、念たっぷりの髪の毛を、最後もきっと刑務所に送る。
 でも、もう刑務所なんてところ、出たら二度と入っちゃだめよ、と思いつつ。